実はこうやってメールが一回くらい返ってくることはまれにあった。でも僕が返信してもその後は返ってきやしない。まぁきっと書いた文章が返信に値しなかったんだろう。少なくとも欲望むき出しな内容ではなかったんだけどな。

それで、この子のメールは質問文だったことも助かって、

「返信ありがとう! いきなり大学名はちょっと・・・ もしよかったらお名前教えてください」

って返した。いきなり僕は、警戒しているぞってけん制のメールをしたんだ。こんなことメールに書くから返信が来ない(笑)でもいきなり個人情報を晒すのはバカの極みだ。でももうちょっと言い方があるだろ。



でもその子から返信が来た。「そぉなんですかぁ・・・ 分かりました。名前はSです。実は悩んでることがあって、相談できる人を探してるんです」。僕はさらにドキっとした。あとメールの文面で、母音は基本的に小文字だ。再現しきれないのであしからず。僕は2ちゃんねるのやり過ぎで、大学生を狙った新手の詐欺か美人局を警戒していた。僕は彼女に「僕のことはYって呼んでください。どうかしたんですか??僕のできる限り相談に乗りますよ!」って返信した。



どうやら悩みの内容は大学に入学してしばらく経ち、友人たちとそろそろ気心が知れ始めた頃によくありがちな、人間関係に悩んでるとかそんな旨だったと思う。正直僕は、こんな悩みは話題づくりのためのうそだろうって勘ぐりながら、あたかも相談に乗っているようなそれっぽい返事をしてみた。



ところでその日は確かサマーバーゲンの初日で、夕方からT駅に買い物に行こうと思っていた。

んでS(メールの相手)とのメールで、今日は何しているのみたいな話題になった。いやむしろ、僕はせっかく返ってきたメールに対して、即日会うノリに持っていこうとしていた。実はだんだん面倒になっていた。やっぱり話題をなんとか保とうと必死になるのはかなり体力がいる。だからもうダメもとでもいいやーってなる。改めて出会い系なんて向いてないよな、俺。

そして僕は、「今日はT駅にバーゲン行きます。よかったらお茶しませんか?」って送った。


メールは返ってこなくなった。それもそのはずだよ。即日面接するなんてよっぽど暇な女か割り切っているスレた奴くらいだろう。でも正直後悔した。もう少し楽しんでもよかったのになぁ。やり方がへたくそすぎた。なんだかむしゃくしゃしてきて、バーゲンで散財してやろうと学校を飛び出て駅に向かった。


でも電車に乗ってT駅に向かっているとき、また携帯がなった。Sからだった。

「いいんですかぁ? ぁたしかわぃくないですょぉ」って返ってきた。

このとき、僕の心で彼女の顔がちらついた。あと、話がサクサク進みすぎて美人局を疑った。完全に2ちゃん脳です。本当にありがとうございます。

僕は、「僕だってイケメンじゃないですよ。もし都合よかったらお茶しましょう!」って改めてSを誘った。

きっと出会い系ってヤリ目(体目当て)なんだよね。僕はガッチガチにその気ではなかったけれど、やっぱりあわよくば・・・なんて考えていた。あと美人局や全然好みの子じゃなかったときの逃げ方を。 はい、すでに彼女のことは頭からなくなりました。このメールの相手の子と今日をどうやって楽しめるかに考えはシフトした。


でもやっぱりSはすんなりとは会ってくれなかった。「ほんとにいいんですか??」って何度か聞いてきた。だから僕は安心させるために、「いやいや、気軽な気持ちでお茶してくれるだけで十分うれしいですから」って送った。っていうかおびき寄せるようなことを言った。Sは納得してくれたようだった。あと、待ち合わせ場所にしようとしたT駅が、Sにとって帰り道だったっていうことも功を奏し、僕たちは、会うことになった。待ち合わせの時間は午後7時半、あと1時間も暇をつぶす必要があった。


正直、会う約束を取り付けるまではほんとうにサクサクことが進んだと思う。出会い系スレによると、即日会う約束なんて厳禁だみたいなことを言っていたけど、実際に会うときはこれくらいあっけないものなんだな。相手にもよるんだろうけど。いや、でも即日会うような女の子なんて警戒したほうがきっと良い。何か罠があるんだろうって。


僕は約束までの一時間をつぶすためにドラッグストアに入った。確か汗拭きシートとペットボトルの水を買った。変な汗かいたし、まだ梅雨明け前だったけれどムシムシして外の気温はだいぶ高い。そのあとはルミネのトイレで汗拭きシートを使ったっけな。なんだかんだ言ってかなり興奮していて、記憶もあいまいだ。


そうこうしているうちにSからメールが来た。

「お待たせしました。T駅に着きました。」