本日は渋谷にて午前午後と約束が重なる。
正確に言うと、午前は表参道なのだが。

午前08:00から予定あり、僕は表参道に降り立った。
「きゃー!待ったー!?元気してた?!」
と、駆け寄ってくるトモコ(仮名)。
朝の表参道は、まだ人がまばらで、
仕事帰りで疲れたようなサラリーマンが
トモコの奇声にチラリと顔を向けただけだった。
「うおっ、朝から元気だね」
後ずさる僕。
「だって、さっきまで仕事の打ち上げやってたから」
と、トモコは酒の匂いとタバコの煙につつまれた空気を
引き連れていた。
胸元がばっくり開いた服装は、仕事用なのだろうか?
「これ?そー。魅力全開でしょ」
と首からさげたネックレスをじゃらじゃら揺らす。
あんまり見たくないので、僕は目をそらした。

とりあえず僕らはマックに入った。
今日の予定は結婚式場の下見だ。
09:00から式場は開くので、それまで世間話をすることにした。
トモコは夜の店で働いているので、
話が次々と飛び出す。
僕は話を聞くタイプなので、それが心地よい。
あっという間に時間が過ぎた。
「あ、、待って。トイレ」と、トモコはトイレへ向かう。
「おい、右か左か、ちゃんとわかるか?」「?なんで?」
トモコは気にせずスタスタ歩いていってしまった。
僕は気にしないことにして、先に外へ出た。

式場は、ホテルの最上階だった。今日は2次会会場の下見だ。
ホテルの従業員なのだろうか?会場を案内してくれる紳士は、
とても礼儀正しかった。
まあ、ここで礼儀がなかったら、ひと暴れしてしまうが。
6月に結婚式が行われる。費用については参加人数を考慮しなくてはいけない。
式場は都会を見下ろせる良い場所で、なんとしても当日晴れていただきたい。
外を見ていた僕に、「すごーい、きれーい」と、トモコは腕を絡めてきた。
僕は「うおっ」と思ったが、トモコが「なによー!」と低い声でいうので
もうそのままにさせておいた。
ちょっとゲンナリだ。
トモコの元気ぶりにやられたのかもしれない。

当日の料理のサンプルがテーブルに置かれていた。
こんなことまでやらなければいけないのか・・・。
生ハムだの、酒の種類など、実に豊富だが、一番安いものしか選べない。
トモコは元気に「やだ!食べていいの?」とモグモグ口を動かしていた。
時間は10:00を回っていた。
その後、事務所のようなところで、
費用の計算と、当日出すメニューと、
時間調整など算出してどんどん時間が過ぎていった。
気がつくと12:00を回っていた。

「あたしねむーい」とトモコは目の下を黒くしていた。
アイシャドーやら化粧やら、もうのっぺりし始めている。
「そういう、かわいいそぶりって、練習してるの?」と僕。
「え?そうよ。仕事だもの。かわいかった?」
いやぁー。と僕は口ごもる。あまり、トモコにかわいいとはいいたくないな。
会って間もない僕らだけど、なんだか妙な親近感がある。
これもトモコの仕事で鍛えられた空気感なのだろうか?

僕らは渋谷まで歩いた。
歩いている最中、6月の結婚式の段取りばかり話していた。
大丈夫、僕はもう友人の結婚式に出席が多すぎて、慣れっこだ。
トモコは結婚式の出席経験があまり無いらしい。
「うー。緊張する」
「そうかな?何も考えないで、その場の勢いで大丈夫だよ」
「というか、久しぶりに会った友達に何言われるか心配」
僕は笑いそうになった。それもそうだ。
トモコの今の仕事じゃ、とてもじゃないが面白すぎる。

渋谷駅で「また来月!」とトモコはハイヒールをガツガツ鳴らしながら
去っていった。
僕はどっと疲れた。今日は式場の下見だけだったのに、なんだか身体が無理している。

トモコの後姿は、いわゆる女性のそれだ。髪も長く、綺麗だ。

トモコは、6月結婚する僕の友人(男)の、新婦側(女)の友人だ。
2次会の司会を任された。
キャラクター的に、新郎の友人で面白キャラは僕しかおらず、
キャラクター的に、新婦の友人で面白キャラはトモコしかいなかった。

今日の午前中の出来事がフラッシュバックする。

トモコの奇声にチラリ
後ずさる僕
あんまり見たくない
「おい、右か左か、ちゃんとわかるか?」
僕は気にしないことにして
僕は「うおっ」と思ったが
「なによー!」と低い声
ちょっとゲンナリだ
トモコにかわいいとはいいたくないな
トモコの今の仕事じゃ、とてもじゃないが面白すぎる

トモコは立派なオカマちゃんである。
付き合い方が難しい・・・・。
それでも僕は、面白い日だったな、と思った。