待機児童の問題では、日本死ね! が大きく取り上げられ実態が浮き彫りになった。確かに、このままでは働けない。生活が出来ない。子供を産むことさえ躊躇ってしまうだろう。だが待機は児童だけではない。対極にある高齢者にも深刻な現実が立ちはだかる。

待機児童の数は、2013年10月1日現在、44.118人とあるが、あまり当てにはならない。統計は氷山の一角であり、断念組などを含めた実数は公表されない。しかも多くが大都市に集中している。この倍だとしても不思議ではあるまい。

待機児童は東京の8117人を筆頭に、神奈川、埼玉、千葉、それに大阪、兵庫といった首都圏と近畿圏だけで過半数を占める。大都市圏は富裕層が多いが貧困層も多い。待機とは意味を異にするものの、入れたくとも入れられない、を加えれば、その数は更に増えることになる。

一方、高齢者は数が違う。少子高齢化だけあって増加の真っ直中にある。2038年には全人口の4割が65歳以上となる。4人に1人が80歳以上の時代を迎える。激増の高齢者に減り続ける介護職員の解離が日本の未来を砕きかねない。

厚労省の試算によると、特別養護老人ホームに入所出来ない高齢者は、2013年現在で52万2千人に達する。4年に10万人のペースで増え続けていることからも、今では60万人を突破しているのではないか。

特別養護老人ホームは全国に約7800あるが、これではとても足りない。待機老人は瞬く間に100万人を超えて200万人に達する。現在が7、8年待ちなら、数年後には10年待ちが当たり前になるだろう。国は、一体、これまで何をしてきたのだろうか。

仕事と子育ての両立は益々困難を極める。子育てをとれば貧しく、仕事をとれば少子化に一段と拍車がかかる。高齢者を支えるなら早期退職しかない。40から50代の働き盛りが次々と離職に追い込まれていく。

この先、必然的に介護は近親者(三親等)への押し付けが始まる。両親や祖父母のみならず叔父伯母まであてがわれることになる。面識のない高齢な親族が、ある日突然、送り込まれるのだ。子育てと介護の同時進行なら、どうなってしまうのか。

人口激減の社会にあって保育や介護職を目指す若者が増える道理はない。業種間の奪い合いでは真っ先に敗北するだろう。結果、出生率はさらに低下し、失業者の急増によって社会保障制度は根底から崩壊してしまう。

待機児童は2、3年も待たせれば小学生になり、待機老人は7、8年も待っている間に天国へと旅立つ。こうなることは十年以上も前から分かっていたことだ。それを承知での無策は、国自体が待機していた証であり、「放っておけば時間が解決する」とみていた確信犯であった気がしてならない。