7月13日。白石先生はかつて自身が勤務していた中学校の周辺を歩き回っていた。かつての教え子、五島新一の家を探すために。
家を訪れたことはなかったが、いつか訪れることもあるかもしれないと、実は住所だけは携帯電話のメモ機能に控えていた。そのメモを頼りに、白石先生は五島の家を探す。
しかし、見つからなかった。住所の示す場所に今まさにいるのだが、そこには「五島」という表札はなく、代わりに「入居人募集」の看板が掲げられていた。
「うわぁ~。手がかりがなくなっちゃったぁ~」
白石先生は途方にくれた。
とりあえず、ここまで何も飲まずに来ていて喉が渇いたので、さっぱりする飲み物を買おうとコンビニに立ち寄った。結局、飲み物だけでは足りずに、ソフトクリームも買って、白石先生は子どものようにソフトクリームをほおばりながら、再び歩き回った。
何となく歩き続けていると、これまで足を運んだことのなかった道路を歩いていることに気がついた。辺りには民家が建ち並んでいるが、その一角に3階建てのビルがあった。かすんだ桃色の外壁が、その存在感を際立たせていた。
近くまでやってくると、そこは葬儀場であることがわかった。1階部分を覗くと、喪服姿の人がせわしなく動き回っていた。
「偶然目にしたこのタイミングでも、誰かの葬式が始められようとしてるとはね・・・」
白石先生はそうつぶやいて、葬儀場を去ろうとしたとき、はっとした。
「・・・これって、確か・・・・・・」
この日葬儀を行なう人の名前を目にしたのである。
「・・・五島くんの、お母さん・・・よね」
白石先生は看板に書かれた「五島妙子」という名前に、しばらくの間見入っていた。
そして、今すぐにでも葬儀場に入ろうとする衝動をどうにか押さえつけて、白石先生は家に帰っていった。
確か、五島くんの家は母子家庭。そうなると、今五島くんの家族は五島くんしかいないということになる。この先一体どうするのだろうか?ちゃんと高校に通い続けるだろうか?今までしっかりやってきたかもしれないけれど、この先も一人でちゃんとできるだろうか?そして何より、友人を作ることができているのだろうか?
私は、五島くんのことでいろいろと気になったり、心配したりした。しっかりやっているかどうかを確かめに来たのに、まさかこんなことになっているとは。
本当なら、今すぐにでも五島くんに会いたかった。でも、葬式の場にかわいい犬の絵があしらわれた城のTシャツとジーンズという格好はどう考えても不釣合いだ。せめて喪服に着替えないと。それと、香典も準備しないといけない。今から準備するとなると、おそらく通夜には間に合わない。
仕方なく、私は明日の告別式に赴くことにした。
7月14日。五島は弔問客を出迎えていた。・・・とは言っても、五島には母親の生前の交友関係はほとんど知らなかった。そのため、訪れる弔問客のほとんどは近所の人であった。
そんななか、五島は一人の若い女性が葬儀場に入ってくるのを目にして、我が目を疑った。それは、つい1年ほど前までほぼ毎日顔を合わせていた人で、今となっては五島が尊敬する唯一の人であったからである。
「・・・・・・先生」
五島は受付の席を立ち上がって、先生の元に駆け寄った。
「ご無沙汰してます」
五島は一礼をして、先生を見た。喪服を着ている。
「こちらこそ。このたびはご愁傷様」
先生はほのかな笑みを見せる。満面の笑みは、このしめやかな場には似合わない。この場において最大限の笑みを繕ったのである。その顔を見て、五島は少しだけうれしくなった。
母親の死で傷心していたところに、思わぬ人が訪ねてきた。五島にとっては、たとえ悲しみに暮れる場面であっても、うれしさがこみ上げてしまう。五島は先生から香典を受け取ると、
「一体、どうして・・・?」
と訊ねた。五島にとっては不可解であるからだ。先生には母親の死とそれによる葬儀の連絡は一切伝えていない。にもかかわらず、実際目の前には喪服姿の先生がいる。
「ああ。昨日、この辺を偶然通りかかってね。そうしたら、あなたのお母さんの名前がここにあったから」
と、先生は玄関に立てかけてある看板を指差した。
「香典とかの準備をしてたら、通夜に間に合わなかったのよ」
そう付け加えると、先生は五島に導かれて、告別式の会場に向かった。
式はしめやかに執り行われ、その後は火葬場で母親の遺体は火葬され、骨壷に納められたのをもって、葬儀は終わった。弔問客はクモの子を散らすように帰っていった。五島は母親の骨が納められた壷を抱えて、家に帰ろうとした。
「花束はどうする?」
「・・・そうだなぁ、とりあえず、骨壷だけ一度家に持って帰って・・・って、え?」
五島は自然に応えたが、果たして誰に質問されたのだろうか。
「先生!まだいたんですか?」
五島は驚きのあまり、抱えていた骨壷を落としそうになった。
「だって、一人じゃ大変でしょ」
「そりゃそうですが・・・」
五島は困惑する。仮にも、白石先生は弔問客であって、身内ではない。
「何を気遣ってるのかは知らないけれど、一応元先生と教え子の関係なんだから、気にしないでいいのよ」
先生はそう言うと花束を持ち、「ほら、早く行きましょう」と、五島を促した。
結局、先生は五島の家までついて来た。
「・・・ここだったんだ」
「はい。中学卒業後に、近所ではあるのですが、引っ越したんです」
あの家には、ろくな思い出がないからである。楽しい思いをしたことは、ほとんどなかった。五島の母親も、いつまでもあの家には居たくなかったであろう。このまま生活を続けるには、あまりにも辛すぎる。
「それに、ほぼ同じ間取りでもここの方が家賃も安いし、駅にも近いんです」
「そうだね。私の実家も近いし・・・・・・よし、決めた!」
白石先生は、何か重大な決意をしたようである。五島は、それが何であるのかが当然気になる。
「あの、一体何を・・・」
すると、先生は不敵な笑みを見せながら、
「今はまだ、内緒!」
と言った。誰の目にも、先生が何かをたくらんでいることはわかった(もっとも、この場には五島と先生しかいないのだが)。
それからは、斎場の関係者が祭壇を組み立て、形が整ったところで関係者は帰っていき、少ししたところで先生も帰っていった。
一人になった五島は、祭壇の前に座っていた。三段式の祭壇で、最下段には線香たてと1対のろうそく台、真ん中の段中央に位牌、両側には葬儀のときに供えられていたメロンが一つずつ、最上段に花が立てられている。供え方こそ違えど、ごく普通の祭壇ではある。ただし、そこには遺影が供えられていなかった。
遺影もしっかりと準備したかったのだが、どういうわけか、五島の身の回りには母親の写真がたったの1枚もなかったのである。確かに、ここ10年以上、五島と母親は写真に写されたことはなかった。五島の場合は、学校のイベントで写真に写されていそうなものであるが、ことごとく写ることを拒否していたのである。そのため、卒業アルバムを貰っても、五島にとっては全く価値のないものとなっている。中学のときも、一人ひとりの顔写真が掲載されるが、五島は頑なに拒否したため、名前だけの掲出となっている。
別に写真嫌いというわけではなく、家に残している母親に負い目を感じていたからである。家では苦痛にあえいでいる母親がいる。そんななか、自分だけ学校で楽しそうにすることができなかったのである。社会科見学にも全く参加していないし、林間学校や修学旅行も全て参加していない。これには、当時父親という立場であった男が参加費用を支払わなかったということも原因の一つではあるが、五島本人にもそれらに参加する意思はなかったからである。
だから、参加しなかった。辛い思いをしている母親を残して、そういったイベントに参加して楽しい思いをすることに引け目を感じていたためで、自身が写真に写るということさえも許されないと考えていたのである。結果、五島は母親とともに、10年以上写真に写ることがなかったのである。
しかし、母親もそうであるが、少なくとも母親が再婚する前までは、飽きるくらい写真を撮っていたはずである。それにもかかわらず、前の家から引越しをするときにも、昔の写真を見つけ出すことはできなかった。つまり、母親の遺影に使える写真は全くなかったのである。そして、それが今回、遺影のないという異例な形での葬式と祭壇を作り出すことにつながったのである。
「・・・やつれていたとはいえ、写真の一枚くらい、撮っておけばよかったな」
もっとも、そんなことを母親に言ったら、「冗談じゃないわ」と嫌がっていたであろう。五島には何となくわかっていた。本人も、自身の顔がやつれてしまっていることに気付いていた。その姿を写真に写されるのを嫌がるのは、容易に想像できる。
そんなことを考えてから、五島は母親の位牌に向かって語りかけた。
「なあ、お袋。今日、白石先生が来たよ。・・・どうせなら、生きているうちに会って欲しかったけれど、今となっては仕方ないよな」
初めこそ、五島は祭壇の前で正座をしていたが、話を続けるうちに足を崩して、正面を向いていた体は横を向き、足を伸ばしていた。
「・・・いい先生だろ?あれ以来、お袋以外で俺が信用できる唯一の人なんだ。・・・そういえば、先生には本当に世話になってたな。なのに、何もお礼してなかった。・・・まあ、次会ったときにでも『ありがとう』って言えばいいか」
こうして、一人きりになった五島は、母の位牌の前で眠った。
翌朝。誰かがドアを叩く音で、五島は目を覚ました。
「・・・誰だ?こんな朝早くから」
目をこすりながら、五島は玄関に向かう。そしてドアを開けると、そこにはボストンバッグを前に持っている若い女性がいた。
「おっはよー!」
キョトンとしている五島とは対照的に、女性はさわやかな笑顔を見せている。
「せ、先生!・・・一体何しに・・・」
五島が質問を言いかけている途中で、先生は言った。
「今日から私が、あなたのお母さんよ」
「はあ?」
五島は、大きく開いた口を塞ぐことができなかった。
家を訪れたことはなかったが、いつか訪れることもあるかもしれないと、実は住所だけは携帯電話のメモ機能に控えていた。そのメモを頼りに、白石先生は五島の家を探す。
しかし、見つからなかった。住所の示す場所に今まさにいるのだが、そこには「五島」という表札はなく、代わりに「入居人募集」の看板が掲げられていた。
「うわぁ~。手がかりがなくなっちゃったぁ~」
白石先生は途方にくれた。
とりあえず、ここまで何も飲まずに来ていて喉が渇いたので、さっぱりする飲み物を買おうとコンビニに立ち寄った。結局、飲み物だけでは足りずに、ソフトクリームも買って、白石先生は子どものようにソフトクリームをほおばりながら、再び歩き回った。
何となく歩き続けていると、これまで足を運んだことのなかった道路を歩いていることに気がついた。辺りには民家が建ち並んでいるが、その一角に3階建てのビルがあった。かすんだ桃色の外壁が、その存在感を際立たせていた。
近くまでやってくると、そこは葬儀場であることがわかった。1階部分を覗くと、喪服姿の人がせわしなく動き回っていた。
「偶然目にしたこのタイミングでも、誰かの葬式が始められようとしてるとはね・・・」
白石先生はそうつぶやいて、葬儀場を去ろうとしたとき、はっとした。
「・・・これって、確か・・・・・・」
この日葬儀を行なう人の名前を目にしたのである。
「・・・五島くんの、お母さん・・・よね」
白石先生は看板に書かれた「五島妙子」という名前に、しばらくの間見入っていた。
そして、今すぐにでも葬儀場に入ろうとする衝動をどうにか押さえつけて、白石先生は家に帰っていった。
確か、五島くんの家は母子家庭。そうなると、今五島くんの家族は五島くんしかいないということになる。この先一体どうするのだろうか?ちゃんと高校に通い続けるだろうか?今までしっかりやってきたかもしれないけれど、この先も一人でちゃんとできるだろうか?そして何より、友人を作ることができているのだろうか?
私は、五島くんのことでいろいろと気になったり、心配したりした。しっかりやっているかどうかを確かめに来たのに、まさかこんなことになっているとは。
本当なら、今すぐにでも五島くんに会いたかった。でも、葬式の場にかわいい犬の絵があしらわれた城のTシャツとジーンズという格好はどう考えても不釣合いだ。せめて喪服に着替えないと。それと、香典も準備しないといけない。今から準備するとなると、おそらく通夜には間に合わない。
仕方なく、私は明日の告別式に赴くことにした。
7月14日。五島は弔問客を出迎えていた。・・・とは言っても、五島には母親の生前の交友関係はほとんど知らなかった。そのため、訪れる弔問客のほとんどは近所の人であった。
そんななか、五島は一人の若い女性が葬儀場に入ってくるのを目にして、我が目を疑った。それは、つい1年ほど前までほぼ毎日顔を合わせていた人で、今となっては五島が尊敬する唯一の人であったからである。
「・・・・・・先生」
五島は受付の席を立ち上がって、先生の元に駆け寄った。
「ご無沙汰してます」
五島は一礼をして、先生を見た。喪服を着ている。
「こちらこそ。このたびはご愁傷様」
先生はほのかな笑みを見せる。満面の笑みは、このしめやかな場には似合わない。この場において最大限の笑みを繕ったのである。その顔を見て、五島は少しだけうれしくなった。
母親の死で傷心していたところに、思わぬ人が訪ねてきた。五島にとっては、たとえ悲しみに暮れる場面であっても、うれしさがこみ上げてしまう。五島は先生から香典を受け取ると、
「一体、どうして・・・?」
と訊ねた。五島にとっては不可解であるからだ。先生には母親の死とそれによる葬儀の連絡は一切伝えていない。にもかかわらず、実際目の前には喪服姿の先生がいる。
「ああ。昨日、この辺を偶然通りかかってね。そうしたら、あなたのお母さんの名前がここにあったから」
と、先生は玄関に立てかけてある看板を指差した。
「香典とかの準備をしてたら、通夜に間に合わなかったのよ」
そう付け加えると、先生は五島に導かれて、告別式の会場に向かった。
式はしめやかに執り行われ、その後は火葬場で母親の遺体は火葬され、骨壷に納められたのをもって、葬儀は終わった。弔問客はクモの子を散らすように帰っていった。五島は母親の骨が納められた壷を抱えて、家に帰ろうとした。
「花束はどうする?」
「・・・そうだなぁ、とりあえず、骨壷だけ一度家に持って帰って・・・って、え?」
五島は自然に応えたが、果たして誰に質問されたのだろうか。
「先生!まだいたんですか?」
五島は驚きのあまり、抱えていた骨壷を落としそうになった。
「だって、一人じゃ大変でしょ」
「そりゃそうですが・・・」
五島は困惑する。仮にも、白石先生は弔問客であって、身内ではない。
「何を気遣ってるのかは知らないけれど、一応元先生と教え子の関係なんだから、気にしないでいいのよ」
先生はそう言うと花束を持ち、「ほら、早く行きましょう」と、五島を促した。
結局、先生は五島の家までついて来た。
「・・・ここだったんだ」
「はい。中学卒業後に、近所ではあるのですが、引っ越したんです」
あの家には、ろくな思い出がないからである。楽しい思いをしたことは、ほとんどなかった。五島の母親も、いつまでもあの家には居たくなかったであろう。このまま生活を続けるには、あまりにも辛すぎる。
「それに、ほぼ同じ間取りでもここの方が家賃も安いし、駅にも近いんです」
「そうだね。私の実家も近いし・・・・・・よし、決めた!」
白石先生は、何か重大な決意をしたようである。五島は、それが何であるのかが当然気になる。
「あの、一体何を・・・」
すると、先生は不敵な笑みを見せながら、
「今はまだ、内緒!」
と言った。誰の目にも、先生が何かをたくらんでいることはわかった(もっとも、この場には五島と先生しかいないのだが)。
それからは、斎場の関係者が祭壇を組み立て、形が整ったところで関係者は帰っていき、少ししたところで先生も帰っていった。
一人になった五島は、祭壇の前に座っていた。三段式の祭壇で、最下段には線香たてと1対のろうそく台、真ん中の段中央に位牌、両側には葬儀のときに供えられていたメロンが一つずつ、最上段に花が立てられている。供え方こそ違えど、ごく普通の祭壇ではある。ただし、そこには遺影が供えられていなかった。
遺影もしっかりと準備したかったのだが、どういうわけか、五島の身の回りには母親の写真がたったの1枚もなかったのである。確かに、ここ10年以上、五島と母親は写真に写されたことはなかった。五島の場合は、学校のイベントで写真に写されていそうなものであるが、ことごとく写ることを拒否していたのである。そのため、卒業アルバムを貰っても、五島にとっては全く価値のないものとなっている。中学のときも、一人ひとりの顔写真が掲載されるが、五島は頑なに拒否したため、名前だけの掲出となっている。
別に写真嫌いというわけではなく、家に残している母親に負い目を感じていたからである。家では苦痛にあえいでいる母親がいる。そんななか、自分だけ学校で楽しそうにすることができなかったのである。社会科見学にも全く参加していないし、林間学校や修学旅行も全て参加していない。これには、当時父親という立場であった男が参加費用を支払わなかったということも原因の一つではあるが、五島本人にもそれらに参加する意思はなかったからである。
だから、参加しなかった。辛い思いをしている母親を残して、そういったイベントに参加して楽しい思いをすることに引け目を感じていたためで、自身が写真に写るということさえも許されないと考えていたのである。結果、五島は母親とともに、10年以上写真に写ることがなかったのである。
しかし、母親もそうであるが、少なくとも母親が再婚する前までは、飽きるくらい写真を撮っていたはずである。それにもかかわらず、前の家から引越しをするときにも、昔の写真を見つけ出すことはできなかった。つまり、母親の遺影に使える写真は全くなかったのである。そして、それが今回、遺影のないという異例な形での葬式と祭壇を作り出すことにつながったのである。
「・・・やつれていたとはいえ、写真の一枚くらい、撮っておけばよかったな」
もっとも、そんなことを母親に言ったら、「冗談じゃないわ」と嫌がっていたであろう。五島には何となくわかっていた。本人も、自身の顔がやつれてしまっていることに気付いていた。その姿を写真に写されるのを嫌がるのは、容易に想像できる。
そんなことを考えてから、五島は母親の位牌に向かって語りかけた。
「なあ、お袋。今日、白石先生が来たよ。・・・どうせなら、生きているうちに会って欲しかったけれど、今となっては仕方ないよな」
初めこそ、五島は祭壇の前で正座をしていたが、話を続けるうちに足を崩して、正面を向いていた体は横を向き、足を伸ばしていた。
「・・・いい先生だろ?あれ以来、お袋以外で俺が信用できる唯一の人なんだ。・・・そういえば、先生には本当に世話になってたな。なのに、何もお礼してなかった。・・・まあ、次会ったときにでも『ありがとう』って言えばいいか」
こうして、一人きりになった五島は、母の位牌の前で眠った。
翌朝。誰かがドアを叩く音で、五島は目を覚ました。
「・・・誰だ?こんな朝早くから」
目をこすりながら、五島は玄関に向かう。そしてドアを開けると、そこにはボストンバッグを前に持っている若い女性がいた。
「おっはよー!」
キョトンとしている五島とは対照的に、女性はさわやかな笑顔を見せている。
「せ、先生!・・・一体何しに・・・」
五島が質問を言いかけている途中で、先生は言った。
「今日から私が、あなたのお母さんよ」
「はあ?」
五島は、大きく開いた口を塞ぐことができなかった。