アンコールワットへ行き、トレサップ湖の
畔に住む人々の生活を垣間見ましたが、
夢中になって友人にその話をしていると、
金子光晴さんの作品に言及してくれました。
本をよく読んでいる友人というものは
有難いもので、私はそういうきっかけで
今まで読んだことがなかった金子光晴
さんの作品に目が向くようになりました。
「マレー蘭印紀行」は昭和3年から7年に
わたる異国放浪の途次に書かれた紀行文
です。
その友人が金子さんを読んでいなかったら、
私がトレサップ湖の思い出をその友人に話さ
なかったら私はこの作品に出合っていなかった
かもしれません。
戦前の日本人にもこういう人がいたんですね。
ちょっとスリメダンの一部を引用してみましょうか。
「水の中で枯れ、立ちぐされになっている零落の
ニッパの一群落が、痛すぎる光りのなかで、
血だらけなガラス管や、薬壜のように、かけて、
ささって、きらきらして、それをながめてすぎる私の
眼球を、怪我だらけにしていくようにおもわれた。」
どうです。すごいでしょ。
会ってみたかったなあ、この人。
別の詩集には「インキ壺のなかからの抗議」とも
ありました。