清原の覚醒剤使用がプロ野球界を大きく揺らしている。だが、清原だけの問題だろうか。国民的スポーツの代表格といわれるプロ野球も、実は閉鎖的であり、旧態依然としている。甲子園では、大半の高校が球児に丸刈りを強要し、それを良しとする。監督や仲間によるバリカン刈りなど日常茶飯時である。強制なら傷害罪に該当するのではないか。スポーツは人格を形成するというが、こと(プロ)野球に関しては反面教師でしかない。

長い間、大相撲の世界は閉鎖社会の最たるものと思われてきた。その大相撲ですら薬物検査を実施した。露鵬や白露山、それに若の鵬といったロシア勢が大麻疑惑で角界を追われた。一部の日本人力士は、体調不良を理由に検査をキャンセルして難を逃れたが、検査を実施したこと自体、プロ野球より改革の進んでいる証しでもある。

そのロシアでは、陸上競技を始め、次々とドーピング疑惑が発覚し、リオ五輪への出場を巡って紛糾している。ケニアやトルコでも疑惑は絶えない。日本でも、さいたまマラソンに出場した吉田香織選手は、ドーピング違反を問われ、2013年1月から2年間の出場停止処分を下されていた。

これらは取り立てて珍しいことではない。それがプロ野球では全く話題にならない。1000人近い選手を抱えて薬物違反による出場停止処分がない方が不自然ではないか。プロ野球の選手は全員が聖人君子だともいうのだろうか。ドーピングではないが、摘発は、清原和博の他、江夏豊や野村貴仁といった引退後の選手ばかりだ。

五輪などの大きな国際試合では野球であっても例外なくドーピング検査が課される。それも抜き打ちで実施される。だがら迂闊なこては出来ない。怪しき者は最初から出ない。予め自白して不参加を表明する者さえいる。日本人大リーガーや国内組の辞退も相次いだが誰一人として疑われない。でも本当だろうか。真相は藪の中ながら「ドーピングの発覚を恐れ怪我を理由に出場を辞退」があったのではなかろうか。

この際、プロ野球でも全選手に、抜きちで薬物検査を実施すべきだ。ドーピング違反なら相当数が発覚するだろう。覚醒剤や大麻成分だって検出されるかも知れない。だが誰も驚かない。NPBは人気低下を懸念するが、そんなことはない。MLBでは、A.ロッドを始め、各チームのスーパースターが次々と摘発され、長期に渡って出場停止を余儀なくされた。だが人気は落ちない。観客動員数は過去最高を更新し続けた。

プロ野球でも同じだ。ひた隠しの方が疑念を抱く。ファン離れが進む。薬付けの可能性がある競技など誰も観ない。膿は出し切ってこそ価値がある。

もし、発覚が主力組に及び、出場停止が相次いでも構わないではないか。その方が自然だ。スポーツに不正があってはならない。誰だって覚醒剤や筋力増強剤に頼った成績などに興味はない。正々堂々を期待する。野球競技は選手層が厚い。新たなスターが誕生する。プロ野球が自浄作用を発揮し、多くが、そのクリーンさを確信するなら自ずと人気は高まるだろう。ファンも殺到する。とどのつまりは、めでたし、めでたし、に落ち着くということだ。