昨年来、関東地方では強い地震が相次いでいる。緊急地震速報だけでも、2020年6回(2月1日、5月4日、6日、11日、7月9日、30日)で、今年も先日(2月13日)の福島県沖地震で発令されている。時期が時期だけに嫌な予感がしないでもないが、こうした地震ではデマが飛び交うもの。でも、どこまでが本当で、どこまでがデマなのだろうか。

 この時期、立春を過ぎたとはいえ、まだまだ寒い日が続く。持病や古傷を抱える者にとっては厄介な季節でもある。天候でも悪化するなら気の滅入りも手伝い、これまでにも増して不調になりがちだが、それだけだろうか。その逆はないのだろうか。

 1968年、メキシコで開催された夏季五輪の走り幅跳びでは、ボブ・ビーモン(米国)が、8m90という驚異的な世界記録を叩き出して金メダルを獲得した。それまでの記録を55cmも上回る大記録である。誰もが目を疑った。追い風2.0mに恵まれたとはいえ、とても人間業ではない。結局は、長距離を除く投擲や短距離走でも好記録が続出したことから、メキシコシティの高さ(海抜2400m)が注目された。

 大リーグでも、コロラドロッキーズなど高地に位置する球場は、ホームランが飛び交う。理由は気圧が低いことにある。だからこそ「低気圧」であっても記録は出やすい。日本でも、小平奈緒や高木美帆に代表されるスピードスケート陣は、荒天であれ、強い低気圧の接近は(室内での競技会に限り)大歓迎だそうだ。

 地震ではどうか。前兆には必ず、頭痛に発熱、耳鳴りや関節の痛みに加えて、動悸に息切れと「体調悪化説」が多数登場する。否定はしない。でもそれは認知的なバイアスである場合が多い。自然界の動物は、鳴動を事前に察して、ほぼ無事に逃げ延びることで知られる。体調不良なら逃げ遅れて死滅してしまうだろう。

 大地震の場合でも気圧の低下と良く似た状況を生む。数日前から(1)各競技会に好記録が相次ぎ(2)急患は減少気味に推移し(3)低下する死亡率、などである。極めつきは(4)出生率だろうか。兵庫県南部地震でもそうだが罹災から10ヶ月までの出生率に顕著な上昇が見られるのだ。

 地震保険にも不思議なことが。阪神淡路大震災当時、兵庫地区(神戸市)は住民の多くが「ここだけは地震がないから安全」と信じて疑わない全国でも有数の土地柄であった。ならば地震保険などには一切興味を示さないかと思いきや全国一の加入率だったというから驚く。これとて“種の保全”を計るべく“予知本能”の一部ではなかろうか。

大地震を前にした気圧配置をご覧頂きたい。

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 これは2011年3月10日の気圧配置だが、オホーツク海に発達した低気圧があることから南岸低気圧が日本近海を通過したことが分かる。東日本大震災の数日前には気圧が低下していたということだ。阪神淡路大震災でも然りである。

《参考》
(1995年1月13日)

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(1995年1月16日)

イメージ 3※〈阪神淡路大震災は1995年1月17日〉


 阪神淡路大震災の場合、冬型の気圧配置が崩れて強い季節風も収まった頃合いであるが、これとて気圧が降下した只中であったことに疑う余地はない。

 ならば、大地震を前にした体調は、悪化ではなく『活性』でなくてはならない。人間だけではない。自然界は全て同じだ。だからこそ生命は未曾有の危機をも乗り越えて存続する。こう考えないと説明がつかない。

 この3月11日で東日本大震災から10年目を迎える。寺田寅彦は、関東大震災の様子から「天災は忘れた頃にやってくる」の名言を吐いたが、今も昔も変わらない。被災して初めて気付くことも多い。だが宏観(前兆現象)の多くは地震の後に示されたものばかりだ。そして前兆である如くに語り継がれてゆく。しかし、その逆もまた多いことをお忘れなきよう。

とりわけ「荒天(大雨、大雪、強風)明けの穏やかな日和」は強い地震に注意かと】