今回取り上げるのは、『このねこばなし』という作品です。
 あらすじです。

 …小野家に住む“このね”は元気で活発だが、少し変わった癖がある。それは、猫や犬、果てはタヌキの置物にまで「アテレコ」をすること。そんなこのねに振り回される姉のゆきね。
 そんな二人の周辺には、時折不思議な事が起こる。…

 果たして、どんな不思議なことが起こるのかは、作品を手にとってご覧になられることをお勧めします。
 確かに、読み始めは現実離れしたことが突然起こり、何気ない家族の話だと思っていると理解に苦しみますが、次第にその不思議なことがどういう理由で起こるのかがわかってくると、はじめに抱いていた違和感は解消していきます。

 さて、この作品は少し変わっていて、話が進むごとに時がさかのぼっていきます。最初の話ではこのねは14歳、ゆきねは17歳ですが、2年、3年と少しずつさかのぼっていくのです。
 そして、このねは動物たちの会話を勝手にアテレコするのですが、どうもその動物たちも、まるでこのねがつけるアテレコの通りのことを話している、あるいは考えているようなのです。そんな感じの反応を見せているのです。そのことから、どうやらこのねは勝手にアテレコをしているのではなく、動物たちが考えていることが分かるのではないかと思われます。
 さらに、このねがつけるアテレコの内容を、ゆきねは想像して思わず聞き入ってしまいます。その結果、およそ現実では起こりえないことが起こって、それに巻き込まれてしまうこともあります。そこだけ見ると支離滅裂だと思ってしまいますが、実はある原因によりどれも結びついているのです。それが何かは、作品をご覧いただくことにします。
 しかし、時間は再び最初の話(このねが14歳でゆきねが17歳の時)に戻るのですが、このねが忽然と姿を消します。そして、明らかになるこのねの秘密、不可思議な出来事の数々の原因…。
 そして物語は未来へと進み始めます…。

 とまあ、なるべく物語に触れないように作品に触れて行きましたが、実はこの作品を手にしたとき、なんとなくこのねの秘密は予想できました。もちろん、確信していたわけではなく、思いすごしか…とも思いました。ただ、その核というか、その原因などは最後まで分かりませんでした。つまり、このねの秘密を予想するだけでは、話の半分しか言い当てていないことになるのです。最後まで読まないと原因はおそらくわかりません。したがって、「このねってもしかして…」と予想して、それで満足して読むのを辞めると損をします。話の核を全く楽しんでいないからです。
 …とまあ、少し話の内容がばれてしまうことを書いてしまいましたが、それでも興味をもたれた方は是非一読を。