総務省が先日(6月29日)公表した国勢調査の抽出速報によると65才以上の人口は5年前より14%増えて3342万人となった。高齢者の割合は26.7%で5年前に続いて世界で最も高く、15才未満の子供の割合も12.7%と過去最低を更新した。高齢者人口は調査以来初めて全都道府県で子供の数を上回ったという。

日本人の平均寿命は、女性が86.83歳、男性は80.50歳だが、平均余命をみると団塊の世代は90歳を超える。即ち、昭和20年代生まれは最多層で250万人であり、この8割(200万人)が90歳まで生きることを意味する。漸減とはいえ、25年先でも(昭和50年生まれには)180万人が存在し、最少でも約150万人(180×0.8)が仲間入りする。ならば2040年の初めには65歳以上だけでも4500万人に達することになる。

一方、出生数はどうか。こちらに改善の兆しはない。加速度的に減り続ける。昨年は辛うじて100万人を維持したものの、来年にも大台割れは必至で、近年の出生世代が出産年齢を迎える頃には70万人にまで縮小する。こうして2040頃には65歳以上と以下が4500万人で拮抗する極めて歪んだ社会が到来するだろう。

英国のEU離脱決定で株価は大きく下げた。やや戻したとはいえ、まだ予断を許さない。年金の運用損は昨年だけでも5兆円を超えた。リーマンショックか、それ以上の下げなら、年金破綻さえ現実味を帯びる。2008年は乱高下を繰り返しつつ平均株価は6994円まで下げた。悪夢の再来なら今度ばかりは収拾がつくまい。高齢者の収入が途絶えてしまう。

仮に日本で移民容認の是非を問う国民投票があったとしよう。結果は言うまでもない。高齢者の反対多数で否決されるはずだ。社会秩序の乱れを懸念するからではない。保育所の開設まで「うるさいから」との理由で反対するように、短絡的な「排除ありき」に終始し、数の力で圧倒するのではないか。

高齢者の福祉行政は勤労者の税金によって賄われる。若年層の減少は福祉財源の枯渇を意味する。だが老い先が短い者からすれば大した問題ではない。身の回りが平穏なら、それで十分なのだ。だから最優先課題である少子高齢化対策も、国会議員であれ学識経験者であれ、検討会の面々は、ご老体ばかりなので何もしない。

英国の場合、旧東欧圏からの流入過多が争点になった。確かに雇用を奪う。だが経済活動に貢献し、財政再建の上でも大きく寄与したことは否めない。もし流入がなければどうだったか。少子高齢化によって疲弊し、グレートブリテンそのものが、すでに瓦解していたであろう。

日本には、こうした流入もない。僅かに残された若者が激増する高齢者を支えねばならない。介護対象は1人から2人、そして4人となる。近い将来、給料の大半は税金に消える。高齢者は、その税金によって養われる。しかし長くは続かない。何せ、その若者がいないのだから。