それに、「電車でGO!」のイメージだと、加速がすごく悪い印象があった。バイクよりも車の方が加速が悪いように、電車に比べてディーゼルは加速が遅いイメージがあったんだ。路線バスよりも遅いような。けど、八高線のディーゼル車は、加速を始めるとまるで電車みたいにぐんぐんとスピードが上がった。川越の方に続く線路に別れを告げて、ディーゼル車は畑と民家の景色から、山と木々の風景に移り、濃い緑が窓を占有するようになった。
5分ぐらいすると、最初の駅である毛呂に着く。毛呂山だ。特産とかは知らないけど。
まあ、その頃は八高線沿線のことなんて全くと言っていいほど、知らなかったから、仕方ない。大回り乗車で初めて乗ったくらいで、そうでもしないと八高線沿線に用事が全くないから。親戚がいるわけでもないし。それに、仮にいたとして、車で行った方が断然速いし。
ただ、次の越生は、最近行ったことがある。もちろん、初めて八高線に乗った時には行ったことは無かったから、「あ、東武線が来るんだ」くらいしか印象に残らなかったけど。
けど、越生も行ってみるといろいろと見どころがあるんだ。山の方にある黒山三滝は秋になると紅葉狩りに良さそうだし、春には越生梅林が有名だし、ネットの地図で初めて名前を見て目を疑った世界無名戦士の墓は物々しい雰囲気があるのかと思いきや、ちょっとした憩いの場みたいになっていて、それにそこは山の中腹にあって、無名戦士の墓の建物の上は展望台になっていて、越生の町が一望できるんだ。遠くにはさいたま新都心らしき影が見えるし、晴れた日ならスカイツリーまで見えるらしい。あいにく俺が行った時は少しかすんでいて、かろうじて川越だかさいたま市だかが見えたような気がした程度だったけど。
そんな越生を出発すると、またしばらく田畑と民家、そして県道が基本的な風景になる。まるで田舎の土地を走っているような感じで、それがディーゼル車というのは、やっぱり初めての経験だし、すこし旅の趣が違ってた。
小川町でまた東武線と遭遇するけど、そこから先は山がちな土地を進んでいく。また深緑ばかりの景色になる。じっくり見ていると、俺には知る由もない小さな神社があったり、車が通れるのかと疑問に思うような狭い道があったり、山の中の小さな池で釣りをしている人がいたり・・・。それに、こっち側は山なのに反対側は開けてて・・・なんていうこともあった。カーブが多くてゆっくり走るから、案外いろんなものが見えるんだ。
そして、大きなカーブに差し掛かると、寄居の駅はもうすぐだ。三度、東武線と邂逅する。秩父鉄道とも乗り換えができる寄居は、運が良ければSLが見られる。
寄居の先は、また田畑中心の景色になる。けれど、進行方向左側には秩父の山が見えて、景色のちょっとしたアクセントになってる。児玉の町は今じゃ本庄に併合されたけど、道路的には新幹線の本庄早稲田と連絡ができるし、高速のインターチェンジもあるし、もっとベッドタウンとしての役割を果たしていてもよさそうに思う。
神流川を渡るとついに群馬県。新幹線と高速をくぐると、北藤岡だ。そこは高崎線のすぐそばにあって、そこからは高崎線の線路に入る。そしてそこからが、ディーゼル車の本領発揮なんだ。
高崎線なんかはコンスタントに時速100キロを出すけれど、八高線はカーブが多いこともあって、そこまでスピードは出さない。けれど、高崎線に入ると、あのディーゼル車が時速100キロ近くまで出すんだ。まるで高速を走る観光バスのような感じで、ちょっと興奮する。
そんな高崎線に入った八高線のディーゼル車は、倉賀野、終点高崎に至る。もうそのあたりは田畑はほとんど見受けられず、建物ばかりだし、貨物ターミナルはあるしで、ついさっきまであんなのどかなところを走っていたとは思えない。
でも、高崎は群馬県内における鉄道のターミナル駅だけあって、高崎線以外の路線は、その駅を中心に、方々の田舎に線路が延びてる。両毛線なんかはそこそこ都市を結んでるけど、上越線、信越線、上信電鉄なんかはもう完全に田舎に向かう。いや、田舎というか、山に向かうと言った方が正しいかもしれない。
でも、上越線も信越線も、新幹線ができる前は主要な路線で、上野から新潟、長野や金沢と特急がいくつも走ってたんだ。俺も幼いころの記憶をたどる感じだから定かじゃないし、生まれた時にはすでに上越新幹線が走ってたから、新潟に向かう特急って言うのは覚えがないけど、調べてみると、普通列車の方が本数が少ないんじゃないかってくらい、たくさんの特急が走ってたらしいんだ。ビックリだよ。
まあ、電車に限らず、歴史をたどると奥が深いから、今回は割愛するけど、八高線の旅も、なかなか面白いものだったよ。
・・・実のところ、寄居を過ぎたあたりで、だいぶうとうとしてたんだけど・・・。まあ、いいや。