近付く台風を前に曇天に現れた波状雲。方位は対角で北西から南東を指向している。
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今年は単なる異状気象ではなく、かつてない異様な状況にあると言われる。何せ前例がない。台風の進路にせよ観測史上初が続出している。そこで参考に、この半世紀で、迷走台風の年に発生した大地震を抜粋すると次のようになる。
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☆昭和39年、台風14号
台風16号との相互作用で大きく円を描きながら蛇行し、台風16号を吸収して巨大化した後、ゆっくり北上して鹿児島県に上陸。
★新潟地震、M7.5
東京五輪の年を襲った戦後有数の被害地震。液状化現象といった被災も甚大。
☆昭和49年、台風14号
中国大陸に上陸して衰弱し、一旦は熱帯低気圧になるものの、再び発達して台風になり、沖縄経由で東海地方に上陸。
★伊豆半島沖地震、M6.9
南伊豆町など死者30人、家屋全壊134戸の他、伊豆半島全域に大きな被害。
☆昭和51年、台風09号
九州付近で停滞。長崎から天草諸島にかけて3日間に渡り複雑な動きをしながら居座る。
‥‥‥特になし‥‥‥‥
☆平成8年、台風12号
沖縄近海で迷走しつつ、ゆっくりとした速度で8日間かけて、やっと九州に上陸。
※★前年の平成7年、阪神淡路大震災
☆平成13年、台風16号
10日間に渡り沖縄近海で複雑な動き。沖縄県のインフラに長い間、多大な影響を及ぼす。
※★前年の平成12年10月、鳥取県西部地震、M7.3、境港市、日野町で震度6強
☆平成15年、台風18号
マリアナ付近で発生も、太平洋高気圧の縁を約一週間かけて一周。前例のない極めて珍しいコースを辿った。
★宮城沖で地震、M7.0
岩手、宮城で震度6弱、太平洋プレート型。
☆平成22年、台風09号
フィリピン沖で発生した後、東シナ海、対馬海峡、日本海沖を通過して福井に上陸。その後、向きを南東に変え、静岡県付近で熱帯低気圧になり、関東の沖合いに抜ける。
★2月に沖縄本島近海でM7.2、11月に小笠原諸島西方沖でM7.1、12月には父島近海でM7.4と比較的大きな地震が連続する。
☆平成23年、台風15号
南海上で発生するも、西進して沖縄付近で停滞を続け、北上せずに3日かけて反時計回りに一周。その後やっと北東に進んで浜松市付近に上陸。東海、関東、東北地方を縦断して太平洋に抜ける。
★この年は言うまでもない。三陸沖を震源に甚大な被害を与えた東日本大震災が発生した。
昭和39年以降、日本列島に接近また上陸した代表的な迷走台風は8個あるが、内5個の発生年次は大地震も併発している。2個は前年に発生しており、前後しても大地震が見当たらないのは昭和51年だけである。
ことに似通っているのは平成23年(2011年)であろう。現在、長い迷走から北上に転じた台風10号は、関東の沖合いに達してから西寄りに向きを変え、観測史上初めて茨城県や福島県への上陸も懸念されている。
しかも、上陸後は左旋回が見込まれるなど、文字通り常識はずれの台風でもある。偏西風が大きく北に片寄っていることから終盤の進路だけは異なりそうだが、途中までが2011年に似るなら、それこそ嫌な台風には違いない。
今年は4月に九州地方で大地震が連続して起きている。道南の内浦湾でも強い地震があった。ならば、これで打ち止めかと思いきや、そうとも言えない。上記は代表例だが、気圧配置が安定せずに台風が迷走しやすい条件の年に限って強い地震が多発する傾向にあるからだ。
因みに、写真の雲の指向先は、当地(北関東)から見て、茨城南部、房総沖、伊豆諸島方面となる。日本海側の北部も該当するが、やはり南側に起因するのではないか。9月1日の防災の日を前に啓発を込めて念のために御注意を!