夕食前。
いつものごとく祖母と口げんかになった。
うんざり顔の父が「やめれ」と仲裁に入る。
父からすると話の中身はどうでもいい。
論点を整理して解決に導く、なんてことはしない。
目の前のゴタゴタがすぐにでも終わってくれればいい。
祖母はアンガーに侵食されている。
まるで言葉が耳に届かない。
私もアンガーに侵食されている。
言いたいことをうまく言葉にできない。
どちらがが譲歩しなければこのけんかは終わらない。
思う存分うっ憤ぶつけ合うのも悪くないのだが、目の前にいる父の存在が私の熱を下げる。
私と祖母のけんか熱にあてられた父は気がつけば誰よりも不機嫌になっていた。いつものあの表情になっていた。
これ以上続くと今よりも面倒なことになる。察した。
薬箱から取り出した夕食の薬を祖母のテーブルに置く。嫌な視線と口撃を無視して私は台所へと避難する。
6秒数えてアンガーマネジメント。
収納棚をぶっ蹴り、シンクをぶっ叩き、発狂しながら居間にダイブしてちゃぶ台返し。床にぶっ飛んだごはんとおかず。バカみたい。
むなしくなって暴力妄想をやめる。
シンクに配膳した夕食をたべる。味がダイレクトに感じられない。
「けんか」が終わってから2時間ほど経った。
胸のざわめきは静まらない。はけ口を失ったアンガーは私の心に炎症をもたらす。翌朝目が覚める頃には治っている程度の炎症。
祖母はすっかり忘れていた。けんかしたことも何を食べたのかもすっかり忘れていた。
「今は食べない」と自室でしばらく寝込んでいた父だったが、先ほど動き出した。
仲裁者もダメージを負うというヘンテコなけんか。
気持ちのいいけんかがしたい。そもそもけんかはしたくないし、建設的な会話がしたい。
それがままならない空間がここにある。
どこの家も多分そう。
小さい独裁者がこの家には3人。