この週末にも接近しそうな台風12号。今度は猛暑から一転、天候不順に苛まれそうだ。持病や古傷を抱えた者にとっては最悪の季節でもある。天候の悪化は、気の滅入りも手伝い、どこもかしこも不調になりがちなものだ。だが、それだけだろうか。その逆はないのだろうか。
1968年、メキシコで開催された夏季五輪の走り幅跳びでは、ボブ・ビーモン(米国)が、8m90という驚異的な世界記録を叩き出して金メダルを獲得した。それまでの記録を55cmも上回る大記録である。誰もが目を疑った。追い風2.0mに恵まれたとはいえ、とても人間業ではない。結局は、長距離を除く投擲や短距離走でも好記録が続出したことから、メキシコシティの高さ(海抜2400m)が注目された。
大リーグでも、コロラドロッキーズなど高地に位置する球場は、ホームランが飛び交う。理由は気圧が低いことにある。だからこそ「低気圧」であっても記録は出やすい。日本でも、小平奈緒や高木美帆に代表されるスピードスケート陣は、荒天であれ、強い低気圧の接近は(室内での競技会に限り)大歓迎だそうだ。
地震ではどうか。前兆には必ず、頭痛に発熱、耳鳴りや関節の痛みに加えて、動悸に息切れと「体調悪化説」が多数登場する。否定はしない。でもその多くは認知的なバイアスではなかろうか。自然界の動物は、鳴動を事前に察して、ほぼ無事に逃げ延びることで知られる。体調不良なら逃げ遅れて死滅してしまうだろう。
◇大地震を前にした気圧配置をご覧頂きたい◇
《関東大震災(9月1日)直前の天気図》
関東大震災は、九州に上陸した強い台風が新潟沖を通過した頃合であり、それまでの安定した夏場の気圧配置を一変させた直後であった。
意外と知られていないが、2004年10月23日に発生の中越地震も台風が通過した直後である。この地震では死者68人、負傷者4805人といった大きな被害のほか、上越新幹線が脱線していることからも覚えている方は多いのではなかろうか。
《中越地震(10月23日)の直前にも台風が上陸している》
《熊本地震(4月14日)の前日には九州南岸を低気圧が通過していた》
東日本大震災でも同じだ。
《東日本大震災(3月11日)直前の気圧配置》
これは2011年3月10日の気圧配置だが、オホーツク海に発達した低気圧があることから、南岸低気圧が日本近海を通過した直後であることが分かる。東日本大震災の数日前(3月7~8日↓)には気圧が低下していたということだ。
阪神淡路大震災でも条件は変わらない。下図の通り、強い冬型の気圧配置で吹き荒れた強風も収まり、移動性高気圧に覆われつつある穏やかな日和の中で発生している。
《参考》
(1995年1月13日)
(1995年1月16日)
このように、大きな地震ほど天候の変わり目に多い。強い低気圧(台風)の通過後や、季節風が収まった穏やかな日和であり、長く安定していたり天候が崩れたり、気圧配置が大きく変わった直後に多いということだ。
随筆家で物理学者でもある寺田寅彦は、関東大震災の様子から「天災は忘れた頃にやってくる」の名言を吐いたが、今も昔も変わらない。体調も万全で、「今日は何もないだろう」と油断した頃合が最も危ないということか。
1968年、メキシコで開催された夏季五輪の走り幅跳びでは、ボブ・ビーモン(米国)が、8m90という驚異的な世界記録を叩き出して金メダルを獲得した。それまでの記録を55cmも上回る大記録である。誰もが目を疑った。追い風2.0mに恵まれたとはいえ、とても人間業ではない。結局は、長距離を除く投擲や短距離走でも好記録が続出したことから、メキシコシティの高さ(海抜2400m)が注目された。
大リーグでも、コロラドロッキーズなど高地に位置する球場は、ホームランが飛び交う。理由は気圧が低いことにある。だからこそ「低気圧」であっても記録は出やすい。日本でも、小平奈緒や高木美帆に代表されるスピードスケート陣は、荒天であれ、強い低気圧の接近は(室内での競技会に限り)大歓迎だそうだ。
地震ではどうか。前兆には必ず、頭痛に発熱、耳鳴りや関節の痛みに加えて、動悸に息切れと「体調悪化説」が多数登場する。否定はしない。でもその多くは認知的なバイアスではなかろうか。自然界の動物は、鳴動を事前に察して、ほぼ無事に逃げ延びることで知られる。体調不良なら逃げ遅れて死滅してしまうだろう。
◇大地震を前にした気圧配置をご覧頂きたい◇
《関東大震災(9月1日)直前の天気図》
関東大震災は、九州に上陸した強い台風が新潟沖を通過した頃合であり、それまでの安定した夏場の気圧配置を一変させた直後であった。
意外と知られていないが、2004年10月23日に発生の中越地震も台風が通過した直後である。この地震では死者68人、負傷者4805人といった大きな被害のほか、上越新幹線が脱線していることからも覚えている方は多いのではなかろうか。
《中越地震(10月23日)の直前にも台風が上陸している》
《熊本地震(4月14日)の前日には九州南岸を低気圧が通過していた》
東日本大震災でも同じだ。
《東日本大震災(3月11日)直前の気圧配置》
これは2011年3月10日の気圧配置だが、オホーツク海に発達した低気圧があることから、南岸低気圧が日本近海を通過した直後であることが分かる。東日本大震災の数日前(3月7~8日↓)には気圧が低下していたということだ。
阪神淡路大震災でも条件は変わらない。下図の通り、強い冬型の気圧配置で吹き荒れた強風も収まり、移動性高気圧に覆われつつある穏やかな日和の中で発生している。
《参考》
(1995年1月13日)
(1995年1月16日)
このように、大きな地震ほど天候の変わり目に多い。強い低気圧(台風)の通過後や、季節風が収まった穏やかな日和であり、長く安定していたり天候が崩れたり、気圧配置が大きく変わった直後に多いということだ。
随筆家で物理学者でもある寺田寅彦は、関東大震災の様子から「天災は忘れた頃にやってくる」の名言を吐いたが、今も昔も変わらない。体調も万全で、「今日は何もないだろう」と油断した頃合が最も危ないということか。