(1)1990年代初頭、阪神淡路大震災の前、大地震は北日本一帯に集中していた。研究者の多くは「北海道、東北地方が危ない」と警鐘を鳴らした。たが結果は違った。

☆1993年01月15日、釧路沖地震、M7.6
(釧路市で最大震度6、死者2名)

☆1993年07月12日、北海道南西沖地震、M7.7
(奥尻島で被害甚大。死者行方不明230名)

☆1994年07月22日、日本海北部で地震、M7.3
(地下552kmの深発、関東地方でも震度3)

☆1994年10月04日、北海道東方沖地震、M8.3
(釧路、厚岸で最大震度6、北方領土で被災)

☆1994年12月28日、三陸はるか沖地震、M7.8
(八戸市で最大震度6、死者3名)

☆1995年01月07日、岩手県沖で地震、M6.9
(八戸市、盛岡市、葛巻町で最大震度5)

★1995年01月17日、阪神淡路大震災、M7.2
(最大震度7、死者不明6437名の大惨事)

(2)2010年以降、東日本大震災までは沖縄、小笠原といった南方の海域に強い地震が続いた。南海トラフを懸念する声が相次いだ。だが、これも違った。

☆2010年02月27日、沖縄本島近海地震、M7.2
(糸満市で震度5弱。一時、津波警報発令)

☆2010年11月30日、小笠原西方沖地震、M6.8
(地下494kmの深発、関東、東北で震度3)

☆2010年12月22日、父島近海で地震、M7.4
(最大震度4。小笠原に一時津波警報発令)

★2011年03月11日、東日本大震災、M9.0
(3月9日の前震(M7.3)に続く巨大地震)

(3)熊本地震までの2016年にかけては、大震災の余波もあって満遍なく揺れたものの、薩摩半島西方を除き大地震はやはり遠隔地だった。

☆2014年07月12日、福島県沖で地震、M7.0
(関東から東北の広い範囲で最大震度4)

☆2014年11月22日、長野県北部で地震、M6.2
(長野市、小谷村などで最大震度6弱)

☆2015年05月30日、小笠原西方沖地震、M8.1
(682kmの深発、母島と二宮町で震度5強)

☆2015年11月14日、薩摩半島西方地震、M6.7
(鹿児島と佐賀で最大震度4)

★2016年04月16日、熊本地震、M7.0
(最大震度7、前震を含め死者204名)

(1~3)は各々、阪神淡路、東日本、熊本地震の前にあった大地震である。ご覧の通り同じエリアではない。何れも“穏やかな対極”に限って襲われている。歴史に残る他の地震でも変わりはない。いつだって虚を衝かれているのだ。

阪神淡路大震災の前、兵庫県南部に大地震はないと思われていた。北日本に多発する地震など他人事でしかなかった。東日本大震災の震源域は完全な盲点だった。熊本であれ大地震の発生確率は全国でも有数の低さであった。

現在、宮古島近海では、先日(9日)のM6.4以降、やや大きな地震が続く。熊本地震の余震も止まない。火山では、えびの高原に位置する硫黄山の噴火警戒レベルが、この9日に1から2へと引き上げられた。口永良部島は噴いたばかりだ。桜島に阿蘇山だって予断を許さない。

こうした状況下では誰もが西日本を疑う。確かに昨今は九州から南西諸島にかけて多発している。しかし断定は危険であろう。上記の如く鳴動著しい地域に続いたケースは稀でしかない。多くは“よもや”を襲っている。それも、しばらく静かな領域ばかりだ。

今、静かな(地震の少ない)所は何処だろうか。東海から関東にかけて少ない。東北の太平洋側も静寂の範疇にある。勿論、北海道も例外ではない。そう、伊豆半島(諸島含む)を筆頭に、東日本全域で(震度4クラスの、やや強い地震さえ)途絶えているのだ。