コロナ禍で東京に足を運べなくなり

待ち焦がれた約1年ぶりの地元でのコンサート。



いよいよ幕が上がり期待が高まります。

『初恋』の前奏が流れ、単の白い着流しの凛とした立ち姿の

舟木さんが浮かび上がると万雷の拍手。

それに応えて下さるかのよう

声量豊かに朗々と歌い上げられる舟木さんの歌声に魅了され

会場全体が一気に舟木さんの醸し出す抒情歌の世界に惹き込まれていきます。

歌い終わって階段を降りてこられお辞儀をされた舟木さん。

開口一番「寒い。」

たしかに白い単の着流しと下駄に素足ではさもありなんと

見るからにお寒そうで申し訳なくなるようなこの日の長野市の気候でした。

でも変わらぬ若々しいお着物の立ち姿と

「世の中ややこしい中をかいくぐってようこそお越し下さいました。」

のご挨拶に心が温かさで満たされていくようでした。

舟木さんの数ある持ち歌の中でも大きな位置を占めるジャンルの抒情歌ですが

いつも仰るように西條(八十)先生との出会いが大きかったと。

でも「抒情歌は小さい頃から聞いている。
『浜千鳥』や『さくらさくら』等も抒情歌の一種。」

とおっしゃるように

抒情歌と銘打たずとも私達が幼い頃から聞き慣れている

四季に恵まれた日本の豊かな自然の様子が綴られた聞き慣れた歌の数々は

心の琴線に触れるものばかりだったことに気づかされます。

そんな抒情歌から

『あゝりんどうの花咲けど』

この歌を聞く度に若くして逝ってしまった大学時代の友の面影が浮かびます。

『貝殻の歌』『夕月の乙女』『まだ見ぬ君を恋うる歌』

これらは病がちだった高校時代の、少しの切なさと青春の甘酸っぱさを感ずる歌たち。

大好きな歌の数々が心の奥底に沁み渡ります。

ただ、会場からは1曲終わる度に拍手があるので

舟木さんが

「僕らがデビューした頃は先輩方は一曲歌うごとに最敬礼したけれどお気遣いなく。
拍手をもらいたい時は歌い手が頭をさげますので。」

とおっしゃったのに、その後も拍手する方が大勢(*_*)

例えば協奏曲等を聞く時、楽章ごとに拍手しないのと同じで

1つの主題をもって構成された歌の流れが

拍手で途切れてしまうのは何とも勿体なく

聞き手もその世界に浸っているのにと残念な気持ちになりました。

舟木さんご自身も同じお気持ちだったのか、二部の最初に

「一部で一曲ごとに拍手をしなくて良いと言ったのにご丁寧に拍手して下さる方がいる。
有難いというか・・・やりにくい。」

とちょっと笑いを交えておっしゃってました。

「流行歌というのはヒットするのはほんの一握りというより一つまみと言ってもよい。

船村先生はヒットするかどうかなんて気にしなくていい。
僕らがいい歌を書けばいいんだからとおっしゃっていた。
それですごく気が楽になった。」
というお話には

人の情も豊かで本当のプロと呼ばれる方々がいらした時代であったことを改めて感ずるお話でした。

「抒情歌というのは“故郷“ “初めての恋“と三角形になる。」

というお話には納得させられます。

「僕なんかも田舎で育って何かをしようと都会に出てきたわけですけど
しばらく経つとどうしてもここ(胸を押さえて)をやられる。
そういう時、思い出すのはやはり故郷。」
と言うお話から

「男歌か女歌かはっきりしない曲」として歌われたのは

『麦笛』『帰る 』

都会の生活に疲れ故郷に帰る若者を歌ったこの2曲。

今まで意識せずに聞いていましたが

♪さようなら かなしいまち~♪

と都会から去っていく若者の心境を歌った『麦笛』も

♪あなたは帰る あなたの故郷~♪
♪東京がいやになったのではない♪
けれど何かの事情で故郷に帰る友人あるいは恋人を送る『帰る』も

男性、女性どちらにも当てはまる歌。

舟木さんのおっしゃるように
「男歌でも女歌でもない」
がとんと腑に落ちる大好きな2曲でした。

特に『麦笛』は昭和47年の曲。

私も故郷を離れ都会で学生生活を送っていた大学三年生の時の歌です。

今よりも都会と地方の距離が遠かった時代

各駅停車の、あるいは準急と呼ばれる夜行列車にゴトゴトと揺られながら

夜明け前の故郷の駅に降り立ち麦畑の小径を歩く歌の中の人物の様子が自然と目に浮かびます。

あの菜の花色のセーターを着てはにかんだような笑顔の舟木さんのレコードジャケットと共に

その頃の自分の心境をも思い出して込み上げてくるものがありました。

最後は西條先生の作られた歌。

『夕笛』『吉野木挽き歌』からの『絶唱』は

これぞ舟木さんの真骨頂とも言える抒情歌の世界。

静かな感動の中、1部が終了しました。



私はコンサート最中にメモすることもせず
出来うる限り頭の中で反芻して記憶しておくのですが
悲しいかな、記憶力も衰えた昨今。
それでも7日の夜、寝る前に可能な限り思い出しつつスマホに書いていたのですが
曲順やトーク内容等、記憶違いも多々あるかと思います。
ご容赦くださいm(__)m

二部に続きます。