北京で開催された冬季五輪も無事終了した。スキージャンプやハーフパイプ、スピードスケート陣の頑張りもあり、金3、銀6、銅9の合わせて18個のメダルを獲得。合算評価が史上最多に相応しいか否か(過去記事『メダル獲得秘話』参照)はともかく、まずは大健闘といったところか。キングオブスキーと称される複合での銅メダルや最後を締めた女子カーリングにも敬意を表したい。だが、減少する競技人口や環境破壊といった問題もあって、この先には暗雲も・・。
(メダル獲得秘話)
https://ameblo.jp/rohitigu/entry-12685963117.html
(過去記事より)
札幌市が1972年以来、58年ぶりの開催を目指して、2030年の冬季五輪に立候補を表明している。昨年には東京で夏季五輪が開催されたばかりだ。この間は僅か9年である。文科省も後押しを約束するが、誘致の勝算は、どれくらいあるのだろうか。
(札幌五輪のチケットと歓喜の日の丸飛行隊)
冬季五輪はアジアでの開催が続く。2018年が韓国の平昌で2022年は中国の北京だ。2030年が札幌なら、ミラノ・コルチナダンペッツォ(伊)を挾んで3大会がアジアあり、これまでの大陸間持ち回りからすると大きく逸脱してしまう。しかもアジアには北京との誘致合戦に敗れたアルマトイ(カザフスタン)もある。可能性は低いものの再立候補なら台風の目になるに違いない
一方、朗報も・・。朗報が正しいか否かはともかく欧米では五輪招致に反対する運動が盛り上がりをみせる。住民投票をすれば反対派が多数を占めることさえ珍しくない。夏季五輪でも招致活動からの撤退が相次いでいる。テロや環境破壊もさることながら住民の懸念は莫大な財政負担にある。五輪よりも、生活の安定、福祉の充実を選択するのだろう。
もうひとつはコンパクトな開催からの脱却にある。都市単独では財政負担もばかにならない。五輪後の施設が負の遺産にもなる。広域での分散開催が、こうした問題を解決する。帯広にはアジア大会でも使われたスピードスケート用の屋内リンクがあり、長野には、ボブスレー、リュージュといった1998年の五輪施設が、あまり使われないままに残る。ある意味、札幌は他の都市よりも有利な立場にあるといえよう。
スポーツの振興と競技力向上にとって自国開催の五輪に優るものはない。減り続ける競技人口にも一定の歯止めをかけることができる。施設不足の解消にもなるだろう。何せ、世界に誇るフィギアスケートでさえ、リンク不足から志し半ばで競技を断念する子供達が後を絶たないのだから。
2030年(8年後)なら、羽生結弦や渡部暁斗はいないにせよ、鍵山優真は26才、谷地宙(今大会は補欠/複合)は29才で迎える。女子でも、13才にして4回転を跳ぶ島田麻央(フィギュア)は21才、堀川 桃香(スピードスケート)は26才である。こうした新芽を摘むことなく活躍の場を与えられるということだ。
この先、日本の社会は、これまでにも増して厳しい時代に突入する。経済も人口も縮むばかりだ。とりわけ北海道は深刻な状況にある。日銀短観でも、地域別の経済指標は、いつだって後塵を拝する。こうした北海道にあっても札幌だけは別格で、高い吸引力を背景に北の大地を支えてきたが、その札幌にも人口減少の暗い影が漂い始めた。
札幌市は、人口1.971.279人(2022年2月1日現在/国勢調査より推定)で、我が国5番目の大都市である。1970年代初めに100万人を超えて以降、増加率は日本の大都市の中でも群を抜いていた。瞬く間に200万人に迫った。だが少子化と疲弊する経済によって置かれた状況は一変する。
流入の主役だった離炭者はいない。離農による転入も今では数少ない。何より、少子高齢化とネット社会が、拠点都市としての位置付けを稀薄にしてしまった。あと数年で札幌市の人口も減少に転じる可能性が高い。過疎化の渦に巻き込まれてゆくのだ。このままでは激減する道内人口と共に存亡の危機にさえ直面してしまう。五輪は千載一遇のチャンスなのだ。
ライバルは、バンクーバー(加)かソルトレークシティー(米)か、それともバルセロナ・ピレネー(スペイン)なのか。いや、それだけでない。環境破壊の不安も残る。財政負担や福祉を優先せよといった問題も議論されるだろう。だが最後は札幌市民が決める。いずれにせよ住民投票に持ち込まれるはずだ。果たして札幌市民は、どちらを選択するだろうか。
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(今大会の話題を独占した競技後のワリエワ)
戻って、、北京の冬季五輪だが、ワリエワのドーピング疑惑に揺れた大会でもあった。しかも、この問題となった検体は、ロシア選手権の前に採取されたもので、それも昨年末だったという。何故「今になって」も不明ながら、「どうして」の疑念も残る。
言うまでもなくロシアは世界屈指の『ドーピング大国』である。不正は数限りなく、だから今大会も参加は、ROC(ロシアオリンピック委員会)であり、国家としては認められていない。見方を変えれば『ドーピングに最も長けている国』といえよう。ならば、どうして発覚を見抜けなかったのか。今やドーピング検査は義務化に等しい。ワリエワのようなトップアスリートなら尚の事だ。わざわざ本番を前に「私はやりました」といった証拠を残すだろうか。
最早、オリンピックは平和の祭典ではない。政治的道具に成り果ててしまった。しかも、その運営は、アメリカの3大ネットワークによって牛耳られている。今大会に於ける最高視聴率は、フリースケーティングにワリエワが登場したシーンだったという。何やらキナ臭い匂いがしないでもないが。
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《余談》
覚えているだろうか。東京の夏季大会では暑さが問題になった。オリンピックの置かれた立場も知らずに、マスコミはただ単に、「秋か春に開催しろ」と騒ぎ立てた、ことに、マラソンといったロードに集中し、暑さ対策と称して700億円もの巨費を投じた。だが、そうした努力の甲斐なく、ロードレースは札幌に変更されることになるのだが、あれは何だったのだろうか。この数年、次期開催地のパリの暑さたるや東京の比ではない。昨夏も43℃を観測している。それでも『暑い』を聞かない。建造物だけではない。石畳の道路まで文化財であるだけに暑さ対策など以ての外なのだ。
〈気温42.6℃を観測したパリ市内〉
【パリ五輪の担当者曰く】
「オリンピックはマラソンだけではない。夏の競技を暑い夏にやるから『夏季五輪』なのだ」「それが嫌なら参加しなくて結構」だとか。
ならばどうだ。どうせ誘致するなら『マラソンを冬の大会に』を提案にしてみては。そもそもマラソンは冬の競技だ。国内のみならず海外レースであれ、その多くは11月から3月の寒い時期に行われる。但し、またマスコミが「2月の札幌は寒過ぎるので冬季五輪は春から秋に開催すべきだ」なんて騒ぎ立てたら、それこそ元も子もないが。