国土地理院の観測によると2014年の1月、房総沖でスロースリップが発生して、約6cm動いたと発表。当域では1996年5月から定期的に観測され、最大は2011年10月の20cmである。いずれもプレートは南東方向へ移動し、徐々に間隔を狭めていることから、大地震が差し迫っている可能性が高い、としている。

一方、豊後水道でも、約6年に一度のペースでの発生を観測。防災技術研究所と東京大学地震研究所は、(1)深さ30kmから40km.(2)30km付近(3)5km付近で、3つの異なるスロースリップが2003年と2010年に連動して起きていたと発表している。

この二つの領域は危ない。房総沖では、1605年に大津波で犠牲者一万人を出した慶長地震や、1677年の延宝房総沖地震が発生しており、いずれもM8を上回る巨大地震なのだ。豊後水道は1946年の昭和南海地震の震源に近接する危険地帯でもある。

まだある。1989年には東京湾でスロースリップが起きている。既述(2015年6月9日記載)につき詳細は省くが、その規模はM8.3からM8.7に相当する巨大なものだった。

スロースリップが直ちに大地震に結び付くわけではない。だが高い可能性は否定出来ない。東日本大震災の前にも確認されている。ならば、明日か数十年後かはともかく、相応の覚悟はしておかねばならないだろう。

問題は、その場所にある。房総沖なら直接の被害は免れるかも知れない。だが首都圏は南関東を中心に人口の多くが臨海部に集中する。湘南や東京湾岸の人口は関東大震災当時の5倍にも達する。合わせて400万人近くが津波が到達するかも知れない海岸から10キロ圏内に居住しているのだ。しかも東京湾内でさえ偶発の震巣が存在する。

豊後水道でも危ういのは一緒だ。南海地震ならタダでは済まない。西日本一帯に深刻な打撃を与える。しかも連動が危惧される。南海地震がトラフ型なら東海地震まで誘発するだろう。首都直下だって排除出来ない。

この数年、全国各地で深海魚が次々と上がる。疑うべきは気象変動とはいえ、それだけだろうか。確かに地震との関連を裏付けるものは何もない。だが、それも本震しか見ていない。

海洋の生物は、事前の異変(スロースリップ)に、いち早く反応する。地震波も、地上なら危険ヶ所は海浜地帯や傾斜地、それに人工構造物に限られるが、海中ではそうもいかない。海流の破壊力は尋常ではない。留まれば、生態系まで、根こそぎ奪われかねない。種の存続にも関わる。そこで、身の保全を計るべく、かなり以前から行動する。だからこそ“深海魚の発見とスロースリップの領域が一致する”ようにも思えるのだが、如何だろうか。