「ああ忙しい、忙しい!」
 
 猫の手も借りたい忙しさとは、このことを言うのでしょうか。どこもかしこも人手が足りません。不況にあえぎ失業者で溢れた過去も今ではすっかり昔話になっといたした。

 「昔は良かった。何せ人手不足は地方から、地方が駄目なら海外があったのだから」

 こうした嘆き節も虚しく、この世界には最早、労働力を供給できるような発展途上国など存在しないのです。このままでは、あらゆる産業が成り立ちません。

 ある日のことです。「そうだ、現在が駄目なら過去があるさ」の一言から古代人の活用が論議されました。

 「おいおい、そんなの連れてきて何をさせるって言うんだい」

 「旧石器でも作らせるつもりじゃないんだろうな」

 嘲笑を浴びたものの背に腹は変えられません。こうして古代人の雇用が始まったのです。

 さあ各職場に配置された古代人。勿論、危険、汚い、暗いはお手のもの。しかも時間の概念はおろか、金銭的な観念にも乏しいとあれば経営者には願ったり叶ったり。何せ、勤務時間は無制限で、それも無報酬で懸命に働くのですから。

 こうして瞬く間に労働力不足を解消した古代人。経営者側はウハウハかと思いきや、これも長くは続きませんでした。

 なぜなら古代人は現代人とは比較にならないほど働き者です。それだけではありません。マニュアルに支配され思考力の欠落した現代人とは違って彼らには応用力があるのです。知的好奇心と、そこから涌き出る創造力たるや、現代人の及ぶところではありませんでした。

 その後も古代人の進出は目覚ましく、いつしか管理部門の中枢を担うまでになっていました。

 こうなると、もう古代人ではありません。とうとう侵略者と見なされ排斥運動にまで発展してしまったのです。でもそこは大人の古代人です。文句ひとつ言わずに淡々と古里へと帰ってゆきました。

 古代人の去った世界は、もう身も心も荒んだ退廃した社会でした。

 するとまた、どこからともなく「困ったもんだ。なにか名案はないかのう」の嘆き節が聞こえてきました。そして「古代人を見習え」といった称賛が日増しに大きくなっていました。でも悲しいかな、全員が古里へ帰ってしまった今、見習うべき古代人など何処にもいないではありませんか。

 誰もが悩みました。そして考えに考え抜いた末に、ある結論に達しました。

 「そうだ、現代人を古代へ送ろう」

 「古代社会で研鑽を積めば、あの日の栄光を呼び覚ませるかも知れない」

・・・・・

 こうして多くの現代人が研修のため古代社会へと送り込まれました。

 旧石器時代へやってきた現代人。今では古代人の指導の下、現代社会復興のために狩猟や石器作りに励むことで創造力を取り戻し、やがては東北地方に移り住んで遮光器土偶の製造にも関わったそうです。

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 政府は24日、深刻になるばかりの労働力不足を解消すべく、来年4月を目処に新たな在留資格を創設して外国人就労を大幅に増やす準備に入った。

(条件緩和で受け入れ拡大を画策する記事↓)

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(7月25日)

 計画では、農業、建設・土木といった労働力不足に喘ぐ5分野であるが、いずれ製造や水産業にも拡大する方針という。
 
 でも考えて欲しい。不足するのは日本だけではない。成長著しい東南アジアを始め、極東に中東と、どこも足りない。こんな安易な考えで、年間数十万人、最終的には50万人もの人材が本当にやって来るだろうか。

(東南アジアの失業率)

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(経済産業省データより)

 我が国の失業率は2.4%(2018年上期)と、人手不足から近年にない低さにある。これでは産業の崩壊を招きかねない。そこで目をつけたのが条件緩和による移入の拡大だ。しかし労働力が足りないのは日本だけではない。上表の如く何処も厳しい。しかも日本と異なり賃金水準は上昇の一途にある。一部の国や地域は既に日本を大きく上回っている。日本よりも本国、本国が駄目なら近隣諸国と、わざわざ日本まで来なくても条件に恵まれた国はいくらでもあるということだ。

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《折り紙》猿も木から・・

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 「俺らは落ちても直ぐに戻れるからいいさ」

 「でも、サルモドキ(人間)や国は、一度堕ちたらなかなか元に戻れないなんて、もっと猿社会を見習った方がいいんでないかい」🐒🐒