長い間、日本は国民の勤勉さと高い教育水準に支えられて豊かになった、といわれてきた。それが、この四半世紀で一変した。とても高い教育水準とはいえないのだ。

 ユネスコの統計によると、2015年現在、日本人の大学進学率は、62.41%で世界41位である。数字だけなら、過半数であり、まだ高い進学率を誇っている。だが問題は中身にある。バブルはおろか、高度成長期と比較しても、あまらり変わらない。貧困による就学困難の実態からは逆に後退しているようにさえ見える。

 アジアではどうか。先進(サミット)7か国であり、低開発国の多いアジア諸国の中なら突出して高いかと思いきや、知れば知るほど愕然とする。

アジア諸国の大学進学率ランキングは‥。

(1)韓国、95.34%
(2)マカオ、69.35%
(3)香港、68.77%
(4)イスラエル、66.27%
(5)イラン、65.95%
(6)モンゴル、64.27%
(7)日本、62.41%
(8)サウジアラビア61.11%
(9)タイ51.37%
(10)ヨルダン47.57%
以下省略

 このように韓国は日本の高校進学率に等しく、その他の国でも日本を上回るか、ほぼ同じ水準に達しつつある。取り分けイランやモンゴルの高学歴社会は意外としか言いようがない。

 イランは、かつて(1990年代の不法就労による出稼ぎ)の様子から貧困のイメージが強く、モンゴルに至っては、ストリートチルドレンも数多く、生活苦の脱却を目標に大相撲入りし、そのハングリー精神によって角界を席巻した、程度の認識でしかなかった。

 だが全く違った。今や豊かなのだ。大相撲のモンゴル勢は大学へ進む者が多い。横綱・日馬富士は母国の警察大学を経て弁護士の資格を有し、現在、法政大学へ通う現役の学生でもある。鶴竜は高卒で来日とはいえ、父親は大学教授であり著名な科学者であって、兄弟姉妹は欧米の名門大学へ留学するなど、裕福な家庭に育ったお坊ちゃまだ。玉鷲の実姉は東大留学組の才媛である。国民的英雄の父親と医師の母親を持ち、関取になるまで潤沢な仕送りを受けていたとされる横綱・白鵬に関しては、いまさらいうまでもない。

 一方、日本の場合はどうだろう。前述の如く停滞である。いや後退の一途といった方が適切かも知れない。進学率では高度成長期と変わらないものの、置かれた状況がまるで違うのだ。

 現在、大学進学には、2人に1人が奨学金に頼わざるを得ない状況下にある。あくまで借金であり卒業後から返済義務を負う。それも学費であり生活費は自分で稼がなければならない。

 団塊世代と比較してほしい。当時でも、約3割は(短大含)大学まで進学しているが、奨学金の借り入れなど少数派でしかなかった。アルバイトは多くが遊興費だ。子供は平均4人の時代にあって、大学生の大半が、親がかりで卒業していたことになる。豊かになったはずが、この体たらくである。一体、何が原因なのか。

 古来より「今の若い者は」が定番だそうだが改めねばならない。今の若者は慎ましい。高度成長とバブルを謳歌して浪費癖が染み付いた世代とは異なり堅実なのだ。20代では一人当たりの酒、たばこの支出は60代の半分にも満たず、ギャンブルに至っては2割以下でしかない。

 金がない、といえばそれまでだが、ブランドを買い漁る中高年を横目に廉価なリサイクルショップで用を済ませる。理由は学生時代に借り入れだ奨学金の返済にある。借金は彼(女)等の責任ではない。(奨学)ローンの自己破産を嘆き、今の若い者は! と言う前に、誰がこんな世の中にしたのか良く考えて欲しいものだ。