NHK党は、多くの人から「色物」だと思われているだろう。そう思われても仕方がない振る舞いではある。しかし、党首の立花孝志の話をよく聞くと、理路整然として、地に足が着いていて、他の党の漠然とした話よりもよほどリアリティと説得力がある。

少しの印象で「色物」だと思っている人は、基本的に立花孝志の話を聞かない（見ない）し、「色物」が言っていることとバイアスをかけて聞いているのではないか。

確かに、やることはキテレツというかアグレッシブである。しかし、すべてが戦略的に仕組まれていて、結果的に1議席を獲得している。見事としか言いようがない。

立花氏はかねてからYouTubeなどで情報を発信し、自分の戦略を隠しもせず説明している。「政治と選挙の分離」と言っているが、選挙の仕組みを実に上手く利用した、巧妙な戦略である。

また、NHK党という名前も略称で、正式には「NHKから国民を守る党」〜「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」〜「NHK受信料を支払わない国民を守る党」など数種類を経て「NHK党｝になった。NHKを追求する党なのに党目だけ見るとまるでNHK擁護派のような印象を持つ。そのあたりも偶然なったのではなく、そうなるべく総務省とやりとりをしてきたと本人は話している。NHK党という憶えやすい党名も選挙には非常に有利である。

戦略的という面では、他のどの党よりも戦略的であり、メディアを最大限に活用している。また党の候補者についてやその扱い、自身のスタンスなどが明解で、その考え方は今までにないものだ。

「あなたの1票で約250円、選挙区と比例区の2票で約500円の政党助成金がNHK党に交付されます」と言い「あなたの1票は死に票ではない」とする。

政党助成金を運用したNHK受信料の不払いや裁判についての対応の仕方は秀逸としか言いようがない。彼らのすごい所は、変わった考え方を発信するだけでなく、それを実行していることである。

払いたくない人の受信料を肩代わりして払う、その原資は政党助成金、つまり税金なのだ。NHKから不払いで訴えられている人の裁判費用も同じである。それらにより、払いたくない人、払えない人の分の受信料を税金で補填しているカタチになっている。これは、そのうち問題になってくるのであろう。それこそがスクランブル放送を提唱する立花氏の狙いなのではないか。あるいは、受信料の公平化というものが本格的に議論されるようになるのかも知れない。

物事というのは状況を作らないとなかなか動かない。そう言う面で、国会で叫ぶだけの政党より、虎視眈々と状況作りを行っているNHK党の方がよほど真っ当だと言えるかも知れない。

立花氏は興味深い事も言っている。所詮今の国は自民党が動かしている。いろいろな公約を掲げても自民党の協力なしには実現できない。だから自民党と喧嘩をすると公約を実行できないのだと。

そう言う目で見ると、自民党とけんか腰で対峙する野党には、公約を実現する力はあるのだろうかと思ったりする。

もちろんNHK党の掲げていることは、それで国が大きく変わるということではなない。しかし、今回当選した候補者の内容を鑑みると、ひょっとすると政府や選挙の仕組みの根幹を揺るがしかねない。

どのような展開になるのか興味深い。

個人的には、かなり前から、今の政治の仕組みのままでどう頑張っても日本の国を大きくは変えられないと思っている。

NHK党のやり方が、そういうどうしようもない膠着した仕組みをぶち壊すきっかけに成りはしないかと密かに期待するのである。

NHKをぶっこわすのではなく、どうしようもない日本の政治の仕組みをぶっ壊して欲しい。

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