夏になると思い出すのが
ジュースとアイスだ。

三歳くらいの時、
玄関で姉にアイスをもらった。
ソフトクリームという
渦巻き状の柔かい物だ。
玄関から外に出ると、
ボロリともげて
地面に落ちた。
姉がすかさず
「何やってるの!」
と激高して、
僕は世の中の理不尽さと
儚さを憂いてめそめそ泣いた。
玄関口では将来大物になるであろう僕を
母が抱き上げてくれた。
ちがう。
あなたは
姉の異常を、この世知辛いルールを正さなくてはいけないのだ!
大物だったのである。

ジュース。
ジュースは我が家にとって高級品であった。
子供を三人抱える家庭において
何事も等分に分けなくてはいけないのだ。
「ジュースを欲する」
と三歳時の僕はつぶやいた。
母は悪鬼羅刹とばかりに一言、

「砂糖水飲んでなさい!!」

名言である。
我が家は大物ばかりだったのである。