ヒカリンカさんのおススメの映画『犬の心臓』をYoutubeで見ようとしたのですが、残念ながら英語字幕が付いていないため、早々に挫折しました。ドタバタのお笑いではないので内容を理解しないことには、どうにも楽しめません。そこで、原作小説の日本語訳を先に読んでしまうことにしました。『犬の心臓 Собачье сердце 』(ミハイル・A・ブルガーコフ著、水野忠夫訳)です。
著者は1891年生まれ、ウクライナの首都キエフ出身の元医師。設定が外科的手術による主要人物の人格(?)の変容と元の人格への復元なので、私としては、どうしてもダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を思い出さずにはいられません。(沼野恭子先生も同じことを書いていましたhttp://www.tufs.ac.jp/blog/ts/p/nukyoko/2012/05/post_101.html)でも、この小説は『アルジャーノン…』よりもはるかに暗い人間の負の部分に焦点を当てた作品となっています。
1925年の作品ですが登場する脇役のソビエト政府体制側の青年たちの小さな権力をもてあそぶ醜悪さと、主人公の一人であるプレオブラジェンスキー教授の革命に対するあからさまな嫌悪感と批判のためでしょうが、ソビエト当局の検閲により出版が禁止されました。完全なテキストで出版されたのはソ連がペレストロイカ真っ只中の1989年。映画化されたのは1988年、あれ?どうやら、この映画は1987年に公刊された本作解説にある「間違いや歪曲の多い」不完全版を下敷きにしているようです。
不思議なことに、読中ではなく読後、なにか手塚治虫のシリアスな漫画を読んだ気分になりました。今までこのような経験はありませんが、私はこの物語の各場面を思い出そうとすると、冗談ではなく手塚治虫の漫画の絵が浮かんできてしまいます。
手塚治虫ならばこういった作品をいかにも描いていそうな、それほど彼の世界と親和性が高い、読者を刺激したり挑発したりして考えさせるような作品だといえます。
けして楽しくはありませんが、興味深い作品です。
さあ、これで今度こそ映画を楽しむことができそうです。











