(構成協力:ChatGPT)


荒野を渡る風は、灰の匂いを運んでいた。

その中を、ひとりの女が歩いていた。名をフレイヤという。名乗ることは滅多にない。彼女を知る者は少なく、知ったところで生きて語る者はさらに少なかった。

銃を腰に、外套の裾を翻し、彼女は廃墟の影に身を潜める。夜の帳が降りる頃、蛮族たちが焚き火を囲み、酒と血の臭いを混ぜ合わせていた。彼女の目が細く光る。
――今日も、金になる夜だ。

引き金の音は、ほとんど風に消えた。弾丸が放つ閃光は一瞬。次の瞬間には男たちが次々と倒れ、焚き火だけが生き残る。
フレイヤはその死体から金貨の袋を拾い上げ、ため息をついた。

彼女の声は低く、どこか貴族の育ちを感じさせた。だが、その気品の奥には黒いものが蠢いている。
フレイヤは“ナイトメア”――悪夢を宿す者。王の血を引きながら、呪いをその身に抱えて生まれた存在だった。

王家では、彼女の瞳の色が不吉とされた。
幼い頃から「災厄を呼ぶ子」として扱われ、やがて家督をめぐる争いの中で、決定的な言葉を父に吐き捨てた。

その日から彼女は王都を離れ、名も過去も封印した。
代わりに得たのは銃と、戦場で培った冷酷な感覚。
命を奪うことが日常であり、眠るたびに悪夢が現実と溶け合う。

だが夜が深まると、フレイヤは時折、焚き火の光の中で手を止める。
金貨の輝きが、昔の王冠の輝きに重なる瞬間があるのだ。

誰も答えない。風だけが荒野を渡り、彼女の長い銀髪を揺らす。
そしてフレイヤは再び立ち上がり、銃を手に取る。
悪夢を背負いながら、それでも前に進むために。

――フレイヤは今日も、世界の闇を渡る。
王の娘であり、悪夢の放浪者として。