そんな具合で始まった五島と白石先生の共同生活だが、初日以来先生が露出度の高い服装になることはなかった。五島はそれでホッとしたし、けれどどこか残念にも感じていた。
しかし、ホッとしたのも束の間、先生は本当に自然体で五島との共同生活を始めたようで、時折、いや、頻繁に五島がビクッと目を丸くするようなことをした。
あるときは、暑さゆえか、下着姿の先生を見てしまったり、またあるときには先生がお風呂に入っているところをうっかり開けて見てしまったり・・・。もっとも、2番目の出来事は、この手の話ではもはやお約束となっているが、その失敗を、たぶんに漏れずに五島もやらかしたのである。生憎とすべきかどうかはわからないが、そのとき先生は湯船でお湯に浸かっていたので、五島は先生のヌードを拝むことはなかった。
ただ、着替えをしているところを目にしたことは多数ある。これは五島だけでなく、先生にも非がある。というのも、よりによって居間で着替えをするからである。寝起きで寝室から出たり、外から帰ってきたりすると、そのつもりはなくても目撃してしまう。これは五島だけでは防ぎようがない。
そして極めつけは、寝起きである。寝室が一つしかないのと先生の命令を理由に、五島と先生は一緒の部屋で寝ている。もちろん、そのシチュエーション自体がドキドキものなのだが、それ以上に先生の寝相が悪いのか、朝目覚めると五島のすぐ目の前に先生の寝顔があったりするのである。元々化粧っ気のない先生の顔立ちは整っており、表現は古いが、五島の担任をしていた頃は学校一のマドンナであった。それは今も健在で、時折五島は先生に対してある感情を押さえきれなくなりそうになる。寸前のところでどうにか思いとどまっているが、ちょっとしたきっかけで衝動的に行為に及んでしまうだろうことは五島が一番よくわかっていた。それゆえに、五島はできるだけ先生のことを見ないようにしていた。
一方、先生はというと、そんな五島を観察し、時折からかうように挑発したり、五島によるイタズラをのらりくらりとかわしたりしている、
五島によるいたずらというのは、先生が五島のことをからかっている節があるというのを、五島自身も気付いており、その仕返しとばかりに画策されるもので、感覚的に苦痛を与えるものであったり、性的なものであったりと、その方法は様々である。例えば、餃子を食べる時には、先生に用意するたれにはラー油を大量に混ぜたり、買ってきたスーパーの寿司にわさびを大量に注入したりといった感覚的に苦痛を与えるものがあり、また性的なものというのは下着の結合部(例えばブラジャーのホックなど)をバカにさせて、何かの拍子にはらりと取れるように細工をしたり、座布団の下に先生の携帯電話をマナーモードにして置いたりといった、今どきの小学生でもやらないようなものばかりである。
それらの結果であるが、まず大量のラー油作戦は、五島が目を話した隙に先生が五島のたれと自分のたれを入れ替えて、逆に五島が悲惨な目に遭った。次に大量のわさび混入作戦は、「お世話になってる五島くんにお礼~!」と言って、見事に大量のわさびが混入されている寿司だけを選び出し、五島に渡した。お礼と言われた手前、残すこともできず、五島は鼻をツーンとさせて目から涙を流した。そして、性的な作戦はというと、まず先生は結合部がバカになったブラジャーを全く使わなかった。そのため、いつの間にか作戦は失敗に終わったりしていた。また、座布団の下の携帯作戦は、結局マナーモードにはなっていたが、通常のマナーモードではなかったため、意味を成さなかった。どういうことかは、少し詳しい人なら知っているだろうが、つまりはバイブが作動しないマナーモードになっていたのである。
いずれにせよ、先生は五島のイタズラを全て見破っては、それをのらりくらりと回避していたのである。あるいは、逆にそのイタズラを五島に降りかかるようにしていたのであった。そして、そのイタズラをしては、五島に懲罰の意味も兼ねて、五島に色気で迫って、変な気を起こしたところで引くという、時にはヘビの生殺しという状態に陥れ、時には五島に赤っ恥をかかせていたのであった。
初めのうち、大体半年くらいはこうして堂々巡りを繰り返していたが、ある時に五島が、
「先生には敵わないや」
と全面降伏し、その堂々巡りは収束した。
「ふふん。年上のお姉さんをなめないで貰いたいわね!」
カカカッと先生は笑った。
こうしてみると、五島と先生の勝負は、先生の全戦全勝だと思われるかもしれないが、実は一度だけ五島が勝利したことがあった。
それは、ちょっとしたゲームをしたときに、先生がそのゲームに勝ち、その副賞として「一日だけ女王様として振舞う」ことになった場面でのことである。ちなみに正賞は、昼食に買ったすしの詰め合わせ一人分であるが、話に関係ないのでその辺の顛末は割愛する。
「・・・それでは女王様、何なりとご命令を」
五島は気乗りしなかったが、ゲームに負けたのだから仕方ないと、とりあえず罰ゲームである「一日だけ女王様の下僕になる」をすることにした。
「そうねえ、とりあえず、肩でも揉んでちょうだい」
女王となった白石先生はノリノリである。
「かしこまりました」
そう言うと、五島は先生の背後に回る。そして先生の肩をつかんで、揉み始めた。すると、先生はすぐに悲鳴を上げた。
「痛い!・・・ちょっと、強すぎよ!」
五島はそれほど力を入れたつもりはなかったのだが、どうやら先生には強すぎたようだ。
「申し訳ございません」
五島は下僕のようにへりくだって謝った。
それからはというと、先生は五島にすしを食べさせてもらったり、掃除をさせたり、恥ずかしい台詞を言わせたりと、すしと掃除はともかく、五島にとって精神的苦痛を与える命令をいろいろと出した。しかしそれだけでは飽き足らず、先生は下僕こと五島を連れ出して街に出た。
向かった場所は、ステーキレストランであった。半焼きの状態の肉を、高温に熱した石に置いて、好みの加減に焼くというスタイルをとっている。
「さあ、我が僕(しもべ)よ!好きなものを存分に食べるがいい!」
先生はここでも女王の振る舞いを続ける。
「そ、そんな、滅相もない」
五島はとりあえず遠慮してみせる。
「何を言う?主の好意を受け取れぬと申すのか?」
「そういうわけでは・・・わかりました。仰せに従います」
五島は一礼をすると、メニューを開き始めた。そして、すぐさま店員を呼びつけた。
「女王様は何にいたしましょう」
「そうだな。とりあえず、この和風ステーキランチにでもしようかな。さっぱりしたものが食べたい気分だしな」
「では、和風ステーキランチを2つ」
五島は店員にそう言い付けた。しかし、続きがあった。
「それと、フィレステーキスペシャルとワンパウンドハンバーグランチ、それから・・・」
「ちょっと待って!」
止めたのは、青ざめた先生であった。
「そんなに注文して、食べられるの?」
「もちろんでございます。何分、育ち盛りなものですから、いくら食べても足りないくらいでございます」
五島は先生にそう言うと、さらに注文を続けようとした。
「だ!ちょ、け、結構です。全部キャンセルします、し、失礼しました!」
そう言うと、先生は半泣きで店を後にした。
五島が次々と料理を注文することで、先生の手持ち金は足りなくなりそうであったため、店を飛び出したのであった。
「それくらい、女王様でしたら問題なく支払えたでしょうに」
「・・・か、勘弁してよぉ~」
そこにはもはや、女王としての威厳は微塵もなく、財布を胸に抱いて涙を流すか弱い女性しかいなかった。
かくして、五島は無意識のうちに、先生にこういう形で勝っていたのであった。
また、この共同生活では、ちょっとした効果を五島にもたらしていた。
(後編に続く)
しかし、ホッとしたのも束の間、先生は本当に自然体で五島との共同生活を始めたようで、時折、いや、頻繁に五島がビクッと目を丸くするようなことをした。
あるときは、暑さゆえか、下着姿の先生を見てしまったり、またあるときには先生がお風呂に入っているところをうっかり開けて見てしまったり・・・。もっとも、2番目の出来事は、この手の話ではもはやお約束となっているが、その失敗を、たぶんに漏れずに五島もやらかしたのである。生憎とすべきかどうかはわからないが、そのとき先生は湯船でお湯に浸かっていたので、五島は先生のヌードを拝むことはなかった。
ただ、着替えをしているところを目にしたことは多数ある。これは五島だけでなく、先生にも非がある。というのも、よりによって居間で着替えをするからである。寝起きで寝室から出たり、外から帰ってきたりすると、そのつもりはなくても目撃してしまう。これは五島だけでは防ぎようがない。
そして極めつけは、寝起きである。寝室が一つしかないのと先生の命令を理由に、五島と先生は一緒の部屋で寝ている。もちろん、そのシチュエーション自体がドキドキものなのだが、それ以上に先生の寝相が悪いのか、朝目覚めると五島のすぐ目の前に先生の寝顔があったりするのである。元々化粧っ気のない先生の顔立ちは整っており、表現は古いが、五島の担任をしていた頃は学校一のマドンナであった。それは今も健在で、時折五島は先生に対してある感情を押さえきれなくなりそうになる。寸前のところでどうにか思いとどまっているが、ちょっとしたきっかけで衝動的に行為に及んでしまうだろうことは五島が一番よくわかっていた。それゆえに、五島はできるだけ先生のことを見ないようにしていた。
一方、先生はというと、そんな五島を観察し、時折からかうように挑発したり、五島によるイタズラをのらりくらりとかわしたりしている、
五島によるいたずらというのは、先生が五島のことをからかっている節があるというのを、五島自身も気付いており、その仕返しとばかりに画策されるもので、感覚的に苦痛を与えるものであったり、性的なものであったりと、その方法は様々である。例えば、餃子を食べる時には、先生に用意するたれにはラー油を大量に混ぜたり、買ってきたスーパーの寿司にわさびを大量に注入したりといった感覚的に苦痛を与えるものがあり、また性的なものというのは下着の結合部(例えばブラジャーのホックなど)をバカにさせて、何かの拍子にはらりと取れるように細工をしたり、座布団の下に先生の携帯電話をマナーモードにして置いたりといった、今どきの小学生でもやらないようなものばかりである。
それらの結果であるが、まず大量のラー油作戦は、五島が目を話した隙に先生が五島のたれと自分のたれを入れ替えて、逆に五島が悲惨な目に遭った。次に大量のわさび混入作戦は、「お世話になってる五島くんにお礼~!」と言って、見事に大量のわさびが混入されている寿司だけを選び出し、五島に渡した。お礼と言われた手前、残すこともできず、五島は鼻をツーンとさせて目から涙を流した。そして、性的な作戦はというと、まず先生は結合部がバカになったブラジャーを全く使わなかった。そのため、いつの間にか作戦は失敗に終わったりしていた。また、座布団の下の携帯作戦は、結局マナーモードにはなっていたが、通常のマナーモードではなかったため、意味を成さなかった。どういうことかは、少し詳しい人なら知っているだろうが、つまりはバイブが作動しないマナーモードになっていたのである。
いずれにせよ、先生は五島のイタズラを全て見破っては、それをのらりくらりと回避していたのである。あるいは、逆にそのイタズラを五島に降りかかるようにしていたのであった。そして、そのイタズラをしては、五島に懲罰の意味も兼ねて、五島に色気で迫って、変な気を起こしたところで引くという、時にはヘビの生殺しという状態に陥れ、時には五島に赤っ恥をかかせていたのであった。
初めのうち、大体半年くらいはこうして堂々巡りを繰り返していたが、ある時に五島が、
「先生には敵わないや」
と全面降伏し、その堂々巡りは収束した。
「ふふん。年上のお姉さんをなめないで貰いたいわね!」
カカカッと先生は笑った。
こうしてみると、五島と先生の勝負は、先生の全戦全勝だと思われるかもしれないが、実は一度だけ五島が勝利したことがあった。
それは、ちょっとしたゲームをしたときに、先生がそのゲームに勝ち、その副賞として「一日だけ女王様として振舞う」ことになった場面でのことである。ちなみに正賞は、昼食に買ったすしの詰め合わせ一人分であるが、話に関係ないのでその辺の顛末は割愛する。
「・・・それでは女王様、何なりとご命令を」
五島は気乗りしなかったが、ゲームに負けたのだから仕方ないと、とりあえず罰ゲームである「一日だけ女王様の下僕になる」をすることにした。
「そうねえ、とりあえず、肩でも揉んでちょうだい」
女王となった白石先生はノリノリである。
「かしこまりました」
そう言うと、五島は先生の背後に回る。そして先生の肩をつかんで、揉み始めた。すると、先生はすぐに悲鳴を上げた。
「痛い!・・・ちょっと、強すぎよ!」
五島はそれほど力を入れたつもりはなかったのだが、どうやら先生には強すぎたようだ。
「申し訳ございません」
五島は下僕のようにへりくだって謝った。
それからはというと、先生は五島にすしを食べさせてもらったり、掃除をさせたり、恥ずかしい台詞を言わせたりと、すしと掃除はともかく、五島にとって精神的苦痛を与える命令をいろいろと出した。しかしそれだけでは飽き足らず、先生は下僕こと五島を連れ出して街に出た。
向かった場所は、ステーキレストランであった。半焼きの状態の肉を、高温に熱した石に置いて、好みの加減に焼くというスタイルをとっている。
「さあ、我が僕(しもべ)よ!好きなものを存分に食べるがいい!」
先生はここでも女王の振る舞いを続ける。
「そ、そんな、滅相もない」
五島はとりあえず遠慮してみせる。
「何を言う?主の好意を受け取れぬと申すのか?」
「そういうわけでは・・・わかりました。仰せに従います」
五島は一礼をすると、メニューを開き始めた。そして、すぐさま店員を呼びつけた。
「女王様は何にいたしましょう」
「そうだな。とりあえず、この和風ステーキランチにでもしようかな。さっぱりしたものが食べたい気分だしな」
「では、和風ステーキランチを2つ」
五島は店員にそう言い付けた。しかし、続きがあった。
「それと、フィレステーキスペシャルとワンパウンドハンバーグランチ、それから・・・」
「ちょっと待って!」
止めたのは、青ざめた先生であった。
「そんなに注文して、食べられるの?」
「もちろんでございます。何分、育ち盛りなものですから、いくら食べても足りないくらいでございます」
五島は先生にそう言うと、さらに注文を続けようとした。
「だ!ちょ、け、結構です。全部キャンセルします、し、失礼しました!」
そう言うと、先生は半泣きで店を後にした。
五島が次々と料理を注文することで、先生の手持ち金は足りなくなりそうであったため、店を飛び出したのであった。
「それくらい、女王様でしたら問題なく支払えたでしょうに」
「・・・か、勘弁してよぉ~」
そこにはもはや、女王としての威厳は微塵もなく、財布を胸に抱いて涙を流すか弱い女性しかいなかった。
かくして、五島は無意識のうちに、先生にこういう形で勝っていたのであった。
また、この共同生活では、ちょっとした効果を五島にもたらしていた。
(後編に続く)