五島くんの日記があまりにも長いので、ここからは私が説明します。それに、日記ばかりだと手抜きだと思われるので・・・。なお、今回の話は読まなくても、物語の上では何の差支えもありません。SFに興味のない人は飛ばしても構いません。また、SFにうるさい人も、本格的なものではないため、そんなに楽しめないと思います。それでも「最初から読んでいるし、途中を飛ばすのはプライドが許さない」と言う人は、まあ、止めませんが・・・。
これまでの経緯は、五島くんの日記からもわかるとおり、ブラジルの森奥で、不思議な女の子に会うわけです。この子の話からの推察から、五島くんは大胆にも「女の子は宇宙人説」を展開しました。確かに、この説だと、女の子の話す内容が説明できます。しかし、彼も述べているように、地球の常識をいくつか超えているのも事実です。はたして、五島くんの説は、正しいのでしょうか?
3日目、この日は日本に帰る飛行機に乗らなければならない日です。女の子が見ている中、3人は片付けと、出発準備をしています。
少し手が空いた五島くんは、
「君はここに残るのかい?」
と、女の子に訊ねました。
「ほかにいくところ、ない」
女の子は寂しそうに、ポツリと言いました。五島くんは、彼女が天涯孤独の身であることがはっきりしたと思いました。
「それなら、俺たちと一緒に、日本へ来ないか?少なくとも、寂しい思いはしないと思うよ」
五島くんは、笑顔で言いました。この笑顔を見た女の子は、こくりとうなずきました。彼女にとって未経験の、親の愛情に近いものを感じたのかもしれません。そして、五島くんは悪い人ではないということも・・・。
すると、球体が突然、声を上げました。五島くんと管理人さんが球体に近づくと、球体は二人の目の前で開きました。警戒しながら中に入ると、球体は閉まりました。
おじさんはその様子を見て、慌てふためきましたが、球体から二人に話がある旨を伝えられると、とりあえず傍でおとなしく座っていました。その横に、女の子がちょこんと座りました。
球体の中では、球体が話を始めていました。
「彼女の面倒を見てくれるのですね?」
流暢な日本語で、球体は訊ねました。
「ああ。このまま放っておいてはかわいそうだ。こんな森奥で女の子一人では特に、だ」
五島くんは、彼女を引き取る理由を話しました。
「では、あなたたちには彼女について、話さなければなりません」
そのように球体が言うと、説明を始めました。
球体の話をそのまま載せると、かなりのページを使ってしまうし、おそらく読んでいても眠くなるだけなので、大まかな部分だけ記します。というのも、まれにある退屈な歴史の授業みたいな話が続くからです。話の内容を順に記すと、
・女の子は地球人ではないが、地球人の血も流れている
・彼女の故郷の星は、鬼の星である
・鬼の星の科学は、地球のはるか先を行っている
・今から1000年ほど前、鬼は地球へやってきて、数多くの人間をさらっていった
・その理由は、鬼の子孫繁栄のためである
・今、鬼の星では内乱が起こっている
・女の子は彼女の両親の希望で、地球に疎開しに来た。そのとき彼女は2歳であった
・地球に向かう際に、地球時間で言うところの約14年が過ぎた
といった具合です。
まず、最初の2つ(「女の子は地球人ではないが、地球人の血も流れている」と「彼女の故郷の星は、鬼の星である」)は、その通りですが、その中の「地球人の血も流れている」という点は、その後説明します。3つ目について、鬼の星の科学は大変進んでいて、現在の地球上での科学のレベルは、鬼の星では既に1300年くらい前には達成していました。4つ目と5つ目にも関係するのですが、1000年ほど前のあるとき、「純血は混血よりも子孫の繁栄につながりにくい」という論文が発表されました。これは、現在の地球でも少し話題になっていることで、混血ほど生存能力が高いといったようなことが、当時の鬼の星で発表されたのです。犬でいう、「血統書つきの犬より、雑種のほうが長生きしやすい」といった、経験則なのか、科学的にわかったのかの判断が付かないことを、鬼の星では証明されたのです。当時の鬼の星は、エネルギーが今の地球の約4倍はあったということで、技術的にもかなり進んでいました。そのため、宇宙船が大量に出回っていました。また、鬼たちは、自分たちともっとも体の構造が、内的にも外的にも似ている生物が、この広い宇宙にいることがわかり、その生物と混血になれば、子孫繁栄が実現できると考えました。少し浅はかな気もしますが、いずれにせよそれが、地球へ鬼たちがやってくる基となったのです。
鬼たちは大量にやってきたわけではありません。一部の鬼が、自分たちにそっくりな生物を自身の星で販売する目的で、地球にやってきて人間を鬼の星へ連れて行ったのです。その中で最も多くを占めたのが日本人でした。日本に「神隠し」の伝説が多いのは、このことがあったのかもしれません。とはいえ、鬼の繁栄のために、人間が犠牲になったということに、変わりありません。
そして、「今、鬼の星では内乱が起こっている」ということですが、混血が子孫繁栄にはよいとわかっていても、純血を守る鬼はいるもので、しかもそういった鬼は、他の鬼よりも誇りが高いのです。そして、鬼の政治も純血の鬼が多くを仕切っていました。一方で、つれてこられた人間は、鬼と結ばれたのであればまだいい方で、中には鬼たちの慰みものとなった人たちもいます。いわば階級のようなものがあり、最上を「純血の鬼」、それに次いで「混血の鬼」、その中にもいくつかの階層があるのですが、省略します。そして、最下層に「純血の人間」がありました。下層の人間は、純血混血問わず、鬼たちの差別の的になっていました。混血の人間は、混血の鬼に含まれているので、比較的差別の対象にはならないのです(つまり、差別自体は受けます)が、それでも純血だと思われてしまうことがありました。その上、鬼たちの政治は、鬼にとって都合の良いものばかりで、連れてこられた人間にとっては腹立たしいものばかりでした。そんな圧制に耐え続けた、日本人を中心とした人間たちは、鬼たちから政権を奪うことを画策するようになりました。「先祖たちは、好きで連れてこられたわけではないのに、鬼の星ではひどい扱いを受けてきたと聞く。これが1000年以上も続いている、そしてこれからもこの状況は続くだろう。そうなると、我々人間の未来は暗い」ということで、過激派を中心に、クーデターを起こすことを計画し、実行しました。地球時間の、1983年のことでした。
その後、クーデターは失敗に終わり、一時落ち着きを取り戻しましたが、人間の意識は高揚し、すぐにでも次のクーデターを始めようとする様子でした。ですが、頻繁にクーデターを起こされたのでは、鬼の星の秩序にかかわるということで、過激派の人間の代表者と鬼の責任者と会談をし、とりあえずはこの動きを凍結させることになりました。しかし、鬼たちはその後、「人間の思うようになるか」と言わんばかりに、「人間団結禁止法」など、人間に対する更なる圧制を始めました。そのため、人間たちは再び立ち上がりました。1990年のことです。しかも、今度の戦いは大規模なものとなり、鬼の星の歴史上、もっとも大きな内戦となってしまいました。鬼の政府は戒厳令を出しました。
こうした社会の動きの中、ある家庭には、玉のような女の子が生まれました(表現がありきたりですが)。しかし、社会の状況を見る限りでは、女の子が幸せな生活を送ることは難しいと考えました。その後も内戦が続きました。戒厳令が出されて2年、治まる様子はまるでなく、むしろひどくなる一方でした。比較的豊かな生活をしていた両親は、宇宙船の購入を決意しました。そして、それに女の子を乗せ、安全な星である程度の期間、疎開させることにしたのです。星が平和になって、いつの日か娘に会う日を思って・・・。
宇宙船は、最新の設備が整って入るものの、そのために巡航速度を犠牲にしたものでした。そのため、他の宇宙船では地球まで、3年から5年で着くのですが、この宇宙船は9年かかるのでした。しかも、コールドスリープ機能を使うと、更に巡航速度が遅くなるのでした。そうです。この宇宙船が、今五島くんと管理人さんに話をしている、球体の正体だったのです。五島くんの立てた説は、ほぼ正解でした。
球体は、一通り話し終えると、二人を解放しました。そして、四人が空港へ向かって歩き出そうとしたとき、球体はどこかへと飛んで行きました。
道中、女の子の名前がないことに気付きました。しかし、五島くんと管理人さんは、女の子の特徴から、既に名前を決めていました。しかし、そのままの名前をつけるのも芸がないということで、夢が来ると書いて、「来夢(ライム)」と名づけました。実は、管理人さんは当然ながら、五島くんも高橋留美子作品の大ファンだったのです。週に一度は本屋に行き、サンデーを開いて『犬夜叉』を読むのが習慣になっているくらいです。アパートの部屋が狭いので、コミックを集められないことを嘆いています。女の子は、自分に名前が付いたことを喜びました。おじさんは、にやりと笑っていました。車は空港に向かって、風を切り続けました。
空港でおじさんと別れ、飛行機に乗り、日本へ帰ってきました。パスポートもチケットもない、来夢ちゃんが、どうして飛行機に乗れたのかは細かいことです、気にしないでください。
猫目館に着くと、五島くんと管理人さんは我が目を疑いました。あの球体が、建物の横にあるのです。球体の話によると、(五島くんたちが)何者で、どこに住んでいるのかは既に森の奥に滞在している間に調べは着いていて、安心して任せられると思ったということで、ついでに日本で生活するうえで必要なことを全て済ましていると言うことです。例えば、来夢ちゃんの戸籍を、外から記録した証拠を残さないように、住民基本台帳に載せたりしたそうです。これで正式に、来夢ちゃんは五島くんの義理の妹と言うことになりました。猫目館にまた一人、住人が増えました。
これまでの経緯は、五島くんの日記からもわかるとおり、ブラジルの森奥で、不思議な女の子に会うわけです。この子の話からの推察から、五島くんは大胆にも「女の子は宇宙人説」を展開しました。確かに、この説だと、女の子の話す内容が説明できます。しかし、彼も述べているように、地球の常識をいくつか超えているのも事実です。はたして、五島くんの説は、正しいのでしょうか?
3日目、この日は日本に帰る飛行機に乗らなければならない日です。女の子が見ている中、3人は片付けと、出発準備をしています。
少し手が空いた五島くんは、
「君はここに残るのかい?」
と、女の子に訊ねました。
「ほかにいくところ、ない」
女の子は寂しそうに、ポツリと言いました。五島くんは、彼女が天涯孤独の身であることがはっきりしたと思いました。
「それなら、俺たちと一緒に、日本へ来ないか?少なくとも、寂しい思いはしないと思うよ」
五島くんは、笑顔で言いました。この笑顔を見た女の子は、こくりとうなずきました。彼女にとって未経験の、親の愛情に近いものを感じたのかもしれません。そして、五島くんは悪い人ではないということも・・・。
すると、球体が突然、声を上げました。五島くんと管理人さんが球体に近づくと、球体は二人の目の前で開きました。警戒しながら中に入ると、球体は閉まりました。
おじさんはその様子を見て、慌てふためきましたが、球体から二人に話がある旨を伝えられると、とりあえず傍でおとなしく座っていました。その横に、女の子がちょこんと座りました。
球体の中では、球体が話を始めていました。
「彼女の面倒を見てくれるのですね?」
流暢な日本語で、球体は訊ねました。
「ああ。このまま放っておいてはかわいそうだ。こんな森奥で女の子一人では特に、だ」
五島くんは、彼女を引き取る理由を話しました。
「では、あなたたちには彼女について、話さなければなりません」
そのように球体が言うと、説明を始めました。
球体の話をそのまま載せると、かなりのページを使ってしまうし、おそらく読んでいても眠くなるだけなので、大まかな部分だけ記します。というのも、まれにある退屈な歴史の授業みたいな話が続くからです。話の内容を順に記すと、
・女の子は地球人ではないが、地球人の血も流れている
・彼女の故郷の星は、鬼の星である
・鬼の星の科学は、地球のはるか先を行っている
・今から1000年ほど前、鬼は地球へやってきて、数多くの人間をさらっていった
・その理由は、鬼の子孫繁栄のためである
・今、鬼の星では内乱が起こっている
・女の子は彼女の両親の希望で、地球に疎開しに来た。そのとき彼女は2歳であった
・地球に向かう際に、地球時間で言うところの約14年が過ぎた
といった具合です。
まず、最初の2つ(「女の子は地球人ではないが、地球人の血も流れている」と「彼女の故郷の星は、鬼の星である」)は、その通りですが、その中の「地球人の血も流れている」という点は、その後説明します。3つ目について、鬼の星の科学は大変進んでいて、現在の地球上での科学のレベルは、鬼の星では既に1300年くらい前には達成していました。4つ目と5つ目にも関係するのですが、1000年ほど前のあるとき、「純血は混血よりも子孫の繁栄につながりにくい」という論文が発表されました。これは、現在の地球でも少し話題になっていることで、混血ほど生存能力が高いといったようなことが、当時の鬼の星で発表されたのです。犬でいう、「血統書つきの犬より、雑種のほうが長生きしやすい」といった、経験則なのか、科学的にわかったのかの判断が付かないことを、鬼の星では証明されたのです。当時の鬼の星は、エネルギーが今の地球の約4倍はあったということで、技術的にもかなり進んでいました。そのため、宇宙船が大量に出回っていました。また、鬼たちは、自分たちともっとも体の構造が、内的にも外的にも似ている生物が、この広い宇宙にいることがわかり、その生物と混血になれば、子孫繁栄が実現できると考えました。少し浅はかな気もしますが、いずれにせよそれが、地球へ鬼たちがやってくる基となったのです。
鬼たちは大量にやってきたわけではありません。一部の鬼が、自分たちにそっくりな生物を自身の星で販売する目的で、地球にやってきて人間を鬼の星へ連れて行ったのです。その中で最も多くを占めたのが日本人でした。日本に「神隠し」の伝説が多いのは、このことがあったのかもしれません。とはいえ、鬼の繁栄のために、人間が犠牲になったということに、変わりありません。
そして、「今、鬼の星では内乱が起こっている」ということですが、混血が子孫繁栄にはよいとわかっていても、純血を守る鬼はいるもので、しかもそういった鬼は、他の鬼よりも誇りが高いのです。そして、鬼の政治も純血の鬼が多くを仕切っていました。一方で、つれてこられた人間は、鬼と結ばれたのであればまだいい方で、中には鬼たちの慰みものとなった人たちもいます。いわば階級のようなものがあり、最上を「純血の鬼」、それに次いで「混血の鬼」、その中にもいくつかの階層があるのですが、省略します。そして、最下層に「純血の人間」がありました。下層の人間は、純血混血問わず、鬼たちの差別の的になっていました。混血の人間は、混血の鬼に含まれているので、比較的差別の対象にはならないのです(つまり、差別自体は受けます)が、それでも純血だと思われてしまうことがありました。その上、鬼たちの政治は、鬼にとって都合の良いものばかりで、連れてこられた人間にとっては腹立たしいものばかりでした。そんな圧制に耐え続けた、日本人を中心とした人間たちは、鬼たちから政権を奪うことを画策するようになりました。「先祖たちは、好きで連れてこられたわけではないのに、鬼の星ではひどい扱いを受けてきたと聞く。これが1000年以上も続いている、そしてこれからもこの状況は続くだろう。そうなると、我々人間の未来は暗い」ということで、過激派を中心に、クーデターを起こすことを計画し、実行しました。地球時間の、1983年のことでした。
その後、クーデターは失敗に終わり、一時落ち着きを取り戻しましたが、人間の意識は高揚し、すぐにでも次のクーデターを始めようとする様子でした。ですが、頻繁にクーデターを起こされたのでは、鬼の星の秩序にかかわるということで、過激派の人間の代表者と鬼の責任者と会談をし、とりあえずはこの動きを凍結させることになりました。しかし、鬼たちはその後、「人間の思うようになるか」と言わんばかりに、「人間団結禁止法」など、人間に対する更なる圧制を始めました。そのため、人間たちは再び立ち上がりました。1990年のことです。しかも、今度の戦いは大規模なものとなり、鬼の星の歴史上、もっとも大きな内戦となってしまいました。鬼の政府は戒厳令を出しました。
こうした社会の動きの中、ある家庭には、玉のような女の子が生まれました(表現がありきたりですが)。しかし、社会の状況を見る限りでは、女の子が幸せな生活を送ることは難しいと考えました。その後も内戦が続きました。戒厳令が出されて2年、治まる様子はまるでなく、むしろひどくなる一方でした。比較的豊かな生活をしていた両親は、宇宙船の購入を決意しました。そして、それに女の子を乗せ、安全な星である程度の期間、疎開させることにしたのです。星が平和になって、いつの日か娘に会う日を思って・・・。
宇宙船は、最新の設備が整って入るものの、そのために巡航速度を犠牲にしたものでした。そのため、他の宇宙船では地球まで、3年から5年で着くのですが、この宇宙船は9年かかるのでした。しかも、コールドスリープ機能を使うと、更に巡航速度が遅くなるのでした。そうです。この宇宙船が、今五島くんと管理人さんに話をしている、球体の正体だったのです。五島くんの立てた説は、ほぼ正解でした。
球体は、一通り話し終えると、二人を解放しました。そして、四人が空港へ向かって歩き出そうとしたとき、球体はどこかへと飛んで行きました。
道中、女の子の名前がないことに気付きました。しかし、五島くんと管理人さんは、女の子の特徴から、既に名前を決めていました。しかし、そのままの名前をつけるのも芸がないということで、夢が来ると書いて、「来夢(ライム)」と名づけました。実は、管理人さんは当然ながら、五島くんも高橋留美子作品の大ファンだったのです。週に一度は本屋に行き、サンデーを開いて『犬夜叉』を読むのが習慣になっているくらいです。アパートの部屋が狭いので、コミックを集められないことを嘆いています。女の子は、自分に名前が付いたことを喜びました。おじさんは、にやりと笑っていました。車は空港に向かって、風を切り続けました。
空港でおじさんと別れ、飛行機に乗り、日本へ帰ってきました。パスポートもチケットもない、来夢ちゃんが、どうして飛行機に乗れたのかは細かいことです、気にしないでください。
猫目館に着くと、五島くんと管理人さんは我が目を疑いました。あの球体が、建物の横にあるのです。球体の話によると、(五島くんたちが)何者で、どこに住んでいるのかは既に森の奥に滞在している間に調べは着いていて、安心して任せられると思ったということで、ついでに日本で生活するうえで必要なことを全て済ましていると言うことです。例えば、来夢ちゃんの戸籍を、外から記録した証拠を残さないように、住民基本台帳に載せたりしたそうです。これで正式に、来夢ちゃんは五島くんの義理の妹と言うことになりました。猫目館にまた一人、住人が増えました。