景気は良いのか悪いのか、好業績に忍び寄る人手不足にあって、蚊帳の外に置かれた企業の数々。取り分け戦々恐々なのが、内需頼りで凌ぐしかない産業であり、それも海外戦略にシフトした一部の大手を除く住宅メーカだろうか。

(住宅着工戸数の推移)

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(住宅産業は少子高齢化の影響を最も受けやすい業界の代表格でもある)

 バブル時代、住宅メーカーでは、展示場の「モデルハウスお譲りします」が盛んに行われた。でもこれはモデルハウスを廉価で処分するのが目的ではない。あくまで、マーケティングの一環であり、営業活動(販促)における究極の裏技であった。

 住宅メーカでは何よりも顧客情報が欲しい。いつ、どこで、誰が、どういった住居を探しているかを知りたい。モデルハウスを餌にすることで全情報が手に入る。加えて、移設に適した敷地か否かの確認を装い、土地の図面提出まで義務付けている。

 もう怖いものはない。恒例の「間に合ってます」攻勢に怯えることもない。そこで「〇〇様、お目出とうございます。敷地が狭小でモデルハウスの移設には適しませんでしたが、〇〇万円引きの副賞に当選なさいました。本当に良かったですね」となる。

 これは当選ではない。申込み者全員に同じことを言っている。そもそも、モデルハウスの移設に適した土地など滅多にない。敷地面積や形状も千差万別で反転(設計図を裏返しにした仕様)したところで道路付けさえ合わない。しかも、事前に一定の申込み金を徴収しているため、かなりの確率で成約に至る。閉店セールではないが、結果として決算期の駆け込み価格より遥かに高値で買わされているのだ。

 最近では、こうした古典(販売手法)が復活しているように、住宅産業が大変なことになっている。2015年の5月には空き家対策措置法が全面施行されたが、どうも効果に乏しい。空き家は増え続け全国では820万戸に達した。これは7軒に1戸の割合である。しかも、これで終わりではないから恐ろしい。

(空き家の推移)

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(総務相統計局データより)

 まもなく家屋が世帯数を上回る。いわゆる2019年問題であるが、そこに東京五輪後の不況が追い討ちをかける。15年後(2030年初頭)には2050万戸の空き家が誕生するという。実に全戸数の3分の1が空き家になる計算である。

 市場は需要と供給のバランスで成り立つ。2030年以降は高齢者の急減が始まる。高齢者世帯や一人住まい族の欠落が空き家の増加に一段と拍車をかける。瞬く間に3000万戸に達して廃屋が全体の過半数を占めるだろう。日本中が軍艦島になってしまうのだ。ならば不動産に資産価値はない。

 最近では不動産相続を放棄するケースが後を絶たない。理由は、相続しても買い手が付かない以上、資産価値は期待できない。家屋解体には百万単位の費用を要する。更地にしても空き地物件に延々と納税し続けねばならない。結局は、土地建物自体、究極の金食い虫であることに気付いたのだ。

 20XX年、空き家物件の競売が行われた。但し、金の流れはこれまでとは逆で、家屋の所有者が購入希望者に支払わねばならない。ネットオークションには「当物件を所有して下さる方には〇千万円をお支払します」の提示で溢れた。維持費や払い続ける納税額を考えれば〇千万円など安いものだ。それでも希望者は皆無だった。

 まもなく、こんな日がこないとも限らない。いや確実にやって来る。全家屋の半数が廃屋では国家としての体を成さない。観光資源が全国廃屋巡りでは洒落にもならない。僅か十数年で国家そのものが限界集落になってしまうのだ。やはり底辺を拡大しなければ何も解決しない。

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(東京都心の裏通り)

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(銀座2丁目/撮影は4月)

 地価日本一の銀座も、一歩裏通りに入ると、こうした光景を数多く目にする。廃屋は地方だけの問題ではない。下町から都心へと、首都・東京にも忍び寄っているのだ。

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《折り紙》でベコ? の独り言

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(おら、東京さいぐだ♪♪)

「東京さいっだら、吉〇家の〇丼てもんを、たらふく食ってみてえだ」

「ん?・・・」

 吉幾三の歌ではないが「♪銀座でベコ(牛)飼うだ♪」も夢ではなくなるかも知れない。