世界中に拡散した右傾化の嵐。欧米に台頭した排外(国粋)主義は比較的リベラル派とされた高齢層をも浸食。やや収まったようには見えるが、外国人排斥の旗印の下、多くの住民を巻き込んで、まだまだ沈静化の兆しは見えない。

欧州各国では(旧を含め)数多くの植民地を抱える。それだけ流入も多い。貧困や内乱に喘ぐ本国に留まるより何倍も稼げるのだ。仕事は奪うに違いない。だがそれだけではない。底辺を担うことで一国の経済にも大きく貢献してきた。最も顕著なのは生活面であろう。

欧州でも日本と同じく、メイド(家事や育児、身の回りの世話を代行する仕事)や介護職には就きたがらない。こうした分野を支えているのがアラブやアフリカから流入した移民だ。全体の75%から90%を占め、今や彼(女)らなくしては機能しない。移民排斥を唱える御老体であれ、「彼(女)等だけは良いんだ」と言って憚らないというから、どうなっているやら。

日本の場合はどうか。1980年から90年代にかけては、本国の5倍も10倍も稼げるとして、南米の日系人のみならず、中国や中東などからも続々とやって来た。違法就労も問題になったが、それも今は昔、何かが逆転してしまった。

《参考=各国の初任給ランキング=年収》

(1)スイス、$79.435(2)デンマーク、$57.932(3)アメリカ、$52.655(4)ノルウェー、$52.036(5)ドイツ、$46.578

(6)カタール、$44.483(7)スウェーデン、$42.466(8)オーストラリア、$41.583(9)アラブ首長国連邦、$39.523

(10)イギリス、$38.635(11)フィンランド、$37.917(12)フランス、$37.505(13)カナダ、$36.909(14)アイルランド、$36.442(15)クウェート、$34.733

(16)オーストリア、$34.676(17)オランダ、$33.319(18)ベルギー、$32.423(19)韓国、$32.034(20)日本、$29.128
※《単位は$ドル換算》

追記
シンガポール、260.000円
ブラジル、225.000円
タイ、165.000円
中国・香港、150.000円
中国・上海、100.000円
※《円換算=都市部、大卒&23才平均月収》

日本にやって来たところで扱いは非正規就労以下でしかない。月収たるや10万円にも届くかどうか。家賃に光熱費、それに高い物価の中での生活費と、仕送りなんてとても出来ない。これなら経済成長率著しい本国の(給与の)方がましではないか。ボランティアではない。わざわざ極東の島国まで出向かなくとも稼げる国は幾らでもあるのだ。

1980年後半から2000年代にかけては、ブラジル、ペルー(日系人)が多く、中国、イラン、タイ、フィリピンといったアジアの国々が続いた。今ではダントツでネパールである。ネパールの所得水準はまだ低いとはいえ、もう次はあるまい。※2030年問題(所得の均衡)を待つまでもなく、今後は日本の若者が、こうした国々への出稼ぎを加速させるのではなかろうか。

※2030年問題→【昭和30年代の初め、各家庭に備わる文明の利器は、裸電球にラジオ、自転車位なもので、世界の最貧国の一つでもあった。それが、東京五輪を経た昭和40年代には、カー、クーラー、カラーテレビの時代になり、僅か10数年の間に世界有数の先進国である。近年、同様な激変は世界各地に見られ、2030年頃には勢力図も一変すると見られている】

この12日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した推計によると、2040年には世帯主が65才以上の高齢者世帯は全体の44.2%(2242万世帯)まで拡大し、単身者世帯だけでも1994万人と、全体の約4割を占めると予測している。この内45%(896万人)は65才以上の高齢者である。

やがて、この国は身寄りのない単身高齢者だけでも1千万人に達する。それも10人に4人が非正規就労(派遣社員)とされる中高年世代だ。家族はいない。親族もいない。ならば、財源と介護士不足から全額自己負担になるであろう介護などは受けられる由もなく、永田町の目論む三親等介護責任の対象にさえならない。

有識者会議では、必ず「人口減少の社会でも経済成長率は可能」とし、しかも「人口半減であれ再分配率の高まりで、より豊かな社会を構築できる」との結論に至る。だがそれも人口構成(ピラミッド)が健全に推移しての話だ。

やがて人口1億人の半数近くが65才以上の超高齢化社会に突入する。そして6千万人の4千万人が、3千万人の2千万人が高齢者によって占められる社会になりかねないのだ。それでも「再分配率の高まりで豊かな社会を構築できる」と言うのだろうか。彼等(有識者)も70才を過ぎた御老体ばかり。自らの晩年には何ら影響しない。だからといって国民を欺いているなら、それこそ犯罪に等しい。

出生率1.0は1世代での半減を意味する。我が国の合計特殊出生率(1.44)は限りなくこれに近い。いや、いずれ割るかも知れない。単身世帯のみならず生涯未婚率までが急上昇しているのだ。ならば1世代での半減では済むまい。理想論では解決しない。恥も外聞もない。過去は捨てよう。もう時間がない。遮二無二、底辺拡大策をとらない限り、この国の歴史は22世紀を待たずに終焉してしまうということだ。