相撲道には「相手を尊び喜怒哀楽を慎むべし」という教えがある。これは、敗者は素直に勝者を讃え、勝者は敗者の気持ちを重んじて、より謙虚になれ、ということらしい。
「痛みに耐えよく頑張った。感動した..」を覚えているだろうか。これは、かつて(2001年5月)貴乃花が優勝した場所で、小泉元首相が総理大臣坏を手渡した折に述べた祝辞である。
この場所、貴乃花は膝に大ケガを負っていた。とても相撲など取れる状態ではない。しかも、優勝決定戦の相手は、同じ横綱・武蔵丸だ。
仕切りが続く。一段と紅潮する貴乃花に比べて武蔵丸の顔色はどこか冴えない。人の良さが出たのか、やりづらそうにさえ見える。塩をまく仕草までぎこちない。
軍配が反った。案の定、武蔵丸は立ち後れた。どうにか四つにはなったものの、なかなか前には出られない。投げも打たない。その時である。貴乃花の一瞬の投げで勝負は決した。
その瞬間、TVに写し出された光景だけは、今以て忘れられない。手を下にしてのガッツポーズに加え、勝つ誇った表情、いや鬼の形相でTVカメラを睨み付けていた。マスコミは挙って貴乃花の根性と優勝を讃えたが、どうも腑に落ちない。違和感を覚えのは愚生だけだろうか。
その後、貴乃花は一年間(七場所連続)の休場を余儀なくされ、そして引退に至っている。
後日談だが、武蔵丸は(貴乃花の強行出場には)相当に困惑していたそうだ。何せ相手は、国技・大相撲を支えるヒーローであり、スーパースターだ。勝ち負けよりもケガでも悪化させたら示しがつかない。取り組みを前に仕度部屋でも悩み抜いていたという。
今場所は土俵上でなく日馬富士の殴打事件で盛り上がりをみせる。11目には白鵬による“物言い要求”までが加わった。だが、こうした蛮行や愚行は外国出身力士だけの問題ではない。
平成4年の九州場所、久島海に敗れて4連敗を喫した貴乃花は、あろうことか土俵上に唾を吐き捨てていた。サッカーの神様や白いペレとまで称された帝王ジーコでさえ、鹿島アントラーズに在籍時、サッカーボールに唾をかけたことを理由に長期(リーグ戦4試合)に渡る出場停止処分を受けているが、方や厳重注意で済まされている。土俵は神事を司る聖域であり何にも増して不浄を許さぬ場所ではなかったのか。
1965年、大横綱の誉れ高い大鵬と柏戸は、拳銃の密輸並びに不法所持で書類送検されたが、お咎めなし(注意のみ)で翌日から土俵に上がっている。外国人、いや一般社会であれ、摘発された時点で即刻解雇であろう。それが今や品格を備えた横綱の代名詞でもある。この違いは何だろうか。日本人なら許されるのだろうか。
暴力を肯定したり愚行を容認するつもりは毛頭ない。いずれも許し難い行為だ。だが相撲取りとて聖人君子ではない。横綱になったからといって変われるものでもない。国会でさえ乱闘騒ぎで流血事件を起こしている。職場の、それも酒席であれば日常茶飯事ではないか。横綱審議委員会の中にも大立ち回りの常連さんがいたと聞く。評論家の批判も結構だが自らの胸によく手を当ててから語って欲しいものだ。
「痛みに耐えよく頑張った。感動した..」を覚えているだろうか。これは、かつて(2001年5月)貴乃花が優勝した場所で、小泉元首相が総理大臣坏を手渡した折に述べた祝辞である。
この場所、貴乃花は膝に大ケガを負っていた。とても相撲など取れる状態ではない。しかも、優勝決定戦の相手は、同じ横綱・武蔵丸だ。
仕切りが続く。一段と紅潮する貴乃花に比べて武蔵丸の顔色はどこか冴えない。人の良さが出たのか、やりづらそうにさえ見える。塩をまく仕草までぎこちない。
軍配が反った。案の定、武蔵丸は立ち後れた。どうにか四つにはなったものの、なかなか前には出られない。投げも打たない。その時である。貴乃花の一瞬の投げで勝負は決した。
その瞬間、TVに写し出された光景だけは、今以て忘れられない。手を下にしてのガッツポーズに加え、勝つ誇った表情、いや鬼の形相でTVカメラを睨み付けていた。マスコミは挙って貴乃花の根性と優勝を讃えたが、どうも腑に落ちない。違和感を覚えのは愚生だけだろうか。
その後、貴乃花は一年間(七場所連続)の休場を余儀なくされ、そして引退に至っている。
後日談だが、武蔵丸は(貴乃花の強行出場には)相当に困惑していたそうだ。何せ相手は、国技・大相撲を支えるヒーローであり、スーパースターだ。勝ち負けよりもケガでも悪化させたら示しがつかない。取り組みを前に仕度部屋でも悩み抜いていたという。
今場所は土俵上でなく日馬富士の殴打事件で盛り上がりをみせる。11目には白鵬による“物言い要求”までが加わった。だが、こうした蛮行や愚行は外国出身力士だけの問題ではない。
平成4年の九州場所、久島海に敗れて4連敗を喫した貴乃花は、あろうことか土俵上に唾を吐き捨てていた。サッカーの神様や白いペレとまで称された帝王ジーコでさえ、鹿島アントラーズに在籍時、サッカーボールに唾をかけたことを理由に長期(リーグ戦4試合)に渡る出場停止処分を受けているが、方や厳重注意で済まされている。土俵は神事を司る聖域であり何にも増して不浄を許さぬ場所ではなかったのか。
1965年、大横綱の誉れ高い大鵬と柏戸は、拳銃の密輸並びに不法所持で書類送検されたが、お咎めなし(注意のみ)で翌日から土俵に上がっている。外国人、いや一般社会であれ、摘発された時点で即刻解雇であろう。それが今や品格を備えた横綱の代名詞でもある。この違いは何だろうか。日本人なら許されるのだろうか。
暴力を肯定したり愚行を容認するつもりは毛頭ない。いずれも許し難い行為だ。だが相撲取りとて聖人君子ではない。横綱になったからといって変われるものでもない。国会でさえ乱闘騒ぎで流血事件を起こしている。職場の、それも酒席であれば日常茶飯事ではないか。横綱審議委員会の中にも大立ち回りの常連さんがいたと聞く。評論家の批判も結構だが自らの胸によく手を当ててから語って欲しいものだ。