完全に昔と同じにならないことは大人やねんからわかっとる
私が思う、“曲の解凍”とは?
■ 大人の学習者にとっての「もう一度、あの曲を」
大人になってからピアノを再開すると、 子どもの頃や学生時代に弾いた曲が、ふと心に浮かぶ瞬間があります。
「もう一度あの曲を弾いてみたい」 「昔は難しかったけれど、今なら違う音が出せるかもしれない」
そんな気持ちで楽譜を開くと、 指先や耳の奥に、かすかに残っている“記憶の温度”が立ち上がってくる。
私はこの瞬間を、 “曲の解凍” と呼んでいます。
■ なぜ「解凍」という言葉を使うのか
「解凍」という言葉は料理の世界の比喩ですが、 ピアノにおいても驚くほど構造が似ています。
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一度仕上げた曲がある
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時間を置いて、記憶の奥にしまわれる
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再び取り出すと、完全にゼロではない
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温度を戻すように、少しずつ感覚が蘇る
このプロセスは、まさに“解凍”そのもの。
もちろん、専門的に言えば「再仕上げ」「再練習」などの言葉もあります。
でも、大人の学習者にとっては、 「ああ、昔の曲を温め直す感じね」 と直感的に伝わる言葉の方が、
ずっと親切だと私は思っています。
■ “解凍”は「やり直し」ではなく「再会」
大人の方が昔の曲に戻るとき、 そこには子どもの頃にはなかった感情や経験が加わります。
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あの頃は気づかなかった和声の美しさ
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今だから分かるフレーズの呼吸
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人生経験が音色に深みを与える瞬間
だから“解凍”は、 「やり直し」ではなく「再会」 なのです。
冷凍庫から取り出した食材が、 温度を戻すことで本来の香りを取り戻すように、
昔の曲も、今の自分の手で再び息を吹き返す。
その変化こそ、大人のピアノの醍醐味だと感じています。
■ 解凍には“時間”と“余白”が必要
曲の解凍は、急いで仕上げるものではありません。
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指が思い出すまでの時間
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耳が繊細さを取り戻すまでの時間
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心が曲と再び向き合うための余白
この“余白”を楽しめるのが、大人の学習者の強みです。
昔は「早く仕上げなきゃ」と焦っていた曲も、
今は「ゆっくり温めていこう」と思える。
その姿勢が、音に深さを与えてくれます。
■ 最後に:言葉は、学ぶ人のためにある
最近、「曲の解凍」という言葉は正しくない、という声も耳にします。
でも、言葉は本来、 専門家のためではなく、学ぶ人のためにあるもの。
大人の学習者がイメージしやすく、 安心して取り組める言葉なら、それで十分に価値があります。
私はこれからも、 学ぶ人の心に寄り添う言葉を選びながら、
“曲の解凍”という表現を大切に使っていきたいと思っています。
わー、なんか真面目に書いてもたわ。
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