日本では今、定年延長のみならず終身雇用の是非まで論議されている。終身雇用は長年、経営家族主義の下、年功序列と共に労使関係の根幹であった。しかしどこか違う。従業員の生涯保証でなく、少子高齢化に伴う人材不足と財源難対策であり、国民の老後を自己責任で完結させるための在宅姥捨山計画のようでもある。

 (急増する高齢者人口)

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 (厚労省データより)

 最多層の団塊の世代も間もなく70歳を超える。自活を求められた場合、果たして何歳まで働けるだろうか。

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 昭和から平成にかけては職場の多くが55歳定年であった。1986年の法改正により60歳定年が企業への努力義務に、1994年からは60歳未満定年制が禁止事項となり初めて60歳定年が一般化した。そして現在は、一部の企業や公務員を除き大方65歳ではあるが、さらに来年には70歳を努力義務にすべく法改正の動きにある。

 定年が55才だった当時(昭和末期)を覚えているだろうか。50才なら、かなりの爺様に見えたものだ。リタイア間近だけあって、どう足掻いてもナイスミドルではない。孫を膝に乗せて日なたぼっこが似合いそうな老人ばかりだった。今なら福山雅治や及川光博の年代である。全体が若返ったのか、若く(元気で)ないと生きていけない時代なのか、どちらだろうか。後者のような気がするが・・。

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(以下、日経より引用)

 この終身雇用に関して・・

 日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ社長)は13日、都内で開いた記者会見で「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか“終身雇用を守っていくのは難しい”局面に入った」と述べた。

 豊田会長は「今の日本(の労働環境)を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘。現状のままでは終身雇用の継続が難しいとの考えを示した。

 終身雇用を巡っては、経団連の中西宏明会長も「企業からみると(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」と語るなど、これまでの“日本の雇用慣行が転機を迎えた”との見方を示している。

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 こうした発言には不可解な点も多い。「守っていくのは難しい」や「転機を迎えた」と述べていることから、財界や経団連の経営者感覚では、この日本の就労形態を未だに終身雇用と見なしていることだ。確かに高額報酬と豊かな企業年金に支えられる一部のキャリア族はそうかも知れない。だが圧倒的多数を占める“その他大勢は”そうではない。派遣社員や中小企業に終身はない。明日をも知れぬ立場に置かれているのだ。

 終身雇用を奨励する国と、否定的な姿勢を示す企業の狭間で、いつも蚊帳の外に置かれるのは我々国民ばかり。死ぬまで働くにも、それまでは絶対に雇用してくれない。年金財源は枯渇し、不動産の資産価値も喪失するであろう明日は我が身の悲しき現実。約3割(3人に1人)が90歳に到達する高齢化社会にあって「働かざる者食うべからず」は若者だけではない。高齢者にもヒタヒタと迫っている。

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《折り紙》

 〈働かザルもの食うべからず〉

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「じゃあ、オラなんかもう、お手上げだわ」