昔からチータラが好きだ。父親が缶ビールのあてにつまんでいたのをくすねて食べてから、チータラの虜である。チータラの中でも、コンビニで珍味売り場に引っ掛けられている、細切りタイプが一番好きだ。赤い袋に入った香り消しゴムくらいのものはチーズの圧が強すぎる。自分はチータラが食べたいのに、「チーズをお食べよ」と言わんばかりの態度と香りが鼻につく。細切りタイプは、まず端っこからパツッパツッと五ミリずつ断ち切るように食べる。ホッチキスってこんな気分なのかな、「は」は出ないけどと思いながら噛む。次に、両側からタラをはがし、チーズを無造作に食べる。この回の主役はこいつではない。その後、はがしたのを一枚ずつ口に入れ、鱈ってこんな味だったかと再確認する。淡白な鱈だけを食べていると、あいつの濃厚さが懐かしくなるので、また両側をはがして今度は鱈の方を雑に食い、さっきは悪かったと念じながらチーズを放り込み、噛まずに上あごと舌とでつぶす。ねったと舌上でのびるチーズを味わい、こいつの存在が煩わしくなったころにカっと炭酸ではい、さようなら。この時の炭酸はある程度味が濃く、それでいて後味が強すぎないものがいい。コーラならペプシでなくコカコーラ。ただし、前述した赤い袋のチーズ何某の場合はペプシの方がいい。三ツ矢サイダーの場合、何かフレーバー的なものが入ってるものは避けた方がよい。クエン酸配合の緑のラベルのは一口目が一番うまく、その後は右肩下がりになるので買った他の奴に一口もらえばよい。サイダーはそのまんまのが一番うまい。炭酸の強さ、チーズに負けない味と香り、飲んだ後の清涼感等、鬼に金棒チータラにサイダーである。

 

 先日、大袋のチータラをもらった。袋にでかでかと「お徳用」と書かれたあれを。これは、コンビニのチータラと比べると、ちょっと物足りない。鱈に対してチーズが弱すぎる。単体で食うならまだしも、あてとしては力不足だ。ということで、刺激を足すことにした。まず、湯船にお湯を入れ始めた。湯温は43度、冬なので少し熱めに。お湯がたまるまで10分、動く動く、風呂桶の中にタオル、サイダー、チータラをいれ、風呂イスの上にパソコンを置き、Huluでたりないふたりをセット、服を脱いだ。ジャスト7割でお湯をとめ、足先からゆっくりと入水。部屋ので裸足の足は冷えきり、お湯につくとチクチクと刺されるような刺激。なるほど「刺激」だわ、なんて思いながら。ここで一気に肩までザバン。「ゆっくり来ると思ったか!!油断したなぁ!!!」と風呂場を罵倒する。返信はないようだ。少し上を向いてふうーと息を吐くと、一緒に力が抜けていく。ちなみに夕方3時である。タオルを取って手をふく。乾いた手を伸ばしてHuluを再生。動き出す天才たち。子の番組を見ていると、なんてこの人たちはすごいんだという感動と、この人たちに比べて自分は…という虚無感をくらうが、面白いので見る。しょうがないことだ。伸ばした手を下へ、桶に入ったチータラとサイダーを開ける。チータラはそのまま、サイダーはヘリの上に置く。チータラを口に放り込む。噛むというより潰す、舐る。口内全体に広がったぐちょぐちょの混合物を清廉な液体で浄化する。目線を上に。入ってきた二酸化炭素をさっきより大きく吹く。あー。何やってんだろ。無力感と幸福が入り混じって何もしたくなくる。ちびちびつまんでちびちび飲んで吹く。繰り返す。自分の子供がこんなことしてたら怒るべきなのかな、とか思ったりする。

 たりないふたりが終わった。手を伸ばして次の話に。今度は真っすぐ手を戻す。肘が何かに当たった。ヘリに置いていたサイダーが湯船に倒れていく。飲み口を見る。みどりなら勝ち、透明なら負け。みどりこい、みどりこい、みどりこい!鼻差で透明の勝ち。ボトル上で笑う武豊。湯船に流れる甘い炭酸、ペットボトルに入り込む自分の出汁。すぐに取り上げたものの、時すでに金村美玖。遅し。パソコンから聞こえる笑い声。部屋中に広がる果実などから集めた香り。ライブエイドのフレディ―・マキュリーのようなポーズの自分。エーオ。あー。めんどくせえ。10秒ほどして、自分は残ったサイダーをすべて湯船に入れた。チータラも捨てた。クソが。