認知症患者が増え続ける。とはいっても一般社会のことではない。刑務所でのことだ。

 法務省は、高齢受刑者(平成26年末で9736人)の認知症に関する実態調査を行い、その結果を公表している。内訳は、60歳以上の受刑者の14%(約1300人)、65歳以上では17%(1100人)だった。

 一般的には、65歳以上で16%が認知症とされ、厚労省調査による平均値と変わらない。だが刑務所には大きな問題を抱える。

 刑務所は更生の館だ。受刑者の社会復帰を促す場でもある。それが高齢化著しい。社会復帰どころではない。認知症は進行する。徘徊が始まる。看守は老人介護に追われる。誰もが「自分は何のために刑務官になったんだ」と思い悩むに違いない。

 犯罪白書では、一昨年、刑務所に入った受刑者の1割が65歳を超えたという。約176万件の犯罪の内、一般刑法犯だけでも65歳以上の検挙数は4万7252人と、この20年間で4倍にも達している。

 マスコミは外国人犯罪を大きく取り上げる。ならば、日本は外国人による犯罪天国かと思いきや、こちらは増えていない。犯罪率は日本人の平均よりも少ない。激増する高齢者犯罪に比べれば至って健全なのだ。このペースなら大変なことになる。少年が、外国人が、と、これらの犯罪を嘆く前に、受刑者の大半が高齢者になってしまうだろう。

 軽犯罪だけではない。凶悪犯も増え続ける。老々介護の末の犯罪も激増する。入所時は健康でも、やがて発症し、そして悪化する。刑務所が人生最期の安住の地に取って代わる。

 犯行の段階で既に認知症なら心神耗弱で無罪もあろう。しかし、健全だったら、そうもいかない。刑の猶予もない。看守だって人手不足の渦中にある。そして高齢化する。減るばかりで高齢化する刑務官(看守)に、急増する高齢者犯罪の残酷な対比・・。

 国は高齢者の地方移住を促す。だが、基準は曖昧であり、認知症の進行した患者の扱いに関しては口籠ってしまう。受け入れ側も「健康で裕福な老人求む」を原則とし、発症者のみならず単身者や貧困層は歓迎しない。結果として歪な社会だけが構築されてゆく。

 ◇◆近い将来◇◆

「お隣の爺さま、やっと捕まったそうじゃ」

「だったら、もう老後は安心じゃのう」

「でも看守殿も足腰弱っとるから心配だわ」

「んん?」

 なんて時代が、やってくるかも知れない。

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 《《折り紙》》🐖🐖🐖

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「ブタ箱に臭い飯って、なんのこっちゃ」

「こんな綺麗好きで美食家はおらんのに」