プロ野球の日本シリーズは今年も福岡ソフトバンクホークスの完勝で幕を閉じた。これで日本シリーズは一昨年の第3戦から12連勝。コロナ渦で迎えたシーズンでもあり、先ずは「めでたしめでたし」といったところか。

(歓喜のソフトバンク・ホークス)
(毎日新聞画像より)

 だが喜べない球団もある。読売ジャイアンツのことだ。2年続けての4連敗と完膚なきまでに叩きのめされた成績だけではない。人気の上でも凋落著しいのだ。感染防止のために入場者数が制限されたとはいえ、その上限にも満たないシーズン中の寂しいスタンド。視聴率たるや二桁にも大きく届かず、ホームの東京(関東地区)ですら蚊帳の外の様相である。巨人、大鵬、玉子焼きと持て囃され、全国を席巻したあの頃の人気は一体、どこへ行ってしまったのだろうか。

 空前のプロ野球ブームに沸く昨今、広島、DeNA、ソフトバンク、楽天など、チケットが入手困難な地域さえある。視聴率たるや、広島、福岡、仙台など、カードによっては、あの紅白歌合戦でも及ばない。こうした中、巨人だけは別格で、伝統の阪神戦ですら一桁半ばといった体たらく。今や、スポンサー離れから地上波ではTV中継もなく、ラジオ(TBS)にまで撤退されるような、お荷物球団に成り下がってしまった。

 理由はいろいろあるが、営業努力の怠慢に加えて、スキャンダルも尽きない。マスコミに大きく取り上げられるのは、賭博に女性問題、薬物疑惑と、野球以外での話題ばかりではないか。しかも、それだけではない。市場の変化が大きな影を落としている。

 サッカーJリーグが誕生して以降、プロスポーツでは地域密着が浸透した。当然のことだが日本だけが立ち後れていた。欧州サッカーのみならず、大リーグでも試合の大半はホームタウンに限られる。それがプロ野球の巨人だけは違った。市場独占を目論み全国展開を企てた。全試合が全国ネットでテレビ中継された。だが、フランチャイズ制が、それを変えた。度重なる不祥事の影響も加わり視聴率は急降下してゆく。

 今や東京でさえ、ジャイアンツの野球帽なんて滅多に見ない。ダサさに敬遠するのか、恥ずかしいのか、野球観戦のスタジアムを除けば街中でYGマークの帽子を目にすることなど宝くじに当たるよりも難しい。たまにいるのは、酔っ払って路上を徘徊するオジサンくらいなもので、野球少年であれ所属チームのオリジナルや大リーグのキャップばかりだ。だが最近は少し様子が違う。楽天イーグルスの野球帽だけは見掛けるようになった。なぜだろうか。

 東京は地方出身者が多い。それも圧倒的に東北地方からである。人口推移をみれば分かるが、終戦直後(1945年)の東北6県の総人口は824万人で現在の902万人と、あまり変わらない。理由は言うまでもない。就職に離農からの求職と様々だが首都圏(東京)への転出にある。

 この間、日本の総人口は7199万人から1億2712万人と76%も増加している。同率の増加と仮定するなら、東北の人口は1450万人が妥当であり、548万人足りない。即ち、この内9割が首都圏への転出であり、約500万人が東北出身者と、その子息ということになる。

 一方、東京の人口は、1945年の348万人から997万人も増え1345万人の大都会に変貌した。だが自然増ではない。地方からの転入に支えられたに過ぎない。県別では新潟が一番とはいえ総数では東北出身者が圧倒的多数を占める。だから首都東京は日本の中枢だが東北各県からの500万人が支配する東北文化圏でもあるのだ。

 プロ野球の話題はカープ女子に代表される広島だけではない。マスコミの扱いでは楽天が露出度を増す。それも宮城ではなく関東地区に於いてだ。地域密着を掲げて人気急上昇の首都圏4球団ならいざ知らず東北の球団に対してである。やはり故郷球団への“回帰”にメディアが便乗しているとしか考えられない。

 東京ドームでのソフトバンク戦では九州出身者のホークスファンで埋め尽くされる。日ハム戦なら北海道出身者が列をなす。楽天イーグルスは、その比ではない。この先、故郷回帰が進むなら、東京は楽天ファンに席巻されてしまうだろう。何せ、500万人が愛しむ故郷球団であり、東北6県合わせて1400万人の絆でもあるからだ。

 プロ野球・巨人軍に潜む闇と影。過去の栄光から企業による内野指定席の大量購入に支えされているとはいえ、これからはそうもいかない。コロナ騒動による経営悪化で接待どころではない。その前に巨人戦(ご招待)ではもう誰も喜ぶまい。年間ボックスが空席だらけの東京ドームを想像して頂きたい。そもそも外野席は狭い。ロッテより弱い? いや、かつてロッテが本拠地としていた川崎球場よりもガラガラになるかも知れないのだ。大都会の喧騒から逃れて瞑想にでもふけるなら最適ではあるが・・

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《余談》

(開発進むコロナワクチン)

 一段と加熱する新型コロナウイルスのワクチン開発競争。米国では来月(12月)中旬にも摂取開始の見込み公表から株価は急騰、ついに史上最高値を更新してしまった。だが不思議なことも。先行したのは米国だけではない。中国やロシアでも完成を報じているが、こちらの方は全く認めようとしない。西側の報道を信じる限り、あくまで未完成であり「不良品」なのだ。

(中国の新型コロナワクチン)
(ネットより引用)

 かつて似たケースがあった。テレビや光学機器と、メード・イン・ジャパンが先行するや、これらも受け入れ難い「粗悪(阻害)品」であった。理不尽な輸入規制のみならず各地で激しい不買運動が繰り広げられた。続いて韓国製が、そして今ではファーウェイにTikTokなど、中国企業が標的である。

 コロナワクチンの市場規模は70兆とも100兆円ともいわれる。莫大な開発資金をつぎ込んでいる。後塵を拝することなど絶対に許されないのだろう。ライバルは如何なる手段を講じてでも排除せねばならないのだ。

 そもそもロシアは旧ソ連時代からウイルスの研究が盛んだ。細菌兵器には、セットでワクチンの開発が不可欠である。中国に至っては1日の長がある。何せ(コロナの)発生源は武漢ではないか。開発は時間との勝負だ。研究素材が豊富なだけに、どこよりも有利だといっても過言ではあるまい。インフルエンザ・ワクチンだって完全には程遠い。冷静にみて、米欧中露と何れも平等に、まだまだ「粗悪品」だと思うが・・。