【保育】するとは?

保育所保育指針抜粋

保育所保育指針 1-(2)

保育の目標

十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。


・「健やかに伸び伸びと育つ」

        身体的発達


・「身近な人と気持ちが通じ合う」       社会的発達


保育所保育指針 第2章1-(2)(イ)解説書

・「身近なものとの関わり感性が育つ」     精神的発達

保育するということは様々な発達を促し社会生活にむけて人間として生きていくことを重要視した子どもとの関わりの方法といえます。


これは初めて出逢う大人たちとの間に愛着関係を形成することから始まり、ここをよりどころとして、人に対する基本的信頼感を培い、社会的発達を広げていく環境がある。

自分がかけがえのない存在であり、周囲の大人ちから愛され、受け入れられ、認められていることを実感する中で身体的発達を通して自己肯定感を育んでいく環境がある。

安心できる安定した関係の下で、自分の気持ちを相手に表現しようとする意欲が生まれ精神的発達を起こせる環境がある。

こうした育ちの環境は、生涯にわたって重要となる人と関わり合いながら生きていくための必要な基盤作りとなります。



まずは基礎的な乳児の発達に   かかわる項目を知りましょう。



【乳児の世界!】

 ○二項関係(生まれてから出会うことの意味)

・[子どもと大人]との関係 

「お母さんにあやされてお母さんを見つめ笑ってる。」

・[子どもともの]との関係 

「目の前にボールある。だからボールを見ている。」

つまりお母さんと見つめ合っている時はお母さんだけ、ボールを見ている時はボールだけを気にしているだけの関係といえます。


 ○視線追従(4、5ヶ月頃)から

 共同注視(10ヶ月頃)への変化


大人の目の黒い部分が動いてることを感じ、意識的に黒目を動かしてまねしているように感じる行動。《視線追従(ミラーニューロンといわれる行動とも)》

(最初は視線の意図を理解していない無意識的な動きといえる)


「大人が黒目を動かしていると、動いた方に何かあることに気づく?大人が見ているものを意識し始め、そちらを見ようと身体を動かしてよく見ようとする」

(声を聞いて、表情を見て、大人がしようとしている意図を考えはじめている行動。(共同注視))

「大人がボールを見ていることに気づき、ボールを見ようとする!」

(さらに大人からボールを渡されて。)「ボールを見る行動から触る行動へ、そして渡してくる大人をさらに意識する。」

この時に身近にいる大人が共感する存在だと認識しはじめるようになるといわれています。ここを踏まえて次の三項関係へと繋がっていくのです。


三項関係

今までは[子どもと大人][子どもともの]だけだったふたつがつながりはじめ、[子どもと大人ともの]という三項の関係が始まっていきます。


「転がってきたボールに気づく。このとき近くにいる大人を見て、またボールを見る。ボールが転がってきたことを伝えようと見直しする。」

「大人が「ボールが転がってきたよ」って話しかけ、渡してくれる。」


これが[子ども]と[大人]で、共通の[もの(ボール)]を見て同じように感じて共有できるようになる[三項関係]といわれています。

この時期から指差しがものへ向きはじめ特別な意味を持つようになっていきます。


☆指差しは始まっている

    (指差しの変動) 

指差しは→調べる行為(知ろうとしている人間だけのしぐさです。)

乳児期の最初に見られる指差しは赤ちゃんが手の形をいろいろと動かす中で現れる無秩序な形での指差しになります。これは誰かに見てもらことを期待していません。

「目の前にある手についている指を不思議に思う仕草」

(この時期に大人が指差しをしてもさした方角を見ることはなく、大人の指先そのものを見ることが多いのも指差し方向の理解はできていないからです。)

乳児期の終わり頃(9か月頃)になると三項関係が現れ、子どもと大人は指差しされた対象を共有するように意識し始めます。



感動したことや発見したこと、そして、欲求を身近な大人に伝える色々な思いを込めた指差しが成立してくることで、大人が指さす先の物をしっかりとらえることができるようになります。

大人と子どもは表情や声色を介して対象の意味を伝え理解しあうようになることで、子どもは「もの」を知っていきます。これが三項関係の成立となるのです。

[子どもと大人]だけや[子どもともの]だけで共有し始める直接的関係から[子どもと大人ともの]という間接的関係へと緩やかに移行し始める時期を迎えていきます。


この時期に[三項関係]を土台とした大人と子どもとの《やりとりのある遊び》を豊かに行う事が大切になります。


例えば

大人がポットン落としという遊具を持ってきて入れることを繰り返してると、子どもがやってみたい雰囲気で近づくことがあります。子どもに渡してみるとなかなか入りません。大人をチラチラ見ながら試行錯誤をしていると、偶然ポットンって入りました。はっ!とした表情で大人の顔とポットン落としを見ます。そしてまた繰り返すことがあります。

おねがい子どもの気持ちてへぺろ

(大人がポットン落としをいれてみせる)「何それ?貸して!ここに入るの?う~ん、いくらやっても無理だよ。あぁ!入った!ねぇ、見て見て、入ったよ!「すごいね、できたね」って言ってくれた!うれしい!もう一回やるから見ててね。」


また、大人が「ちょうだい」と言って手を差し出すと子どもが手に持っていた物を大人の手のひらにのせてくれるようになります。そして、大人の顔と物を交互に見たりします。また、大人が「どうぞ」と言って返すと嬉しそうに受け取り大人の顔を見返します。

おねがい子どもの気持ちニヤリ

「このおもちゃ形が面白い!えぇ、「ちょうだい」しかたないなぁ、「はいどうぞ」ふむ?「ありがとう」ってうれしいの?もう一回!ふむ?また「ありがとう」ってうれしそう、そうか、ものをもらうと「ありがとう」っていうんだ!

「ちょうだい」ってまた言うの?でも、今はそんな気分じゃないんだな~そうだ!「いやいや」って首を振ってやれ!」


この時期の子どもには大人と子どもとの関係に「もの」を入れた豊かな関係を広げていく事が、言葉の土台を豊かに育てることへもつながっていくのです。「ボールだよ」と大人が指差したボールを見て「これがボールか」と認識する、子どもが指差した行動に大人が「ボールだね」などの意味づけをすることで、ものと意味が結びつき言葉の獲得の一歩へと進むことができるのです。


社会的参照(1歳頃から)

三項関係の成立後の発達段階に社会的参照が見られるようになります。初めて見たものや状況に対して、どのように振る舞ってよいかの判断を身近な大人を見て、表情や声色で判断する力がついてくるのです。

おねがい子どもの気持ちびっくり

「この机ってやつ、登れそうだぞ!挑戦してみるか。よいしょ!よいしょ!(大人が「危ないから上っちゃダメ!」って言う)わぁ!ビックリした!なに、登っちゃダメなの。」

おねがい子どもの気持ちチュー

よーし!今日こそはこの机に登ってやるぞ!よいしょ!あぁ、大人が見てる!登っても大丈夫かな?顔が怖そうだ「ダメッ!」って言ってるな!登るのはやめておこう。」

言葉を理解できない子どもでも、身近な大人の表情や声色などの雰囲気からそのもの(こと)がどういうものなのかを判断しているのです。


10か月ごろまでの子ども達は、ごく自然に獲得しているように思える[子どもと大人ともの]という三項関係ですが、今見てきたように二項関係共同注視など大人とのやり取りが合ってはじめて成立するのです。そしてこの発達順序を踏まえて、他者(友だちを含む)を認識することができると言われています。


※園でよく聞くことのある[気になる子]の中にはこの三項関係をとばして、歩いたり、走ったり、服が着られてボタンもトイレも全部できるようになってしまう子どもがいます。なんでも自分一人でやれるので助けを求めることがなくなって、人との関係が希薄になってしまいますし、言葉も必要としなくなり、人間関係(社会的発達)の構築に支障をきたすといわれています。三項関係の成立に疑問のある子がいたら、その子の興味のあるものに大人が寄り添うことを心掛けてあげることで、少しずつかもしれないけれど三項関係の成立へ向かうかもしれません。

三項関係が成立することとは、[子ども]と[大人]との思いの共有ができることで、子どもと大人とが[もの]を見て共感し、同じような感情を持ち、感動できたり、心が通じ合うことができる社会的発達であり、出来ること、わかることが増えることだけでなくて、「できてうれしい」「もっともっと」「できた、ねぇみてみて」という気持ちを人と一緒に感じることが必要でこの時期を豊かに過ごすことで社会的発達が促され自我の形成へ向かうことができるのです。

 私の自我を認めてよ!

【自我の芽ばえ】

乳児前半の要求は大人によって満たされるため、わがままと思われることは少ないですが、乳児後半になると(まなざし、手差し、指差し、発声)の獲得が始まり、自分から大人に見せたり渡したりしたい欲求が増えはじめます。まだまだ、自分本意であるのでわがままをしていると思われる行動(イヤイヤ期とも言われます)に見えてしまことがありますが、自分の意図を主張できるだけの主体性が育っている証拠であるととらえてあげることも時には必要ではないでしょうか?