大林監督は、教科書にも掲載されていたらしいです。
「光村図書の国語」(平成5年頃?中学3年生)
大林宣彦監督の著書「快晴との出会い」を教科書用に書き改めた「出会い」という題名の随筆より
一人の老女に出会った。
百歳をとうに越えているように見えた。
実際には,そんなお年ではなかったのかもしれない。
しかし,まだ中学生だった僕には,そのように思われた。
古い旅館の,だだっ広い一室だった。
老女は僕の反対側の隅に正座していた。
その向こうには窓が開いていて,外は激しい雨だった。僕は今しがた,その雨の中をずぶぬれになって駆けてきたのだ。
中学生活の最後の思い出にと,その最後の夜,思い立って,山口県の秋吉台に一人でキャンプした。
テントを張って寝たその深夜,嵐が襲ってきた。僕はほうほうの体で,その翌朝,山口市内のこの宿にたどり着いたのだ。
肌にまつわりつく肌着にてこずりながら,老女の前で裸になっている居心地の悪さから解放されたくて,中学生の僕は精一杯大人ぶってこう話しかけてみた。
「この雨,やみますかねえ。」
すると老女は,表情一つ変えず,ゆっくりとこう答えた。
「我が国で,降り出した雨がやまなんだことは,まだ一度もござんせん……。」
これが僕とその人との出会いだった。
そのなんでもない一言が,僕のその後を決定した。
僕はこの一つの言葉から,何かしら,人間が自然というものとどのようにして付き合っていけばよいのか,そのいわば知恵とでもいうべきものを教わったのだ。
「やまない雨はない」
まさしく、コロナで消耗している現代社会にも通じる言葉ではないでしょうか。
大林監督には「尾道三部作」と言われる名画があります。
尾道は懐かしい場所、以前はよく行ってました!
「転校生」
「さびしんぼう」
「時をかける少女」
「時をかける少女」は、以前、住んでいた竹原の町も多く登場します。
平和をたぐり寄せる最新作「海辺の映画館-キネマの玉手箱」
奇しくも4月10日の公開予定日にお亡くなりになられました。
稀代の映画監督のご逝去を心よりお悔やみ申し上げます。