高校時代の空手部は地獄だった。

半年間で 95Kgあった体重が60Kgになったくらいだ。

その地獄の中でさらに地獄なのが

夏合宿だ。

初日からいきなり特訓で始まった。

山に向かって正拳突きをやりながら大声を出した。

夜は先輩方の夜襲があるので、気が抜けない。

次の日の朝。

宿の前の田んぼに

自動車が落っこちていた。

人力では引き上げられないくらいに。

その光景が、なんだか僕らを落ち込ませた。

仲間の一人が、「俺、この夢見たよ」と言い出した。

「この夢見た。そして帰りの飛行機が落っこちる夢も見た」と続ける。

僕らは戦慄した。

正夢だ!!

なんてこった!!

みんなイヤな気分になった。嫌な合宿との効果は完璧だ。

そんな中、誰一人として、

僕らがこの合宿場まで

電車で来たことを考えていなかった。

飛行機なんて、

利用したことなかったのに。