3月は引っ越しシーズン。業者にとっては年間の3分の1を占める稼ぎ時でもある。だが、この業界にも悲惨な現実が忍び寄る。何せ人手が足りない。春休みでも学生アルバイトは集まらない。過酷な作業は外国人にも敬遠される。引っ越しを2月や4月に変更してもらって何とか凌いでいるとか。

 引っ越しだけではない。一般運輸に宅急便と運送事業者は総じて足りない。

(ドライバーの需給推移)

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(国交省データより)

 このように増大する物流に対して激減する労働力(ドライバー)の乖離は目を覆うばかりだ。2015年時点でも、88万人の必要数に対して実数は74万人であり、最低でも14万人足りない。しかもこの差は拡大の一途にある。

 過酷な業務は高齢化進む作業員を直撃する。

(高齢化進むトラック運転手)

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(総務省、労働力調査)

 涸渇する若年労働力を補いつつも日増しに高齢化するドライバー。現在の主流は40から50代とはいえ、瞬く間に60から70代へと向かうだろう。作業の一部は機械化されたとしても、まだ重労働に変わりはない。運転だけでも荷は重い。後期高齢者(75才)になってまで、こうした激務に耐えられるだろうか。

 一段と加速する高齢化社会にあって毎日のように目にする大型小売店撤退のニュース。地方だけではない。大都会であれ買い物難民は大きな社会問題になりつつある。こうした事態にも必ず立ちはだかるのが物流の壁だ。ネット(通販)で解決しようにも“足”がないのだ。人がいなくて、どうして届けられようか。

(高齢者人口の推移)

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(総務省統計局)

 我が国の高齢化は人類史上類を見ない加速度的な早さで進行している。ピークは平成52年(2040年)頃とはいえ実質的にはあと10年少しだろう。団塊世代が80代を迎える。70代なら1~2年後だ。ポスト五輪に併せて急増する高齢者。2020年問題は難儀山積である。

 政府や有識者は「AIで解決する」と自信を示す。だが、猶予は、あと十数年だ。早ければ数年しかない。国の目算通り、2030年代には無人運転が、高性能のドローンが投入されたところで意味をなさない。今現在、機能していないことには、どう逆算しても手遅れなのだ。もし、このまま2040年代に突入するなら、この国は存亡の危機に直面するだろう。

 物資は届かない。近くで購入しようにも小売店がない。あっても物流システムの崩壊で必要とする商品は置かれていない。手紙や小包さえも配達されない。伝達手段は情報通信機器だが、これとて満足に機能しているかどうか。

 我々の使う情報機器も全自動で行われているのではない。中継基地があり、メンテナンスは膨大な作業員の手によって行われている。そう、裏を返せば最も人手が足りない分野でもある。重労働も多いことから、末端の建設土木の現場同様、今や外国人を雇うにも苦労する。情報機器があるから大丈夫などと悠長に構えている場合ではない。全ては繋がっているのだ。