はじめて会ってから3日後、僕は昼間、Sにメールを打っていた。

また会いたいとSは言ってくれたけれど、あの日依頼、彼女から連絡は無かった。まぁ友達にしても毎日のようにメールをするってのは凄くうざったいだろうから、僕は少なくとも3日は待ってみようと思った。

「元気にやってるかい?あれ以来、友人とはどう?」

僕は相談を受けた例の人間関係の悩みの、その後の様子を聞いた。でもこれはメールを送るきっかけに過ぎない。

すると彼女からメールが返ってきた。

「こんにちは、今もまだ友達とはなかなかうまくいってなくて・・・苦労してます。」

みたいな返事だった。メールの返信があって、僕は少し嬉しかった。

でもそのあと、僕が無責任な励ましメールを送ってみても、彼女から返信は無かった。なんか変なこと言ったかなって振り返ってみた。まぁ赤の他人から無責任に応援されても彼女も困惑するだろう。あと、メールの文面が肯定文だったのがまずかったのかもっていうのもあった。メールを長続きさせるには、うざくなり過ぎないような疑問文のメールを送るのは基本中の基本だ。なおかつ長文、短文になり過ぎないように気を使う。あぁ疲れる。正直携帯メールは嫌いだ。

結局この日は彼女からメールは返ってこなかった。

でも翌朝、彼女からメールが返ってきた。

「昨日はごめんなさい。ちょっと学校が忙しくて・・・ 今日もがんばります!」

僕は、“まだイケる”、だなんて考えた。

「いえいえ、余裕あるときにメール返してくれればうれしいです。俺も即レスはなかなか厳しいし。」

彼女は若いから、メールをすぐ返したりしないと気にするかなとも思ったけれど、僕が耐えられないから、最初にこうやって言っておこうと思った。でもこれじゃすごく都合がいいだけなのかもとも思った。でも彼女は、

「分かりましたっ」

って納得してくれた。どうやら彼女の学校も相当忙しいみたいで、今はレポートの佳境みたいだ

その日、僕たちはなんの取りとめも無い話をだらだらメールした。お互い、あまりメールには集中せず、メールを打つことで息抜きをするかんじ。だから僕はとてもやり易かった。この日のうちに、僕たちのメールのやりとりはいったん終了した。「じゃあまた」みたいな終わり方だ。

その週の週末、僕は付き合っている本当の彼女と、T駅に買い物に行った。これはもともと彼女と約束していて、奇しくも一週間で2回もT駅に行くことになった。

なんだか不思議な気分だった。Sのことを断片的に思い出す。口が裂けても彼女にこのことは言わないけれど。

週が明けても、僕はSのことが頭から離れられないでいた。でも彼女から僕に連絡を取ってくることは無かった。だから僕は、改めてSにメールをしたかったけれども、特に話題になるようなことが無くて困っていた。

学校は、学会の発表がだんだん近づいてきていて、少しやることが詰まってきた。だから楽しい話題なんてあまりないし、だから、息抜きにでもと思ってSとメールをしたかった。いや、単にSを遊び相手にしたかっただけなのかも。自分ってダメなやつだなって思う。

でもそう割り切ることでSにメールを送る勇気が湧いた。とても不純な動機だ。

内容はどうでも良すぎるようなことで覚えていないけれども、確か近況報告みたいなことだったけれども、Sにメールを送った。

彼女はメールを返してきてくれた。でも、そのあとはどうにも話が続かないような感じになった。でもなんとかお互いに、メールを続けていた。正直メールそのものには凄くつまらないと感じていたと思う。だから僕はこの状況がいやになって、もう一度会って、直接話をしたいと思ったんだ。何を話すかとか、二人の関係が今後どうなっていくのかとかは全然考えなくて。でも頭の片隅にエロはあった。やっぱ男なんてそんなモンでしょ。

そしてその二日後、確か木曜日だったかな。僕は彼女にメールを送ろうと決心していた。この日の作戦は、昼間のうちに彼女にメールを送り、その後どうにかしてお茶する方向に持っていき、夜に落ち合うというものだ。なんたって通ってる大学がお互い近い。だから待ち合わせるのは何とかなるもんだと思って、当日に約束を取り付けようとした。今日ばっかりは僕の作戦内容はガンガンいこうぜだった。

僕も彼女もなんだか緊張が解けてしまって、お腹がすごく減った。店を出て、どこか食事ができるところを探すことになった。

彼女に、何時に帰らなければいけないかを聞いたら、家がものすごく遠くて、ってか隣のY県に住んでいて、2146分の電車に乗っても家に着くのが0時を回るって言った。このときすでに21時。僕はすごくびっくりして、このあとどうしたらいいか戸惑った。

そしたら彼女は、なぜかスタバに行きたいと言い始めた。まったく理解できなかったけど(笑)、僕も他に宛てがなかったので一緒にスタバに向かった。でもスタバは混んでいて、その隣のエクセに入ることになった。

確認だけど、ここは今まで居たエクセとは別のエクセだ。北口と南口にひとつずつあり、北口エクセ→南口エクセに移動しただけだった。本当に今日は奇妙な夜だ。


さすがにもう何を頼んだかは覚えていないけれど、お互い一品ずつ軽めのものを頼んで席についた。時間は2110分回ったくらいか。食べながらたわいも無い話をしていた。いつの間にか笑い話をし合える仲になっていた。僕はすっかり緊張感がなくなっていた。

会話の合間にある少しの沈黙の後、次の話題を探そうとして僕は,何を思ったのか本名を名乗った。

「僕、本名は○○って言います。あと実は彼女がいます。こういうことして何だかごめんなさい。」

別に自分に彼女が居るかどうかはどうでもよかった。今後会うこともないだろうって思ってたし。でもSは、

「言っといてくれてよかったです。あたしも昔浮気されていやなことがあったし。」

“浮気”って言葉が出たっていうことは、出会い系がそういう遊びなんだって彼女が認識していたと分かった瞬間だった。少し僕は惜しい気がした。Sは続けた。

Mさん(僕の本名)、駄目ですよ彼女いるのにこんなことしちゃ。」

出会い系やっとるお前が言うな。


エクセを出て、駅のホームに向かう。彼女は下りで僕は上りだ。逆方向なのは気持ち的に少し助かる。僕は彼女と一緒に、下り方面のホームに向かった。電車はすでに発車待ちの状態。発車ギリギリまで彼女は電車に乗らず、僕と話をしていた。

「今日はありがとうございました。少し気が楽になりました。」

「こちらこそありがとう。楽しかったです。」

僕は返した。もうだいぶ打ち解けていた二人は、口には出さなくても、やっぱり、お互いにまた会おうかどうか迷っていた。でもSは僕に彼女がいるのがやはり引っかかるみたいだ。そして別れ際にSは、

「また会いたいけど・・・」

僕も、

「うん俺も・・・」

口が滑った。でも僕は、Sになんだか惹かれるものを感じてしまっていた。単に18歳の女の子と会えなくなるのが惜しいと感じていただけなのかも知れないけれど。


その場はなんとかごまかして、僕たちは別れる間際に握手をした。

彼女は最後に、本アドでメールを送りますねって言ってくれた。今までは、どっかのサイト経由のサブアドレスでやり取りをしていた。正直、本アドでメールが来るのに期待と不安が入り混じっていた。でも単純に嬉しかった。今日の僕とのやり取りに満足してくれたような気がしたから。

そうしてその日、Sと僕は別れた。



帰りの電車、Sから本当にメールが来た。ドメインを見る限り本物の携帯アドだ。

「今日はありがとうございました。彼女さんを大事にしてあげてくださいね!」って書いてた。ぐぅの根も出ない。

「こちらこそありがとう。彼女がいる件、騙したみたいでごめんなさい。」

そんなやり取りと、改めてお互いの本名を名乗った。

僕は帰りの電車、とっても疲れて今日のことを振り返った。すごく奇妙な夜だった。ってか体が動かない。もうすごく満足したので、出会い系サイトのブックマークを消した。間違えてブックマークすべてを消した。もう頭が働いてないみたいだ。

Sは、帰りの電車の中で少し落ち着いたようだった。改めて今日の、出会い系で知り合って、即日会う異質な行為に手を出したことを少し反省しているような面持ちで、メールを送ってきた。

「あたしも色々辛いことがあって疲れてて、どうかしてました。こういう出会い系で犯罪とかよくありますもんね。もしMさんじゃなければ殺されてたかもしれないですよね・・・もうあのサイトとは縁切ります。でもたくさんお話聞いてくれて嬉しかったです。会ったのがMさんで良かったー。」



・・・なんか違う。そういう短絡的な話では無い。僕の言ったことがちゃんと伝わっていたのか少し怪しく感じた。でもどうやら、彼女が本当に人間関係で悩んでいたって事と、出会い系でホイホイ会うことがおかしなことだって事は分かってくれたようだ。まぁ自分も当事者なんだけど。でも今日はこれで良かったと思った。改めて僕はこういうナンパなのは向いてないんだなってことが分かったし。


とにかく疲れた。あと、帰ったあとに彼女が言った情報を元に、彼女がどこの大学に通っているのかネットで調べてみた。まったく苦労することも無く見つけられた。A大だ。昔、バイト先で仲良くなったA大の女の子のことをなぜか思い出した。つまりそれくらい僕には近いと感じるところに通っていた。日本はせまいね、ほんとーに。

その日はとてもよく眠れた。

今日でお盆が終わりですね。


お盆最終日の東京は雨でした。


そんな日はやっぱり家でオリンピックですね。


今日も日本、伊調選手がやってくれました。


あと浜口選手、立派な銅メダルでした。


一時はどうなることかと思ったオリンピック。


始まってみれば演出なんてほんとうに関係ない。


選手同士がガチンコで戦えば、それだけで


素晴らしいものになるんですよ。


まだまだ応援しますよー!