歌うたいのバラッド
1997年発売。アルバム『Because』収録。
言わずと知れた、代表曲のひとつ。
この曲をね、
カラオケのレパートリーに入れて、さらっと唄えたらカッコいいだろうな
――ずっと、そう思っている。
以下は毎度のひとり語り…
…長文です。
年末年始。
忘年会、新年会。
そして二次会は、ほぼ例外なくカラオケ。
50歳オーバーの初老男性。
さて、何を唄うか。
俺の場合、定番はオールディーズのポップス。
トップバッターでも、盛り上がった終盤でも、
カラオケボックスでもスナックでも。
老若男女、誰とでも。
もう何年も変わらない。
思い返せば、20代のサラリーマン時代。
「接待カラオケ」で何を唄えば場が盛り上がるか。あれこれ試して、最後にたどり着いたのが、ポール・アンカの「ダイアナ」だった。
日本語の山下敬二郎バージョンを唄う。
もともとロックバンドでボーカルをやっていたから、唄うこと自体は好きだった。
軽快で、ノリが良くて、
場の空気がフワッと明るくなる。
偉いさんも、上司も、同僚も取引先も、
ワッ❗️と盛り上がって。
楽しい雰囲気に包まれて、
とにかくよく喜んでくれた。
もう一曲の鉄板が
「可愛いひとよ」(クック・ニック&チャッキー/1971年)。
ディスコで流行ったダンス歌謡で、
バンド「ローズマリー」のカバーでも知られている曲。ヨコハマあたりでは有名で、
みんなで踊った…なんて話も聞く。
知らない人は多いけど、
ちょっと踊りを交えて唄うと、
場は一気に和み、みんな笑顔になる。
振り付け指導をしたりして、
大盛り上がりの夜、となる。
この2曲が、俺の“安全運転”レパートリー。
鉄板の十八番(オハコ)…… ……ところがだ。
この2曲を"出し物"として披露した後が困る。
ミスチル、スピッツ、ウルフルズ、GLAY、BOØWY、ブルーハーツ、B’z、尾崎、拓郎、浜省、甲斐バンド、サザン、RC……
好きで、唄いたい曲は山ほどあるのに、カラオケで納得のいくパフォーマンスができない。
……年齢とともに、
声量は落ち、高いキーは出ず、
リズム感もどこかモタつく。
「次の曲入れて!」
「どんどん唄って!」
そう言われても、なぜか躊躇してしまう。
唄うことも、カラオケも、
本当は大好きだったはずなのに。
いつの間にか、
カラオケで順番が回るたび、
自分に「完成度」というハードルを課している。
そんな俺が、どうしても唄いたくなる曲が
「歌うたいのバラッド」だ。
深夜のテレビの音楽番組で、
斉藤和義がギター一本で弾き語りしていた。
ゲストの聞き手はモーニング娘。の初期メンバー。吉澤ひとみがいたから、たぶん2005年頃。
――あぁ、いい歌だ。
派手じゃない。
力まない。
さりげなく、素朴に唄えたら、
それだけでカッコいい。
愛する女性に唄えたら、最高だ。
ところがこの曲、
カラオケで入れると決まって起こる現象がある。
「誰の曲?」
「知らな〜い」
「知らね〜。トイレ行こ」
という、おじさん連中からの声。
一方で、
女性陣からは
「わぁ…いい曲…」という歓喜の空気。
本当のことは歌の中にある
いつもなら照れくさくて言えないことも
(うっとりと聴き惚れる熱い視線。
よし、掴みはOKだ。)
さぁ、サビ。
今日だってあなたを思いながら
歌うたいは唄うよ
――あ。
声、裏返る。
冷たい視線。
あ、出ない。声が出ない。
ずっと言えなかった言葉がある
短いから聞いておくれ
「愛してる」
……ここで、沈黙。
カラオケは残酷だ。
いい歌ほど、正直だ。
それでも思う。
いつかこの曲を、
力まず、無理せず、
ただ想いだけで唄える日が来たら。
それだけで、
もう十分なんじゃないか、と。
歌は上手さじゃない。
たぶん、そういうことだ。
……と、
マイクを置きながら、
また次の選曲を考えている、
年末年始なのである。
