実は私、
35歳で二千万円の負債を負ってしまった。


それは私が25歳で
ブティックを開業して
10年が経った時だった。


最初こそ顧客も大勢付いて
順調そのものと思われた。


しかし拘りの強い私は
モノトーンブームを受け入れることが出来ず、
時代の波に逆らったのだ。


それに数字に弱く
販売員としての
売る気、やる気、負けん気も
不足していたと思う。


経営者としての自覚にも
欠けまくっていた。


自転車操業で
選択肢は廃業しかなかったのだ。


銀行の借入返済の期間を長くしてもらったり、
メーカーに頭を下げて
支払いを僅かな金額の
ローンにしてもらったりした。




廃業後は
友人からの紹介で
某有名ブランドの
福岡地区のトレーナーとして勤務させてもらえることに。


給料も良くボーナスも頂けた。


しかしそこは社風が全く合わず、
私はいつもオドオドとしていたんだ。


それに自宅からは遠かった。


20時に閉店して
事務所に顔を出して
それから地下鉄やJRを乗り継ぎ
北九州まで戻ってくると
たいてい23時を過ぎていた。


既に最終バスが出た後だった。


そこから自宅までの道のりが歩いて50分ほど。


タクシーに乗るお金もなく
歩くしかなった。


暗い夜道をトボトボと歩いた。



昼間は精神的に追い詰められていたし、
通勤時間は長く、
夜道を歩くのは
体力の限界を超えていたと思う。


それでも歩くしかなかった。


歩きながら
メーカーさんや周りに迷惑を掛ける
自分の不甲斐なさを呪った。


涙が溢れてきた。


いつも気がつけば
頭を垂れて涙が地面に
ポタポタと落ちていたな。


落ちていく涙を見ながら歩いていた。


もう自分には未来がないように思えていた。



ひとりだけで
真っ暗なトンネルの中を彷徨っていた。


トンネルから抜け出るのは
不可能としか思えなかった。


でもね、
そんな苦しい中でも
私のどこかに負けたくない自分がいたんだ。


諦めてはダメ!と、
叱咤する
自分がいたんだよね。


それで涙を拭いて
唇を噛み締めると
私は星空を見上げた。


そして
『大丈夫、大丈夫、私は大丈夫』と
声に出して
自分に言い聞かせるように歩いていた。





そうして長い時が流れたんだ。


暗いトンネルからは
抜け出せたものの、
それでも
私の居場所はどこにも見つけられなかった。


自分を表現できる仕事に
就きたかったので
勉強をして努力も重ねた。


しかし
夢や希望が全く叶うことのない
トンネルが長く長く続いて、
すっかり人生に諦め切っていたっけね。


友人を羨んだり妬んだりもした。


認知症になった母の介護で
疲弊する毎日だった。


だけど母が旅立ち
自分と向かい合う時間が
取れるようになって、
それで
71歳でYoutubeデビューを思い立ったんだ。


そして2022年8月に
『70代 ロコリ』がスタートした。



すると
モノトーンのような
これまでの私の人生が
驚くほど変わり
明るい色彩に満ちてきたんだ。


KADOKAWAの編集者の方から
コンタクトがあり、
2023年3月1日に著書
『72歳、好きな服で心弾む、ひとり暮らし』を出版。



その後は様々なメディアから取材オファーがあり、
雑誌等に取り上げられ
地元のTV局の情報番組でも
紹介された。


それに地元の新聞社の
西日本新聞では
エッセイ『空を見上げて』を
連載するようになった。





私は遂にやっと!
72歳というシニアな年齢で
自分の居場所を見つけられたのだ。


自分を表現することを
諦めなくて
本当に良かった。



そして今、
『大丈夫、大丈夫、私は大丈夫』
と、言い聞かせていた38年前の
自分に伝えてあげたい。


『大丈夫、大丈夫、』が
潜在意識に確実に届いたよ。
だって
著書を出版できたからねと・・・





若い時に
たくさんの迷惑を掛けてしまった
その心苦しさだけは忘れないで、
周りの人たちがhappyに繋がるように
頑張らねば!


これからもよろしくね!