傾らかな坂道が紅葉で斑に染まり
故郷の秋は深く胸の奥に染み入ってくる

振り向けば
幼馴染の君は誰?
忘却された記憶を辿っても
遥か昔の幻のよう
僕はただ相槌を打って
気づかれぬようにふりをする
君はたしか初恋の女
その黒髪は艶やかで狂おしかったはず

君は何処へ
誰かの刻へ

麗かに陽炎が山の上まで立ち昇り
故郷の春はゆったりと和やかに進んでいく

後ろ向きに
歩いてくる君は誰?
過ぎ去りし刻を戻しても
幽かに見える蜃気楼のよう
僕はただ首を垂れて
黙ったままで俯いている
君は昔愛した女
その唇に口づけをして抱きしめたはず

僕は何処へ
失くした刻へ