広島カープの人気が凄い。全国に鯉一筋が群れる。札幌の日本シリーズでさえ、スタンドの約3割を占める。セリーグの試合ならともかく、これまで考えられなかったことである。仕掛人がいるにせよ営業努力の賜物には違いない。

反面、長い間、プロ野球を牽引してきた巨人軍の人気が思わしくない。空前の盛り上がりを見せた今季でさえ、各球団の活況をよそに、熊本地震の影響で微減だったソフトバンクを除けば巨人だけが観客数を減らしている。清原の薬物疑惑は別として、野球賭博に女性問題と、野球以外での話題は尽きない。それだけではない。市場の変化が大きな影を落としている。

サッカーJリーグが誕生して以降、プロスポーツでは地域密着が浸透した。当然のことだが日本だけが立ち後れていた。欧州サッカーのみならず、大リーグでも試合の大半はホームタウンに限られる。それがプロ野球の巨人だけは違った。市場独占を目論み全国展開を企てた。全試合が全国ネットでテレビ中継された。だが、テリトリー制が、それを変えた。度重なる不祥事の影響も加わり視聴率は急降下する。

今や東京でさえ、ジャイアンツの野球帽なんて滅多に見ない。ダサさに敬遠するのか、恥ずかしいのか、野球観戦のスタジアムを除けば街中でGYマークの帽子を目にすることは先ずない。たまにいるのは、酔っ払って路上を徘徊するオジサンくらいなもので、野球少年であれ、所属チームのオリジナルや大リーグキャップばかりだ。だが最近は少し様子が違う。楽天イーグルスの野球帽姿を良く見る。なぜだろうか。

東京は地方出身者が多い。それも圧倒的に東北地方からである。人口推移をみれば分かるが、終戦直後(1945年)の東北6県の総人口は824万人で現在の902万人と、あまり変わらない。理由は言うまでもない。就職に離農からの求職と様々だが首都圏(東京)への転出にある。

この間、日本の総人口は7199万人から1億2712万人と76%も増加している。同率の増加と仮定するなら、東北の人口は1450万人が妥当であり、548万人足りない。即ち、この内9割が首都圏への転出であり、約500万人が東北出身者と、その子息ということになる。

一方、東京の人口は、1945年の348万人から997万人も増え1345万人の大都会に変貌した。だが自然増ではない。地方からの転入に支えられたに過ぎない。県別では新潟が一番とはいえ総数では東北出身者が多数を占める。だから首都東京は日本の中枢だが東北各県からの500万人が支配する東北文化圏でもあるのだ。

プロ野球の話題はカープだけではない。マスコミの扱いでは楽天が露出度を増す。それも宮城ではなく関東地区でだ。地域密着を掲げて人気拡大の首都圏4球団ならともかく東北の球団に対してである。やはり“故郷球団への回帰”にメディアが便乗しているとしか考えられない。

東京ドームでのソフトバンク戦では九州出身者のホークスファンで埋め尽くされる。日ハム戦なら北海道出身者が列をなす。楽天イーグルスは、その比ではない。この先、故郷回帰が進むなら、東京は楽天ファンに席巻されるだろう。何せ、500万人が愛しむ故郷球団であり、東北6県合わせて1400万人の絆でもあるからだ。