国の方針である、正規労働者の拡充、に反して非正規労働者が急増中だ。この20年間で、15.3%から37.4%に拡大し、2263万人が非正規での就労を余儀なくされている。女性は29%から過半数の56.7%に達し、男性でも7.7%から21.8%へと急拡大している。とくに男性の伸びが著しい。このままでは、女性の大半が、男性でも二人に一人が非正規労働を強いられる時代がやってくる。

今や、業態を問わず、どこも人手が足りない。商品価値は需給のバランスで決まる。旺盛な需要は物価を押し上げる。ならば人件費だって同じはずだが、この原理が通用しない。いかに不足しようと、労力の奪い合いになろうと、報酬の引き上げには結び付かない。雇用の安定にもならない。どうしてなのか。

理由は市場の劣化だ。悪化ではない。衰えるばかりなのだ。非正規では収入が安定しない。その前に給料が安い。消費購買力が落ちる。非正規が増えれば増えるほど全てが低迷する。デフレが加速する。インフレ誘導策も悪循環への導火線でしかない。デフレが益々進行する。これではたまったものではない。経済の活況も見せかけに終始する。内需型産業は忙しいだけで利益が出ない。一時的に儲かったからといって、時給を上げたり、正社員を増やしていては瞬く間に共倒れしてしまう。それなら、如何に多忙でも、非正規社員を増やすことで堪え忍ぶしかない。ブラック企業はともかく、多くは、生き残りの上で仕方がないのだ。こんな社会にしたのは、一体、どこの誰だろうか。

最近ではフリマやリサイクル市場が活況を呈している。無駄の排除と資源の再利用の観点では素晴らしいことだ。だが、これも生活水準の低下であり、あの時代に戻っただけではないか。外国人観光客も、二千万人の目標を前倒しで達成したとはいえ、不安材料多く、不足する財源の穴埋めには程遠い。やはり内需の後退を止めずには何も解決しない。

団塊世代の平均余命は約25年だ。この間(25年後の65歳以上)には4.200万人が存在する。さらに上の層を加えると30数年後には総人口の半数が65歳を超える。人類史上、経験のない歪んだ社会が到来する。定年の延長も75歳が限度だろう。経済は縮小し、財源が枯渇する中で、数少ない勤労者にかかる負担は計り知れない。しかも労働に見合った対価は期待出来ない。特殊業務を除き、過半数の勤労者が非正規扱いになると言うことだ。

健康保険は未加入。介護保険料も払えない。今や、こうした貧困層が急増しているそうだ。それも40から50代に多い。近い将来、これらが生活保護の対象に加わる。現在の162万世帯で財源は限界にある。これ以上の負担には耐えられない。100万人増なら財源は枯渇してしまう。国家財政自体が破綻の危機に直面する。

ならば外国人労働力に依存するしかないのではないか。一見矛盾しているようだが、そうではない。1980年から90年代にかけてと同じだ。当時、日本は深刻な人手不足に陥っていた。そこで南米の日系人を中心に多くの外国人労働者を受け入れた。不法入国も相次いだ。文化の違いからトラブルも絶えない。だが良く働く。上司の顔色を伺いつつ無駄な時間を費やす日本人をよそに、昼食も惜しんで働いていた。もし、彼らの存在がなければ、日本の製造業は崩壊していた。無論、不法就労に頼った中小企業だって然りだ。

介護や土木のみならず、不足甚だしい業種を補うことで、雇用が安定する。当面の不足数は300万人だが、この流入が市場を活性化する。非正規並の支払いを基準とするなら、平均年収(約180万円)×300万人は5兆4千億だ。年金や生活保護など非生産部門への支給とは意味がまるで違う。生産性の向上に貢献する。大きな市場が生まれる。結果、正規雇用を促す環境だって誕生するはずだ。

だが問題も多い。今の日本は豊かではない。一人当たりのGDP比では中東産油国やシンガポールに遠く及ばない。既に中国の都市部には抜かれ、韓国には2年から3年で追い付かれる。そして、ASIAN諸国が直ぐ後に迫る。こんな貧しい国に誰が来るだろうか。