日本海側に35年ぶりとされる豪雪をもたらした強い寒波が去ったと思いきや今度は南岸低気圧の通過によって一昨日は関東平野でも雪景色に。普段は雪の降らない当地でも、ご覧の通りである。積雪は一昨年以来だろうか。新型肺炎の急速な拡大から緊急事態宣言が発令されたばかりであり、これが災いしなければ良いが。

(うっすらと白くなった雪景色)
(1月12日早朝)

 早いもので、この17日には阪神淡路大震災から26年目を迎える。不思議と大地震は荒天明けに多い。関東大震災は台風が日本海側を、東日本大震災は南岸低気圧が東日本を通過した直後に襲われている。阪神淡路の場合は、強い西高東低の冬型の気圧配置が崩れ、それまで吹き荒れていた北風も収まった頃合いであった。

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【参考/一部重複】

(大地震を前にした気圧配置をご覧頂きたい)

〈関東大震災(9月1日)直前の天気図〉
(1923年8月30~31日)

 関東大震災は、九州に上陸した強い台風が新潟沖を通過した頃合であり、それまでの安定した夏場の気圧配置を一変させた直後であった。

 意外と知られていないが、2004年10月23日に発生の中越地震も台風が通過した直後である。この地震では死者68人、負傷者4805人といった大きな被害のほか、上越新幹線が脱線していることからも覚えている方は多いのではないかと思う。

〈中越地震(10月23日)の直前にも台風が上陸していた〉
(2004年10月20日)

〈熊本地震(4月14日)の前日には九州南岸を低気圧が通過していた〉
(2016年04月13日)

 東日本大震災でも同じだ。

〈東日本大震災(3月11日)直前の天気図〉
(2011年03月10日)

 これは2011年3月10日の気圧配置だが、オホーツク海に発達した低気圧があることから、南岸低気圧が日本近海を通過した直後であることが分かる。東日本大震災の数日前(3月7~8日↓)には気圧が降下していたということだ。
(2011年3月7日の天気図)

 阪神淡路大震災でも条件は変わらない。下図の如く、強い冬型の気圧配置で吹き荒れた強風も収まり、移動性高気圧に覆われつつある穏やかな日和の中で発生している。

〈阪神淡路大震災直前の気圧配置〉
(1995年1月13日)
(1995年1月16日)

(阪神淡路大震災は1995年1月17日)

 このように、大きな地震ほど天候の変わり目に多い。強い低気圧(台風)の通過後であり、気圧配置が大きく変わった直後であって、いずれも穏やかな日和の只中であることに注目して頂きたい。

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 また、こうした地震には特質がある。遠隔地で頻発する地震に目を奪われている間に虚を衝かれているということだ。

(1)1990年代の初め、日本列島の大地震は北日本一帯に集中していた。研究者の多くは「北海道、東北地方が危ない」と警鐘を鳴らした。でも実際に襲われたのは北日本ではない。兵庫県南部であった。

☆1993年01月15日、釧路沖地震、M7.6
(釧路市で最大震度6、死者2名)

☆1993年07月12日、北海道南西沖地震、M7.7
(奥尻島で被害甚大。死者行方不明230名)

☆1994年07月22日、日本海北部で地震、M7.3
(地下552kmの深発、関東地方でも震度3)

☆1994年10月04日、北海道東方沖地震、M8.3
(釧路、厚岸で最大震度6、北方領土で被災)

☆1994年12月28日、三陸はるか沖地震、M7.8
(八戸市で最大震度6、死者3名)

☆1995年01月07日、岩手県沖で地震、M6.9
(八戸市、盛岡市、葛巻町で最大震度5)

★1995年01月17日、阪神淡路大震災、M7.2
(最大震度7、死者不明6437名の大惨事)

(2)2010年以降、東日本大震災までは沖縄、小笠原といった南方の海域に強い地震が続いた。南海トラフを懸念する声が相次いだ。だが、これも違った。

☆2010年02月27日、沖縄本島近海地震、M7.2
(糸満市で震度5弱。一時、津波警報発令)

☆2010年11月30日、小笠原西方沖地震、M6.8
(地下494kmの深発、関東、東北で震度3)

☆2010年12月22日、父島近海で地震、M7.4
(最大震度4。小笠原に一時津波警報発令)

★2011年03月11日、東日本大震災、M9.0
(3月9日の前震(M7.3)に続く巨大地震)

(3)熊本地震までの2016年にかけては、大震災の余波もあって満遍なく揺れたものの、薩摩半島西方を除き大地震はやはり遠隔地だった。

☆2014年07月12日、福島県沖で地震、M7.0
(関東から東北の広い範囲で最大震度4)

☆2014年11月22日、長野県北部で地震、M6.2
(長野市、小谷村などで最大震度6弱)

☆2015年05月30日、小笠原西方沖地震、M8.1
(682kmの深発、母島と二宮町で震度5強)

☆2015年11月14日、薩摩半島西方地震、M6.7
(鹿児島と佐賀で最大震度4)

★2016年04月16日、熊本地震、M7.0
(最大震度7、前震を含め死者204名)

(1~3)は各々、阪神淡路、東日本、熊本地震の前にあった大地震である。ご覧の通り同じエリアではない。何れも“穏やかな対極”に発生している。歴史に残る幾多の大地震でも然り。いつだって「よもや」の空白域ばかりが襲われているのだ。

 阪神淡路大震災の前、兵庫県南部に大地震はないと思われていた。北日本に多発する地震など他人事でしかなかった。東日本大震災の震源域は完全な盲点だった。熊本であれ大地震の発生確率は全国でも有数の低さであった。

 昨年来、緊急地震速報の相次ぐ日本列島。関東地方だけでも6回に及んだ。何れも震度5以下で事なきを得たが、もう少し規模が大きかったらどうなっていただろうか。負の歴史は同時多発的に繰り返されるもの。約百年前は、スペイン風邪、関東大震災、そして大恐慌に至り、2010年前後は、リーマンショック、HINI(豚インフル)、東日本大震災と続いた。時期が時期だけに大鯰の寒中見舞いだけは遠慮願いたいものだが・・。

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《余談》

 コロナウイルスの蔓延が止まらない。1月に入るや死者までが急増している。1日当たり100人を超える勢いにある。あたかも欧米の現状を見ているようだ。アジア各国、ことに東南アジアやモンゴロイド係に発症が少ないのに、どうして日本だけが“欧米化”しているのだろうか。

 そもそも日本の医療体制はどれだけ脆弱なのか。感染者、死者数共に米国の約1%でありながら、「大変だ、医療崩壊してしまう」と大騒ぎしている。確かに発熱だけで診て貰えない。陽性なら自宅待機を余儀なくされる。そして診察(入院)に至らず在宅のまま亡くなるケースが後を絶たない。この数日だけでも急増の気配である。

 では、日本の十倍も百倍も発症して死者数も桁違いの欧米で医療崩壊にあるかと思えば、そうでもない。手術や治療も、これまでと変わらず(東洋経済ONLINE)行われているという。アジア、そして世界の主要各国の中でも深刻な「医療逼迫・崩壊」の危機に直面しているのは日本だけのようだ。

 寒い季節は脳梗塞や心筋梗塞といった急患も増える。交通事故も含めて受け入れが出来ない。癌患者の手術も困難を極める。この先、5倍、10倍と増えたら、どうなってしまうのだろう。我が国の病床数(率)は世界一の水準にある。医師だって少ないわけではない。ガラ空きの病床に反して、コロナは疎か発熱患者まで受け入れず、「患者が来ない、このままでは潰れてしまう」と嘆き節の医療機関と共に、この国は止めを刺されてしまうのだろうか。