人を愛する事がどんな事だったのか
わからない。
情熱的に興奮気味に
誰かを求める。
「決して怪しい者では有りません」
と近づいて、仕留める。
恋愛に何の意味もない気がして来た。
私は朽ちる。
そしてその次はない。
朽ちて枯れた、そこに、誰の温もりも残らない。
いつか、60歳前の男性の枯渇した叫びを聞いた事がある。
まだ、人生に不安も希望もない頃。
生活の灰汁が染み付いたスナックで
「俺は、夜、寝る時、自分の泪で目が覚める。
孤独で、身がよじれて、オイオイと声をあげて
泣く。」
皮膚の分厚い右手で
焼酎の水割り入りのグラスをしっかり掴んだまま
カウンターしかない狭い店内の隅で、
地に足もついていない
私に向かって
60歳前の男性は、
カウンターのテーブルを酔った目で睨んで
そういった。
彼は、離婚経験があり、子供はもう自立していて、
だだっ広い家に独り暮らしている。
彼の背景を知ったところで、
私には同情できるほどの
人生の苦を舐めていなかった。
それを思い出す。
時々。
それを繰り返し思い出す。
なぜか、ますます。
人など
人など
愛すまいと思う。
散るのが美しいのは花だけだ。
もう一度
私の目が見えますように。
もう一度
私の足が歩けますように。
常に痛みを伴って生きる。
〆