翌日、私は直斗を新しい小学校へ送り届けた。
初めての学校。
知らない先生に、知らないお友達。
直斗は大丈夫だろうか……。
心配でたまらなかったけれど、私も今日からまた仕事に行かなければならない。
これからは、私がしっかり働いて、直斗と薫を育てていくんだ。
頑張らなくちゃ。
そう自分に言い聞かせて、私は仕事へ向かった。
でも、心のどこかでは、ずっと別のことが気になっていた。
今日は、和信から実家に連絡が来るはずだ。
私たちがいなくなったことに、もう気づいているだろう。
そうなれば、母に電話をかけてくるかもしれない。
そして、これから和信と離婚の話を進めていかなければならない。
また、あの人とやり取りをしなくてはならないのか……。
そう考えるだけで、気分が重くなった。
今までだって、何度話し合おうとしても、まともに話が進まなかった。
離婚届を破られたこともある。
怒鳴られたり、蹴られたりしたこともある。
これからも、あんな思いをしなければならないのだろうか。
考えるだけでストレスだった。
せっかく家を出て、新しい生活を始めたのに、和信のことを考えるだけで気持ちが沈んでしまう。
それでも、今は目の前の仕事を頑張るしかなかった。
仕事を終えて家に帰ると、私は直斗が帰ってくるのを待っていた。
新しい学校で、ちゃんと過ごせただろうか。
お友達はできたかな。
寂しい思いをしていないかな。
いろいろなことが頭に浮かんだ。
すると、玄関のドアが開いた。
「ただいま!」
直斗が、元気いっぱいに帰ってきた。
その声を聞いただけで、私はホッとした。
「直斗、おかえり! 学校どうだった?」
すると、直斗は嬉しそうに話し始めた。
「今日、お友達ができたよ!」
「えっ、本当?」
「それでね、今日一緒に遊ぶんだ! 僕のおうちの前でもう待ってるよ!」
「えっ? もうお友達がそこで待ってるの?」
私はびっくりして、急いで玄関のドアを開けた。
すると、本当に直斗のお友達が待っていた。
直斗は嬉しそうにしている。
その姿を見て、私まで嬉しくなった。
よかった……。
転校したばかりで、知らない子ばかりの学校。
直斗が寂しい思いをしていたらどうしようと、ずっと心配していた。
それなのに、初日からお友達ができて、もう一緒に遊ぶ約束までしてきたなんて。
直斗なりに、新しい環境で頑張ってくれたんだ。
私は、胸がいっぱいになった。
「直斗、よかったね!」
そう声をかけると、直斗はますます嬉しそうな顔をした。
一つ、心配事が消えた。
そう思うと、ほんの少しだけ、明るい気持ちになれた。