次に調べたい二次イオンを質量(ざっくり言って重さ)毎に選り分けます。選り分け方は私が使っている型のSIMSの場合、湾曲した管の中に電磁石で磁場を作り、その中に二次イオンを飛ばします。その時、二次イオンの飛ぶ軌道は質量によって異なります。飛んで来る位置は高校物理で習うような計算で予測できます。
調べたい二次イオンが飛んでくる位置にスリットと呼ばれる金属の板2枚を並べた隙間を置いておけばそのイオンだけを通すことができます。通したイオンの強度(イオンの数に比例)を検出器で調べます。
SIMSの中は10のマイナス8乗パスカルオーダーのものすごい高さの真空度に保たれています。この超高真空度を作り出すために、私が使っているSIMSにはロータリーポンプ1台、ターボポンプ5台、イオンポンプ2台が搭載されています。
SIMS法には大きく分けて、試料に一次イオンビームを連続的に当てて壊しながら掘り進めるダイナミックSIMSと、弱い一次イオンビームを間欠的に当てることで試料のごく浅い領域から飛び出してきた二次イオンを検出するスタティックSIMSの2種類があります。私が使っているダイナミックSIMSは、最小で直径数ミクロンの二次元領域を狙いながら、ppm〜ppbオーダーの水素を含む全元素の同位体の深さ方向分析を行えるという極めて優れた特長を持ちます。深さ方向分析とは、試料にイオンを当てて掘り進め、表面から試料の深いところにかけての元素の分布の仕方や量を調べる方法のことです。
SIMSの応用範囲は多岐に亘っており、特に電子デバイスの構造解析、故障解析には必須です。地質、惑星科学の分野では特定の元素の同位体比の調査に用いられています。これを調べることで、例えば、隕石がいつ、どこでできたか分かるらしいです。有名な事例としてはJAXAの小惑星探査機はやぶさが採取した惑星イトカワの石の調査に用いられました[1]。医学・生物学の分野では、スタティックSIMS(非破壊型SIMS)の一種である飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)法が、生物の細胞を構成する有機物分子の構造とその分布状況の調査に応用されています。高解像度のマップが目を惹きます[2]。
SIMS・・役に立つ上に面白いですよ。
[1] JAXAのホームページより引用
http://www.isas.jaxa.jp/feature/special_issues/itokawa/01.html
[2] 理化学研究所のホームページより引用
http://www2.riken.jp/BiomolChar/files/130809IMSseminor.pdf