テニスの全豪オープンでは大坂なおみが一昨年に続いて二度目の優勝を果たした。四大タイトルの獲得数は全米の2回を合わせて早くも4個である。これで世界ランク2位を確定、1位への返り咲きも射程に入る。獲得賞金(2億3千万円)に、スポンサー収入を加えるなら、スポーツ界ではNO1(推定30~50億円)の収入を得る女性アスリートになるとされるだけに、こちらもまた凄い。

 (テニス界の大坂なおみとダニエル太郎)
 (どちらも母方は日本、父方は米国籍だ)

 テニスだけではない。今や如何なるスポーツでも若手の活躍が目覚ましい。それも特質がある。ハーフ(両親の何れかが外国人)による底上げが大きいということだ。

 かつて三沢高校の太田幸司が甲子園の話題を独占。近鉄に入るや、それまでの不人気ぶりはどこへやら。行く先々が追っかけのファンで埋め尽くされた。だが、それまではどうか。偏見の歴史でしかなかった。ボクシングのカシアス内藤にプロ野球の衣笠祥雄と、かなりイジメられたと聞く。白人崇拝の対極にあったとはいえ、その苦労たるや如何許りだったろうか。

 それも今では様変わり著しい。プロ野球では、オリックスの宗佑磨、楽天のオコエ瑠偉、日ハムの万波中正、広島のアドゥワ誠など次世代のスター候補目白押しだ。サッカーでは、Jリーグのみならず、大学、高校、サテライト、ジュニアまで、とても多くて書き切れない。創成期の主流だった帰化選手とは異なり母親(父親)が日本人であることから生まれながらにして日本(一部は二重)国籍なのだ。

 陸上競技なら更に多い。サニブラウン、ケンブリッジ飛鳥、ウォルシュジュリアンといった短距離だけではない。インターハイから全中、小学生のクラスまで、ルーツをアフリカに持っ家系の子息たちが、トラックにフィールドと、次々に上位(記録)を占め始めている。昨年には、世界から最も遠いとされた砲丸投げにも、アツオビン・ジェイソン(18)という超新星が現れた。アテネ五輪では、ルーマニア人を母に持つ室伏広治が金メダルを獲得したが、これからは、こうした子供達が主流になるのではなかろうか。

 バスケットボールには、NBAのウィザーズに八村塁がおり、PFやSFで不動の地位を築きつつある。国内にもテーブス海や女子の渡嘉敷来夢、オコエ桃仁花(楽天オコエ瑠偉の妹)など枚挙にいとまがない。この十数年で、マイケル高橋だけだった時代からの変貌は、隔世の感でもある。柔道も然り。アフリカンだけではないものの、ベイカー茉秋、七戸龍、ウルフアロンなど、ハーフなしには語れなくなっているのだ。

 例外は大相撲だろうか。これまでも入門希望者はあったが、アフリカ係だけは髷(まげ)を結えないことを理由(実際は肌の色?)に許されていない。同じアフリカ大陸でも大砂嵐はエジプト出身だった。

 この大相撲、モンゴル勢だけに席巻されているかと思いきや、そうでもない。純然たる日本人として見れば最大勢力はフィリピンなのだ。横綱、大関候補だけでも、高安、御嶽海、貴源治、貴ノ富士(廃業)など、フィリピーナを母親とする相撲取りが多数を占める。当地でも、農村部では3人に1人がフィリピン人女性との結婚であるだけに、これも当然の流れか。

 相撲だけではない。今や、水泳の今井月、ゴルフの笹生優花と多岐に渡る。かつては冬季種目にも、フィギュアスケートで一世を風靡した渡部絵美がいたが、最近の比国勢の活躍ぶりは特筆ものであろう。

 その冬季競技たが、スピードスケートのウイリアムソン師円、レミ兄妹は父親がオーストラリア出身である。ことに、来年の北京五輪に出場するであろう兄・師円は、パシュートに日本男子勢初のメダルをもたらすかも知れない。

 (国別、在留外国人数)
 〈法務省2020〉
(フィリピンだけは全体の70%が女性だ)

 日本は移民(認定)に於いて世界でも最も厳しい国のひとつとされる。だが国際結婚となると別だ。都市部だけではない。田舎でも急増の気配にある。比較的、閉鎖的な社会に位置する我が家系でさえ、その数は増えるばかりだ。法事では、誰も強要しないのに線香を立て、「合掌」で統一されているのは不思議ではあるが・・。

 何れにせよ“ガイジン”なんて存在しない時代がやってくる。いや、日本人の方がガイジンになってゆくかも知れない。でも、日本人の何倍も何十倍もアメリカに移り住んでいる中国や韓国で、こうした傾向が見られないのは何故だろうか。もしや、我々が知らないだけで、両国共に偏見と差別に満ちた社会なのだろうか。

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《余談》

 米国でのコロナ死者数が今日明日にも50万人を超える。これは第二次世界大戦での犠牲者をも上回る甚大な数字である。当初は多くても20万人程度であろうと見られていた。ワクチンも全国民に行き渡るまでにはまだまだ時間を要する。果たしてどこまで増え続けるだろうか。

(鳥から人への感染を伝える新聞)
(日経紙、1/22日朝刊より抜粋)

 こうした中、心配な情報が飛び込んできた。ロシアでは鳥インフルエンザ(H5N8型)の鳥から人への感染が確認されたという。まだ人から人への感染はない。主だった症状もない。しかし、いつ変異して強毒化し、人から人を襲わないとも限らない。約100年前、五千万とも一億人ともされる犠牲者を生んで全世界を震撼させたスペイン風邪は、この鳥インフルエンザから始まっている。コロナが、こうした“本命”への先駆けでないことを願うばかりだ。