混迷続くEU。英国の離脱問題だけではない。5月の欧州議会選挙や、10月のギリシャ総選挙など、独、仏、伊、西といった大国(の選挙)ではないものの波乱含みにある。極右勢力が台頭すればEU分裂にさえなりかねない。何れも国粋主義を唱え移民排斥を掲げているだけに気になるところだ。

 欧州は今、中東・シリアや北アフリカから大量に流入する移民(難民)問題の渦中にある。しかも、その数が凄い。ドイツだけでも難民申請者は年間80万人を超え、これは日本の年間出生数にも匹敵する。移民に否定的な英国でさえ、一昨年には過去最多の33万人に達した。

 〈主要各国の移民(帰化)人口比率〉

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 (OECDデータ2018より)

 財政負担も大変だ。ドイツでは、その額を約1兆3千億円と試算する。だが悪いことばかりではない。移民容認国は往々にして豊かな財政基盤を維持する。一時の排外や混乱も、やがては落ち着き、人的資源や内需の根幹として還流するからだ。

 一方、日本の場合はどうか。この4月から外国人の就労が解禁されることもあって、これまで以上に(外国人が)やってくるだろう。だが勘違いしてはならない。彼(女)らは一時凌ぎの助っ人であり体のいい勤労“奉仕”要員としか見られていない。欧米各国と違って国籍取得(移民)は認められないのだ。

 我が国への正式移民(帰化)は年間1000人程度で推移する。これは、200万人の入国に対して僅か0.05%に過ぎず、国際的にも希な低さである。しかも、プロ野球やサッカー、バスケットや相撲といったスポーツ選手が優先され、一般人など微々たるものでしかない。そう、日本は世界で最も移民を認めない。一部の排外主義者が移民反対を叫んだところで日本の国籍取得件数は世界最少なのだ。

(過去5年間の国籍取得者数)

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平成24年 1,134名
平成25年 1,030名
平成26年 1,131名
平成27年 1,089名
平成28年 1,033名

(法務省データより)

 結果、人手不足の間は重宝されるが、一度不況にでもなれば真っ先に切られる運命にある。雇用保険はない。無論、年金なんて貰えない。医者にも行けない。就労に要した保証金や日本語習得のための修学費用が重くのし掛かる。悪徳業者からは借金の返済に犯罪を強要される悲しき日々。

 アジア各国は、こうした問題を取り上げ日本の対応を厳しく糾弾する。だが日本のマスコミは殆ど取り上げない。それどころか日本は素晴らしい国だから憧れて多数の外国人がやってくるだろうとしか言わない。世界一移民を認めない国ニッポン。詐欺まがいの就労促進に、どんな意味があるのだろうか。

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 因みに、こうした問題は受け入れだけではない。日本民族もかつて極めて危機的な状況に追い込まれていた。あの3.11のことだ。福島の原発事故は世界中を震撼させた。事の重大さは、東京在住の元総理や有力政治家の多くが日本を離れ、台湾や諸外国へ逃れたことからも容易に想像が付く。だが首都圏が如何に危機的だったか国民には知らされていない。一部の者だけが知っていたようだ。

 首都圏と東北地方南部には合わせて4千5百万人が居住する。これらが難民になる危険性があったのだ。何せ日本は狭い。自治体の受け入れにも限度がある。地域人口の1割がやっとだ。10万都市であれ1万人以上の受け入れは出来ない。あくまで地元住民の保護を優先せねばならない。だから体育館など雨風を凌ぐ施設は提供出来ても食料や物資の支援は不可能に近い。

 企業は東京本社の中枢機能を放棄。未曾有の大惨事ではバックアップシステムもシュミレーション通りにはいかない。物流は大混乱。生産中止が相次ぐ。スーパーやコンビニの棚からは商品が消える。最早、何もない。地方の親戚に頼ろうにも、親族だって自分の生活も儘ならない状況にあって全国の知人縁者が殺到してはどうにもならない。結果として、国内各地に収容された約7百万人を除き、残りの3千8百万人は路頭に迷う宿命にあった。

 このままでは餓死してしまう。国外脱出にも大海原に妨げられて太平洋側には出られない。仕方なく日本海を選択したところで行き場がない。とても辿り着けない。多くは波間に消え海の藻屑となってゆく。やっとの思いで辿り着いたにせよ、そこでは熾烈な反対運動を目にすることになる。浜辺には、難民の入国反対や、小日本人帰れ! のデモ隊が待ち受けるのだ。

 これは例え話ではない。危機一髪で回避したに過ぎない。我々だって、こうした立場に、いつ置かれても不思議でないことを認識しておかねばならない。