総務省が公表した今年3月1日現在の人口推計によると、75才以上の後期高齢者は1770万人で、65才から74才の1756万人を上回って高齢者全体の半数を超えた。総人口(1億2652万人)に占める割合も14%に達し、今や7人に1人が後期高齢者ということでもある。
 
 過日のクローズアップ現代(NHK)では、「故郷の親どう支える? 広がる呼び寄せ高齢者」で親の介護問題を取り上げていた。現在、首都圏に住む40から50代の約4割が地方出身者だが、こうした親の高齢化が背景にある。

 長い間、我が国では、長子が跡を継ぐことで家系が維持されてきた。年老いた両親の介護も、その嫁の役割として、半ば強制的に義務付けられていた。善し悪しはともかく、これらの支えによって今があるのは事実である。

 だが、高度成長期以降の少子化が、こうした仕組みを一変させる。出生率が下がるに従い、子供の数は2人以下が当たり前になった。娘は嫁ぎ、息子は地元に仕事がない。働くなら都会であり、それも一極集中によって人、物、金が集積する首都圏に活路を求めた。

 いつしか、自身は40から50へと年齢を重ね、田舎の両親は老いる。とはいえ職を失い妻子を犠牲にしてまで故郷に戻るわけにはいかない。ならば親を呼ぶしかない。だが自宅は狭く、確執も不可避とすれば、同居には問題が多すぎる。そこで必然的に「近くに住ませよう」となってゆく。

 今、こうして転入する75歳以上の高齢者は首都圏だけでも年間約2万人に及ぶという。だがどうも解せない。元気な高齢者を地方へ移住させる(日本版CCRC)構想とは完全に逆行している。大都市での医療や介護不足を理由にした政府の姥捨山(地方移住)計画に反して高齢者も首都圏への一極集中になっているのだ。

 しかし、これも始まりに過ぎない。数年後には団塊の世代が加わる。昨年9月15日現在、65才以上の人口は3384万人で総人口の26.7%だが、この先も毎年100万人単位で増え続ける。10年以内には4000万人を突破して瞬く間に3人に1人が75才以上の超高齢化社会が到来するだろう。

 年老いた両親を呼び寄せるだけなら容易い。だが費用負担となると別だ。高齢者とはいえ潤沢な資産を有する者など僅かしかいない。農業従事者や零細事業主も数多く、受けとる(国民)年金は、マックスでも月額6万5千円にしかならない。これでどうして支えられようか。

 同時期の朝日新聞デジタルには「両親を離婚させるしか…介護費倍増で揺らぐ中流」の見出しで《特養からの請求が昨夏以降はね上がり食費や部屋代に介護保険の自己負担分を含めて月約8万円から17万円に倍増した》とする悲惨な実態が描かれていた。これでは親は呼べない。呼び寄せ介護どころか共倒れしてしまう。

 首都・東京は人口のみならず豊かさでも日本一の大都会と思いきや、そうでもない。確かに所得水準は高いものの非正規就労も数多い。正規雇用は約419万人だが、非正規雇用もその半数の約216万人に達し、なお増え続ける。しかも非正規労働者は圧倒的に地方出身者が多い。

 非正規労働者の平均年収は180万円にも満たない。いわば東京は貧困世帯数でも全国一ということである。如何なる事情であれ老いた両親を放置できない以上、呼び寄せざるを得ない。結果として、資金難から施設入居を諦め、自らが離職し破産してでも介護に励むことになる。

 政府は福祉国家を目指し、手厚い介護制度の実現を約束するが、本当だろうか。内実は、介護負担を増やすことで施設の活用を断念させ、身内への押し付けを目論んでいるのではなかろうか。でないと、CCRCなんて、バカげた発想はしないはずだ。

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 おまけ

《折り紙》鶴亀でゴマ(の大きさ)に挑戦

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 「こんなに小さく折っても意味ないんじゃな~い」

 「大きくしたら手抜き(ゴマかし=亀に足がない)がばれてしまうじゃろ」

 「じぁあ、小さな政府をキャッチフレーズにした、あの人もゴマかしてるんだ」

 「・・・・」(-_-;)